タイトル:さようなら、オレンジ
作者:岩城けい
出版元:筑摩書房
その他:
あらすじ----------------------------------------------
オーストラリアの田舎町に流れてきたアフリカ難民サリマは、夫に逃げられ、精肉作業場で働きつつ二人の息子を育てている。母語の読み書きすらままならない彼女は、職業訓練学校で英語を学びはじめる。そこには、自分の夢をなかばあきらめ夫について渡豪した日本人女性「ハリネズミ」との出会いが待っていた。第29回太宰治賞受賞作。
感想--------------------------------------------------
この方の本は初めて読みます。本屋大賞の候補に選ばれていたので読んでみました。今までに読んだことのないタイプの本です。
戦火に追われて故国を離れ豪州で暮らすことになったサリマ。肉を捌く仕事をしながら通う語学学校で、彼女はハリネズミと呼ばれる日本人と出会う—。
祖国を離れ、二人の子供と豪州で暮らすサリマ。乳飲み子を抱えて同じく豪州で暮らすハリネズミ。物語はサリマの視点に時折りハリネズミの手紙を交えながら、淡々とした語り口で進んでいきます。そこに描かれているのは「生きること」とでも言ったらいいでしょうか、祖国を離れ、子供を奪われ、それでも生きていく二人の女性です。
はじめは異端児として、周囲に溶け込むこともできずに暮らす女性たち。しかし彼女達は周囲の様々な人々との交流を通して少しずつ今いる自分の場所を、居場所に変えて生きていきます。そこに描かれている音は強い女性の姿ですが、一言で片付けられるものではありません。故国と、言語と、子供と、夫と、様々なものに縛られながらもそれでも自分をしっかりと抱えて生きていこうとする女性。様々な悲劇をも乗り越えて、強く生きていこうとする女性。この物語の主人公は二人の女性ですが、これは女性が主人公でなければ成り立たない物語ですね。
物語にはある仕掛けがあり、最後にそれがわかるようになっています。淡々と進みすぎる点が気にはなりますが、百七十ページ程度足らずと短い作品ですので、簡単に読めました。なかなか読んだことのないタイプの本です。異国で暮らす人間と言うのを題材に作品を書くのは日本人にはなかなか難しいと思うのですが、うまく描いていると感じました。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B
レビュープラス
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