2017年02月11日

読書日記628:君の膵臓をたべたい



タイトル:君の膵臓をたべたい
作者:住野 よる
出版元:双葉社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
偶然、僕が拾った1冊の文庫本。それはクラスメイトである山内桜良が綴った、秘密の日記帳だった―圧倒的デビュー作!

感想--------------------------------------------------
自分はよく本屋に行くので、なんとなく売れ筋の本はわかるのですが、本書もその一冊でした。目立つところに長らく並んでいる本であることと、その奇妙なタイトルに惹かれて読んでみました。昨年度の本屋大賞二位の作品ですね。

全く予備知識なしに読みました。そのタイトルと、落ち着いたカバーの印象から大人向けの本かと思っていましたが、読み始めてすぐに若者向け、特に登場人物と同じ十代の少年向けの本と感じました。主人公は根暗で内向的で友達のいない少年。そんな少年がクラスの中でも人気のある少女とふとしたことで出会いーという話。よくある話だけど、実際にはない話だよな、四十も超えるとこうした話は読んでて寒いだけでなくて辛いよなーと思いながら読んでいました。現代版の「いちご同盟」みたいだな、なんて思ったりしていました。

しかし後半に入っていくと、この本はそんな簡単な本なんじゃない、っていうことがわかります。張られた伏線もさることながら、二人の関係に、二人の想いと言葉に、久しぶりに清々しい気持ちになりました。少しだけ引用させてください。


「偶然じゃない。運命なんかでもない。君が今までしてきた選択と、私が今までしてきた選択が、私たちを会わせたの。私達は自分の意思で出会ったんだよ。」

「怖がらなくてもいいよ。なにがあっても人と人はうまくやっていけるはずだからね。」


物語の中で語られるこれらの言葉には本当に説得力があります。いつも一緒にいたのにお互いの方を向いていることに最後の最後でようやく気づくことのできた主人公。そしてその思いを表す言葉「君の膵臓を食べたい」。極上の青春小説ですが、私のような大人が読んでも感動する作品です。読んでよかった、と素直に思うことのできる本でした。

本作は実写映画化されるそうです。当然だな、と感じます。一方でアニメ映画化されてもいいなあ、とも感じます。絶賛されている「君の名は。」と切り口は違いますが、美麗な映像として作られればこちらも間違いなく好評になるはずです。

自分と違う人間への憧れ、恐れとの別れ。おそらく青春時代には誰しもが感じたであろうこれらの感情をうまく扱っていて、最後まで本当に清々しくて、いい本でした。この方の他の作品も読んでみようと思います。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):SS
レビュープラス
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2017年02月04日

読書日記627:サブマリン



タイトル:サブマリン
作者:伊坂幸太郎
出版元:講談社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
「武藤、別におまえが頑張ったところで、事件が起きる時は起きるし、起きないなら起きない。そうだろ? いつもの仕事と一緒だ。俺たちの頑張りとは無関係に、少年は更生するし、駄目な時は駄目だ」/「でも」/うるせえなあ、と言いたげに陣内さんが顔をしかめた。/「だいたい陣内さん、頑張ってる時ってあるんですか?」/と僕は言ったが電車の走行音が激しくなったせいか、聞こえていないようだった。(本文より)

感想--------------------------------------------------
伊坂幸太郎さんの作品です。「チルドレン」と同じ家裁調査官の陣内さんと武藤くんが活躍する作品です。主人公の陣内さんのキャラクターがとても生きているシリーズですね。傍若無人で無茶苦茶だけど人情味のある陣内さん。この人のキャラクターがとてもいいです。

陣内さんと武藤くんは無免許運転で死亡事故を起こした少年の調査を受け持つことになった。その少年は過去に両親と友人を事故で失っていたー。

本作のテーマは「人生の中のどうしようもないことに、どうやって向き合うか」ということかと思います。この作品の中には陣内さんと武藤くんが受け持つ事故や犯罪の関係者が何人か出てきますが、その多くが、「どうしようもないこと」に人生を翻弄されています。

故意ではないのに人を死に追いやってしまった人。最愛の人を不慮の事故で亡くした人。そうした登場人物を通して著者は読者に様々な答えのない問いをぶつけてきます。「善意を持っているのに人を死に追いやってしまった人」と「悪意の塊なのに人をまだ死なせてはいない人」ではどちらが問題なのか、悪人なら殺してもいいのか、などは答えの決して出ない問いです。一般人の多くはこうした問いとは遠いところで生きていくことができますが、不幸にしてこうした問いを突き付けられてしまう人もいて、そうした人たちを陣内さんと武藤くんは真摯に見つめていきます。

非常に扱いが難しいこのようなテーマをよく作品にできたな、というのが正直な感想です。答えの出ない問いを突き付けられたまま、あるいは予期せぬ事故で人殺しの汚名を一生背負ったまま生きていくことになってしまった人というのは確かに存在して、そうした人たちの生き方をしっかり見つめている、と強く感じました。陣内さんと武藤くんのキャラが重くなりがちなテーマを軽くしていて、読み進めることができます。

眼の見えない永瀬や、チャールズ・ミンガス、ローランド・カークといったミュージシャンを通して著者が訴えたかったのは、「それでも生きていた方がいいに決まっている」ということかな、と感じました。人生は答えのない問いに溢れている。絶望的な状況に追い込まれ、「自分なんかが生きていていいのだろうか」と考えてしまうこともある。でも、それでも生きていい方がいいに決まっている。その強さが上記のミュージシャンたちや陣内さんからは感じました。

傍若無人の陣内さんの話、おもしろいです。このシリーズももっと続きが読みたいですね。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス
posted by taka at 10:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 伊坂 幸太郎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月29日

読書日記626:ワーク・ルールズ!―君の生き方とリーダーシップを変える



タイトル:ワーク・ルールズ!―君の生き方とリーダーシップを変える
作者:ラズロ・ボック (著), 鬼澤 忍 (翻訳), 矢羽野 薫 (翻訳)
出版元:東洋経済新報社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
君は、最強企業が欲しがる人材なのか?未来の新しい働き方のすべて、ベストチームをつくるアドバイス―世界最高の職場を設計した男、グーグルの人事トップが、採用、育成、評価のすべてを書いた。

感想--------------------------------------------------
最近話題のビジネス書です。あのGoogleの人事トップが採用、育成、評価のすべてについて語った本として有名です。全五百ページ以上と読み応えたっぷりです。

本書を読み終えて感じた事は、「これはGoogleだからこそできることだ」というものと、「これだからGoogleなのだ」というものです。人事、採用、育成、評価について書かれた本、というよりも、GoogleをGoogleたらしめているGoogleの文化について書かれた本、という事ができるかもしれません。もちろん他社も教訓に出来る点は多くあります。しかし「こんなこと他の会社には無理だろ」と思う箇所も多いです。飛び抜けた業績を上げているからこそ出来る点も多いですし、逆にこれだから飛び抜けた業績を上げられているのだ、と思う箇所も多いです。

本書を読んで全般的に感じる事は、Googleという会社は従業員を善なる者として最大限尊重して扱っている、ということです。徹底的な管理を施す会社と無制限の自由を与える会社があったとすると、Googleは限りなく後者に近いです。それで成り立つのは、世界の中でもレベルの高い頭脳を持つ人々が多く集まっている点、採用に凄まじく時間をかけ、間違いのない人を入社させている点などが挙げられると思います。「自分の仕事に意味を求める」。これは誰もがそうですが、そのことをうまく仕事のモチベーションとして昇華させる仕組みを作り、さらに人の持つ「善意」を信頼して限りなく強制を排除しているGoogleの文化は会社としてもコミュニティとしても理想に近いと感じます。

マネージャーが権利を手放しメンバーの自主性を尊重する、マネージャーがメンバーに寄りそう、食事と通勤バスは全て無料、社内に様々なコミュニティが存在、などなどGoogleの特徴は非常に多いです。しかしその多くが「社員を善意を持った個人として尊重する」という点からスタートしている点が素晴らしいと感じます。そのような理想が理想のまま通っている点は奇跡に近いかもしれません。

「社員に満足してもらう」ひょっとしたら人事の究極の目標はこのひと言なのかもしれません。そしてこの目標を達成するためには、「人間はどのようなときに満足するのか?喜ぶのか?」というところや、さらに深く、「人間とはどのようなものか?」まで掘り下げる必要がありそうです。そしてそのような観点から社員を見ると、違った見え方が出来るように感じました。何より私に取っては、たいていの日本企業に存在する「既得権益層」がいないことが素晴らしく感じました。何もしないのに権力を振り回して高い給料をもらう人たち。そのような人たちが自然と淘汰される仕組みが作られているようにも感じました。

人事、育成、採用、評価の本と言うよりも、文化、コミュニティのあり方、作り方について書かれた本と言った方がいいかもしれませんね。私は本書の前半よりもむしろ後半の文化的側面について書かれた章の方が面白く読めました。五百ページ超となかなかの読み応えですが、読んで損はない本です。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
レビュープラス
posted by taka at 11:25| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする