2017年01月01日

読書日記623:裸者と裸者(上) 孤児部隊の世界永久戦争



タイトル:裸者と裸者(上) 孤児部隊の世界永久戦争<〈応化クロニクル〉><〈応化クロニクル〉> (角川文庫)
作者:打海 文三
出版元:KADOKAWA / 角川書店
その他:

あらすじ----------------------------------------------
応化二年十一月未明、〈救国〉をかかげる佐官グループが第1空挺団と第32歩兵連隊を率いて首都を制圧。同日正午、首都の反乱軍は〈救国臨時政府樹立〉を宣言。国軍は政府軍と反乱軍に二分した。内乱勃発の年の春にすべての公立学校は休校となった。そして、両親を亡くした七歳と十一ヶ月の佐々木海人は、妹の恵と、まだ二歳になったばかりの弟の隆を守るために、手段を選ばず生きていくことを選択した――。

感想--------------------------------------------------
打海文三さんという著者のことは実はよく知りません。この作品を読もうと思ったきっかけは伊坂幸太郎さんが作品、「3625」で打海さんを絶賛していたから、というものです。加えて、この作品のあらすじを読み、その世界観に「読んでみたい」と思ったからです。

政府軍と反政府軍が戦闘を繰り広げる日本。戦争孤児となった佐々木海人、恵、隆の三兄弟は、その日を必死に生き延びていくー。

舞台は近未来の日本。財政破綻や武装蜂起などにより戦乱の地と化した日本を舞台に、主人公である佐々木海人が家族を守り、少年兵として必死に生き抜きのし上がっていく姿を描いた作品です。戦争孤児、麻薬、マフィア、そして目を覆うばかりの残虐行為と激しい戦闘。戦争作品にはつきものの光景ですが、日本を舞台に描かれた作品は少ないと感じました。

常陸軍に入り、その中でのし上がって力を蓄えていく海人は少年兵でありまともな教育を受けていないのにまっすぐで、その生き様は読者に感銘を与えます。この海人の性格があるからこそ、最後まで読み通せたと言ってもいいかと思います。

軍の中で出会う様々な仲間たち、そして出会いと別れ。戦争作品なので簡単に人が死んでいく様は読んでいて厳しいですが、海人のまっすぐな生き様が救いとなります。文体はとても淡白で淡々と事実を積み重ねていく書き方です。そしてそれが本作では非常に生きています。これが濃厚な描き方をされていると、読み切れなかったのではないかと思います。

本作は下巻に続きます。下巻は同じ舞台ながら主人公が切り替わります。最後まで読み終えたときに何が見えるのか、楽しみです。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス

2016年12月25日

読書日記622:ロードス島攻防記



タイトル:ロードス島攻防記
作者:塩野 七生
出版元:新潮社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
イスラム世界に対してキリスト教世界の最前線に位置するロードス島。コンスタンティノープルを陥落させ、巨大な帝国を形成しつつ西進を目指すオスマン・トルコにとっては、この島は喉元のトゲのような存在だった。1522年、大帝スレイマン一世はついに自ら陣頭指揮を取ってロードス島攻略戦を開始した――。島を守る聖ヨハネ騎士団との五ヶ月にわたる壮烈な攻防を描く歴史絵巻第二弾。

感想--------------------------------------------------
遂に読み終えた「ローマ人の物語」の塩野七生さんの作品です。平成三年発行ですので、二十五年も前の作品になりますね。中世の地中海、ロードス島を拠点にオスマントルコと対決する聖ヨハネ騎士団の活躍を描いた史実的な作品です。

分裂し争いを繰り返す西欧諸国を尻目に、着々と領土拡大をはかり、コンスタンティノープルを落して西へと進むオスマン・トルコ。キリスト教世界の最前線に位置し、オスマントルコの船を襲い続けるロードス島の聖ヨハネ騎士団は、スレイマン一世と激しい戦いを繰り広げるー。

ローマ世界から一点、中世の西欧の物語もやはりこの著者だけあって読み応えがあります。騎士アントニオを主人公とした物語的な描写と史実が混在する描き方は独特ですが、特に物語り部分は迫力がありました。見所は何と言ってもロードス島に築かれた城塞に立てこもる聖ヨハネ騎士団と、物量にものを言わせて襲いかかるオスマントルコの戦闘です。大砲と地雷、それに圧倒的な物量を背景に襲いかかるオスマントルコと、信仰と鋼鉄の鎧、それに鉄壁の城塞を盾に立ちはだかる聖ヨハネ騎士団。その戦闘描写には凄まじいものがあります。この描写は「ローマ人の物語」に通ずるものがありますね。

一方で、本書は突如、中世西欧の話から始まるため、前後関係や世界情勢がよくわからない、といったデメリットもあります。これは、本書の前段となる「コンスタンティノープルの陥落」を読んでおくといいのかもしれません。

ローマ世界もいいですが、中世西欧のキリスト教世界もいいですね。この著者の作品はまた読む予定です。



総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B
レビュープラス
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2016年12月18日

読書日記621:フェルドマン博士の 日本経済最新講義



タイトル:フェルドマン博士の 日本経済最新講義
著者:ロバート・アラン フェルドマン
出版元:文藝春秋
その他:

あらすじ----------------------------------------------
ゼロから解説。経済がわかればあなたも変わる!ワールドビジネスサテライトの人気コメンテーター、フェルドマン博士による日本経済復活のガイド。

感想--------------------------------------------------
ちきりんさんのブログにて紹介されていた本です。ようやく読むことができました。著者であるフェルドマン博士ことロバート・アラン・フェルドマンさんはモルガン・スタンレーMUFG証券のチーフ・エコノミストの方です。テレビ東京で毎夜放送しているワールド・ビジネス・サテライトにもコメンテーターとしてよく登場していますので、ご存知の方も多いかと思います。本書ではこのフェルドマン博士が日本経済を様々な観点から説明しています。

結論から書いてしまうと、本書は非常に有意義に読める本でした。毎日の新聞に書かれている様々な政治的、経済的動向がどのような意味を持つのか、その中身が本書を読むと良く分かります。新聞の記事が表層的・断片的なのに対し、その中身が分かる本、というイメージでしょうか。さすがちきりんお勧めの本だけのことはあります。

本書の特徴として、著者が簡潔に日本経済、政策を「斬って」いるという点があげられます。完全なる断定口調と明確な○×、点数付け、さらにその根拠の説明により、読み手は迷うことなくすんなりと本書の内容を頭に入れることができます。特に面白いのはアベノミクスの評価をレーダーチャートを使って簡潔に示している点です。アベノミクスの評価をしている新聞、雑誌などは山ほどありますが、農業、医療、エネルギーなどの各項目に対して明確に点数を付けて評価している本書のような本はあまりないのではないかと思います。

詳細な評価はぜひ本書を読んでいただきたいのですが、この本の中で明確に言われているのは、「既得権益層」とその既得権益層を野放しにしてしまう「現行の選挙制度」こそ最もてこいれが必要な箇所、ということです。要するに「金持ちが金持ちに都合のいいように制度を作っている」ということですね。また社会保障にかかる金が多すぎることも明確に言われています。もっと教育やエネルギーなどにもお金をかけるべき、との主張です。これは良く理解できるのですが、実際にどうするのか、高齢者をどのように介護していくのか、問題は多そうだと感じました。

個人的に思うのですが、日本の現実的な将来像やロードマップを適切に描き、国民に共有することができていないため、各政策がばらばらに見えるのだ、とも感じます。人口は減るだろうし、経済成長も劇的に改善されることはありません。薔薇色の未来像に希望を持つことができず、逆にどこか胡散臭く感じてしまう風潮もずっと続いています。各分野の政策を統合しての将来イメージとその共有が必要なんだろうな、と感じました。

本書はアベノミクスを非常に客観的な視点で評価しています。これだけでも私は本書に一読の価値があると感じます。アベノミクスの「三本の矢」とその中身、各政策の状況、問題点。これらが二百ページ程度の本書で理解できるのですからお得というものです。この本の刊行からまだ一年も経っていませんが、その間にも英国のEU離脱など大きなニュースが飛び込んできています。こんどは世界経済についての講義も読んでみたいと感じました。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
レビュープラス
posted by taka at 13:10| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする