2017年04月01日

読書日記634:大前研一通信_答えのない世界〜グローバルリーダーになるための未来への選択〜


タイトル:答えのない世界〜グローバルリーダーになるための未来への選択〜
作者:大前研一
出版元:ビジネス・ブレークスルー
その他:

あらすじ----------------------------------------------
今回で第10弾となる「大前研一通信・特別保存版」の電子版。

感想--------------------------------------------------
レビュープラス様に献本いただきました。いつもありがとうございます。

本書は大前研一通信の第十弾ということで、大前研一さんが様々な書籍に書かれた記事の抜粋と、国際バカロレア大学の説明から構成された書籍です。特に前半の大前研一さんの指摘は相変わらず鋭いと感じました。

本書に掲載されている大前研一さんのコメントの多くは「教育」に関するものです。特に一章では「21世紀に求められる人材」ということで、教育の必要性について強く解かれています。特に印象に残ったコメントを引用しながら紹介します。

「親が子供の教育にかけたお金と成果は比例しないが、かけた時間と成果は比例する」

塾に放り込んで終わり!ではダメな訳ですね。きちんと寄り添って教える事が必要という事です。


「実質的に中流階級は激減し、低所得者層と高所得者層の2つにピークがある「M型社会」になりつつある。これが意味するのは、成功者になれなければ中流を飛び越えて一気にロウアークラスに転落してしまうという事だ」


日本社会の労働者の流動性のなさにも触れられていましたが、こちらも実にその通りだと感じます。成功者と失敗者の二つしかなく、成功者は誰でもすぐに失敗者となってしまう。そして労働者に流動性がないため、失敗者は成功者になることができない。従って利得を手にしている者はそれにしがみつき、低所得者はいつまでたっても変わる事が出来ない。まさに動脈硬化です。流動性がなく、自由がなく、希望がない。経済が好況で企業はどこも過去にないほどの業績を上げているのに、社会がどこか行き詰まっていて、「こんな時代だから」みたいな言葉が蔓延する時代の理由はここにある気がします。

もっと言ってしまうと、「労働環境に流動性がない(解雇・再雇用が簡単に出来ない)」ということは、いろいろな面で現在の社会にそぐわないと思います。自身の能力を培おうというモチベーションにもつながらないですし、解雇・再雇用が簡単に出来ないため会社の注力領域を切り替える事が簡単には出来ません。有能な社員を集める事も出来ません。まさに経済成長時代の悪しき慣習なのでしょうね。政府の思い切った改善が求められる分野だと思います。本書は常々感じていた生活への不安感をうまく解きほぐしていて、すっきりしました。

「ボーダレス」という言葉が本書ではキーワードとして使われています。才能のある人材を国境を越えて集める、本書で紹介されているように、クラウドソーシングで多様な人材を一度に招集して業務を回す。このような業務形態が当たり前になってきたとき、我々はどのように変わるのだろうか、と感じます。我々の子供世代はもちろんですが、今の四十代以上のまだ現役として働き続けなければならない世代こそ、過去を知っているが故に働きにくさを感じるのではないか、と感じます。

「答えのない社会」という言葉もキーワードですね。私の世代は「答えを探すこと」が前提で、答えがない事にはどこか居心地の悪ささえ感じます。しかしこれからは答えのない事を当たり前として、自分自身で答えを定義し、創っていかなければならないようです。


「21世紀のビジネスでは、コンセプトを持つ者が成功し、豊かな暮らしを享受できるだろう」


「コンセプト」という言葉は「本質」という言葉と近い意味だと本書を読んでいて感じました。本質をどう掴み、それをどのように他人に伝え、自身の能力と紐付けていくのか。これからの時代を生きる人の課題かと感じました。

大前研一通信は毎回刺激的な内容・言い回しで、とてもいい刺激になります。また楽しみにしています。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
レビュープラス
posted by taka at 21:05| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月26日

読書日記633:ふたりの距離の概算


タイトル:ふたりの距離の概算
作者:米澤 穂信
出版元:角川書店(角川グループパブリッシング)
その他:

あらすじ----------------------------------------------
春を迎え高校2年生となった奉太郎たちの“古典部”に新入生・大日向友子が仮入部する。千反田えるたちともすぐに馴染んだ大日向だが、ある日、謎の言葉を残し、入部はしないと告げる。部室での千反田との会話が原因のようだが、奉太郎は納得できない。あいつは他人を傷つけるような性格ではない―。奉太郎は、入部締め切り日に開催されたマラソン大会を走りながら、心変わりの真相を推理する!“古典部”シリーズ第5弾。

感想--------------------------------------------------
アニメ実写化もされた「氷菓」から始まる古典部シリーズの第五作目です。いまは最新作で第六作目「いまさら翼といわれても」が刊行されていますね。

星ヶ谷杯こと、神高行事の一つ、二十キロメートルのマラソン大会に参加したホータロー、える、里志、伊原。ホータローは走りながら、新一年生の大日向が古典部入部をやめた理由を考えるー。

相変わらずのクオリティーです。いつもの四人の個性といい、ちりばめられた伏線から日常の些細な出来事を推理して解き明かすホータローの洞察といい、鉄板のシリーズです。今回は二十キロの距離を走りながら、その道中でホータローを追い越していくえるや伊原たちと短い会話を交わしながら推理を深めていきます。過去の回想もちりばめられていますが、「マラソン中に推理する」というこの発想がいかにも米澤穂信らしいです。

「二人の距離の概算」。このタイトルが二つの意味を持つということが最後になってわかります。このあたりの伏線もうまい。そしてホータローの一人称なのですが、省エネ人間であるホータローの個性が文章の隅々に表れていて、これもおもしろいです。

しかし、里志と伊原、付き合うことになったんですね。これが何よりの驚きです。前作からは信じられない展開ですが…。「『ごめんなさい』しか言えないかわいそうな生き物」というのが個人的には超絶ヒットしました。

実写映画化もされるようですが、正直これには期待していないです。配役を見ても、ちょっとちがうかな、という印象はあります。ビブリアのドラマ化もそうでしたが、なんか事務所の力関係が見えるようであまり原作とファンが大事にされていない気がして少し嫌です。こうした意見を払拭するくらいいいできだといいのですが。

次回作もそのうち読んでみる予定です。



総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
レビュープラス
posted by taka at 16:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 米澤 穂信 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月18日

読書日記632:ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~


タイトル:ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~
作者:三上 延
出版元:KADOKAWA
その他:

あらすじ----------------------------------------------
ビブリア古書堂に迫る影。太宰治自家用の『晩年』をめぐり、取り引きに訪れた老獪な道具商の男。彼はある一冊の古書を残していく―。奇妙な縁に導かれ、対峙することになった劇作家ウィリアム・シェイクスピアの古書と謎多き仕掛け。青年店員と美しき女店主は、彼女の祖父によって張り巡らされていた巧妙な罠へと嵌っていくのだった…。人から人へと受け継がれる古書と、脈々と続く家族の縁。その物語に幕引きのときがおとずれる

感想--------------------------------------------------
ドラマ化もされたビブリア古書堂の事件手帖の最新刊にして最終巻です。また一作、楽しみが終わってしまいました…。

祖父、久我山尚大の残した稀覯本、シェークスピアのファースト・フォリオ。数億円の価値を持つその本を巡り、栞子、母 智恵子、尚大の弟子の吉原はー。

本作では、本シリーズを通じて最も高価な本をめぐるドラマが繰り広げられます。シェークスピアのファーストフォリオはサザビーズで数億円で落札される古書。こんな本が実在すること自体が驚きでした。

相変わらず静かな雰囲気の作品です。古風でありながら落ち着いた雰囲気のビブリア古書堂の描写といい、栞子さんと、付き合い始めた大輔の関係といい、妹の文香や志田、滝野といった個性ある面々といい、安定した作品だと感じます。

本作はシリーズを通じて最も面白く感じました。数億の価値を持つ稀覯本をめぐる各人の思惑、クライマックスの振り市の場面などなど見せ場が多かったからだと思います。そして終わり方もすっきりしていて、本巻は上質のミステリーでした。

伏線の貼り方などいろいろとうまいな、と感じるところはありますが、何よりも古書の知識がすごいです。参考文献に書かれた書籍の数からして、著者がものすごく調査していることがよくわかります。あとがきにも書かれている通り、もがき苦しみながら生み出したのがよくわかります。−本編をよんでいると微塵も感じませんが。

うれしいことに、番外編はまだまだ執筆される予定のようです。個人的には後日譚をぜひ読んでみたいですね。すごく楽しみです。



総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
レビュープラス
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posted by taka at 10:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 三上 延 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする