2016年01月02日

読書日記573:ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか



タイトル:ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか
作者:ピーター・ティール (著), ブレイク・マスターズ (著), 瀧本 哲史 (その他), 関 美和 (翻訳)
出版元:NHK出版
その他:

あらすじ----------------------------------------------
新しい何かを創造する企業をどう立ち上げるか。スタンフォード大学起業講義録。

感想--------------------------------------------------
久しぶりのビジネス書です。ゼロ・トゥ・ワンとはゼロから1を生み出すこと、いまある1をnに増やすのではなく、そこにない新しい何かを創造する企業を生み出すための秘訣について書かれた本です。

著者のピーター・ティールは世界最大のオンライン決済システム”ペイパル”の共同創業者で、現在はエンジェル投資家として活躍している人です。ビジネスの世界で大成功を治めた人の言葉ですので、重いものがありますね。

「賛成する人がほとんどいない、隠された真実はなんだろうか?」

本書を通じて繰り返し問われるティールのこの問いが本書をよく表しています。Facebookしかり、Twitterしかり、誰も見向きもしない、想像すらしていなかったことに価値を見いだせるか、そこに気付けるか、が成功の鍵となる、と著者は言っています。

「独占こそが重要」、「成長に不可欠なのは平均の考え方ではなく、べき乗則」といった本書で示されている考え方は他のビジネス本には見られない独特な考え方です。「Googleのような独占状態にあってこそ、金儲けから離れてイノベーションに注力できる」、「平均的に成長する企業はなく、爆発的に成功する起業か、失敗する企業のどちらかしか存在しない」といったこれらの考え方は、従来のマーケティング理論には当てはまらない考え方ですが、実際の市場を見ていると彼の言う事は誤っていない事がよくわかります。アップルしかり、マイクロソフトしかり市場で大きな地位を占める企業があってこそ、その分野は進歩しますし、様々なイノベーションが進んでいきます。一方で中途半端な地位では競争状態の赤い海(レッド・オーシャン)に飲み込まれてあっぷあっぷとなります。

本書はビジネス書であるとともに、読み手を鼓舞し、勇気を与える書でもあります。

「人と同じ事をして何が楽しい?人と違ったことをしてこそ、新しい価値を生み出せるし、大成功できる。世の中の流れがどうあろうと、誰が何を言おうと、世界に隠された真実はまだまだたくさんある。それを探そうぜ!」

このような著者の言葉が聞こえてきそうです。確かに世界は探検し尽くされたように見えるが、目に見えない隠された真実はやまほどあり、それを探そうとする事が成功への道なのでしょうね。どれだけ気付けるか、探す事ができるか。私はこの本を読んでいてやはり有名なビジネス書である「仕事は楽しいかね?」を思い出しました。書かれた時代や書かれ方は大きく異なりますが、共通点の多い本だと思いました。


また本書はエリック・リースの名著「リーン・スタートアップ」を否定しているということでも有名な本です。しかし本書を読んでいくとわかるのですが、本書と「リーン・スタートアップ」で語られているレイヤーが大きく異なることがわかります。主に新規のビジネスの立ち上げるための方法について書かれているのが本書で、逆に立ち上げた後について書かれたのが「リーン・スタートアップ」ですね。一口に比較はできませんが、全てを否定している訳ではない、と感じました。

・エンジニアリング
・タイミング
・独占
・人材
・販売
・永続性
・隠れた真実

これらはスタートアップのために必要な事として書かれている項目ですが、これらの項目は古くからのビジネス書に記載されている項目によく当てはまります。「人材」では、「誰とともに始めるか、誰をバスに乗せるかが重要」と書かれていますが、これは「ビジョナリー・カンパニー2」を彷彿とさせます。

「この世界に隠された真実に気付くこと」。これは即ち「世界をいかにフラットな目で見て、本質を探れるか」ということです。多くの情報が行き交ういまのような時代だからこそ、自分の価値観を信じて判断をする必要があるし、なによりもその正しい価値観を育てなければならない、と感じました。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S
レビュープラス
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2015年11月26日

読書日記568:もしも、あなたが「最高責任者」ならばどうするか?Vol.1



タイトル:もしも、あなたが「最高責任者」ならばどうするか?Vol.1
ビジネス・ブレークスルー大学総合研究所 (著), 大前 研一 (監修)
出版元:good.book
その他:

あらすじ----------------------------------------------
ケースはすべて「あなたが●●の責任者ならばどうするか?」という質問形式。
まさに今、問題に直面している企業/政府責任者の立場となり、課題解決を考えることが「実践的経営トレーニング」の所以です。

感想--------------------------------------------------
レビュープラス様から献本いただきました。いつもありがとうございます。

本書は大前研一氏が学長をつとめるBBT(ビジネス・ブレークスルー)大学で課題として出し、討議してきた内容をまとめたものです。各章とも、「あなたが○○ならばどうするか?」といったケーススタディ形式をとっており、ビジネス判断をリアルに行える生きた課題の形式となっています。

ケーススタディは、
「あなたが任天堂の社長ならばどうするか?」
「あなたが沖縄県知事ならばどうするか?」
「あなたがUBERのCEOならばどうするか?」
などなど多岐にわたります。もし自分がその人の立場だったらどのような経営判断を下すか?といったところをリアルに検討できるため、その 人のビジネス感覚を問われますね。

本書には回答例として大前研一氏の考えも掲載されています。この考えがやはり非常に鋭いですね。様々な状況を勘案し、最善の案を導いているように感じられます。どのような業態や分野にシフトするべきか、その理由はなぜか、それらが的確にまとめられており、読んでいて参考になります。

特に面白かったのは「沖縄県知事ならば」の章です。詳細はぜひ読んでいただきたいのですが、「辺野古への基地移設とのバーター交渉で大幅な権限移譲を迫り、「人財・資本・サービス」の移動の自由化を目指す」という発想は一流のビジネスパーソンならではの発想だと思います。基地移設への徹底的な抗議を示しているだけの現状ではなかなか実現は難しそうです が、基地移設と引き換えに政府と様々な交渉をすることで沖縄のさらなる発展を実現させる、という発想には交渉のうまさが感じられます。政治家というのは本来はこうした交渉が巧みにできる人のはずだよな、と感じました。

他にも「東京ガスの社長なら」、「ローソンの社長なら」と様々なケーススタディが並ぶのですが、大前研一氏の慧眼と共に光るのが、集められているデータの豊富さ、的確さです。おそらくBBT大学関係の方々が集めているのだと思いますが、本書に載っているだけのデータを集めるには相当な苦労が必要とされると思います。適切な経営判断をするには確かなデータを集めることが必要不可欠ですが、それを苦も無くやり遂げているようで、これも印象に残りました。

こうしたケーススタディは、実際に行ってみると視点を一段高いところに置くことができ、本質的な問題が明確になる、という効果もあると感じています。自分の所属する企業などでも実践すると面白いのでは、と感じました。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス
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2015年11月14日

読書日記566:この方法で生きのびよ! ―沈む船から脱出できる5つのルール



タイトル:この方法で生きのびよ! ―沈む船から脱出できる5つのルール
作者:鈴木博毅
出版元:経済界
その他:

あらすじ----------------------------------------------
「5つの恐ろしい氷山」がいま、あなたの船に近づいている!氷山1「代替」=社会を一変する力、氷山2「新芽」=過去と決別した成果、氷山3「非常識」=変化に対応する思考、氷山4「拡散」=足枷を解放した効果、氷山5「増殖」=拡大を続ける構造。あなたの船は沈みゆくのか。それとも快進撃を続けるのか。今を生き抜く5つの方法!

感想--------------------------------------------------
レビュープラス様から献本いただきました。いつもありがとうございます。

本書はビジネス戦略コンサルタントである筆者が、ビジネスの世界で迫り来る五つの「氷山」に対処して生き抜く方法について書かれた本です。その五つの氷山を「代替」、「新芽」、「非常識」、「拡散」、「増殖」という言葉で表現し、その意味と、例、対応方法について書いています。

「なぜ彼らはここから脱出しようとしないんだろう?」

沈み行く船に留まる人々を見て発せられた、冒頭のこの言葉がとても印象的です。多くの人間は変化を嫌うものであり、たとえこのままでは破滅が待っているとしても、現状にしがみつこうとするものです。その理由の一つは現状の居心地の良さに満足してしまっているからであり、また一つは変化を起こすにはエネルギーを要するからです。しかし本書では、「目の前に氷山が迫っているのだから、動くしかないだろう?」と問いかけます。

本書で書かれている五つの「氷山」というのはこれまで多大な変化を起こしてきた事象を分析し、分類し直して名付けたものです。事例としては読者が知っているものも多いかもしれませんが、このような視点から捉え直した書籍は初めてなのではないかと感じました。

五つの「氷山」の中でも特に印象に残ったのは二つ目の「新芽」です。「大規模な破壊をきっかけとして新芽が芽吹く」ということで生態系を例にとり、山火事などの大規模な破壊を契機に森が新生することなどを取り上げています。そしてこれはビジネスの世界でも例外ではなく、戦争や大恐慌をきっかけとして成功した例を紹介しています。またここで面白いのは、「一つのことに何年か取り組んで成功しない場合は、新しい道を考えるべき」と言っている事です。「一つの道で努力を続ける」ということが賞賛されることが多いですが、「五年挑戦してだめなものは六年目もうまくいかない」と努力や目標の形を変える事を勧めています。「変化に適応していく」という視点で考えると、これは確かに正しい事だと思います。

上にも書きましたが、本書の特徴は、成功や失敗の事例を五つの「氷山」という新しい視点から捉え直している点です。変化の速度がますますあがってきている現在では、この五つの氷山にぶつかるか、うまく乗りこなすかがそのままビジネスの成否を分けるのだろうな、と感じました。

二百ページ程度で読みやすく、これまでにない視点からビジネスを捉えた本だと感じました。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス
posted by taka at 16:35| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年08月22日

読書日記554:メンターが見つかれば人生は9割決まる!



タイトル:メンターが見つかれば人生は9割決まる!
作者:井口 晃
出版元:かんき出版
その他:

あらすじ----------------------------------------------
子供がゲームをクリアするように成功する方法。7019人を指導したエキスパート育成の専門家が教える、一流の「思考」と「行動」を身につける技術。

感想--------------------------------------------------
レビュープラス様に献本いただきました。いつもありがとうございます。

本書はメンターについて書かれた本です。本書の最初の方にも書かれていますが、メンターとは「理想の人生を実現する上で、お手本となるあこがれの人」のことを指します。「メンターを見つけ、そのメンターのように人生を送れば必ず成功する」というのが本書の趣旨になります。

本書には、「なぜメンターを見つければ人生は成功するのか」といった基本的なところから、理想となるメンターの見つけ方、メンターの頭脳を自分のものにするための「モデリング」技法、メンターからの学び方、そして最後にはメンターを超えるための秘策についてまで書かれています。

読む前は「いくら理想の人とは言え、メンターを見つけただけで理想の人生が手に入るというのは大袈裟すぎるのでは?」と考えていたのですが、読んでいくとその疑問も解消されていきました。本書では「メンター」という言葉がとかく強調されているように感じますが、要は守・破・離のプロセスについて書かれた本、と言えばいいかもしれません。師の教えを守り、それを破り、最後には離れていく。自分のお手本となる人=メンターを見つけ、そのメンターを超えていく過程について丁寧に書かれた本、と言えると思います。

本書を読んでいく中で感じたのは、「『自分にとってのメンターを見つける』ということが一番難しいのでは?」ということです。本書に書かれているメンターとなりえる人の条件と言うのはかなり厳しく、「このような人は本当にいるのだろうか?」と考えてしまったりもします。しかし、そこを諦めずにメンターを探すことが成功の第一歩なのでしょうね。

本書には一定期間の間は、「とにかく自分を捨ててメンターの真似をする」ということが奨励されています。なんでもそうですが、成功経験もないのに「自己流を通す」というのはほとんど成功の見込みがなく、「成功している人になりきる、真似をする」ということは成功の近道だ、と言い切っています。確かにそうかな、とも感じますね。また、「自分を過信しすぎている」という言葉にははっとさせられます。

メンターという言葉ばかりが強調されていますが、「真摯に成功者に学ぶ」ということが非常に重要であることが、本書を読んでいくとよくわかります。成功できずに悩んでいる人にとっては一助となる本かと思います。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス
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2015年08月15日

読書日記553:プロフェッショナル シンキング



タイトル:プロフェッショナル シンキング
作者:宇田 左近 (著), 平野 敦士 カール (著), 菅野 誠二 (著), 大前 研一 (監修)
出版元:東洋経済新報社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
未来は、自らの思考力で切り開け!今後、自らが置かれた市場がどう変化していくのか。何が起きるのか。顧客の未来はどうなるのか。そして、未来の顧客はどうすれば発見できるのか。本書では、このような疑問に答えるための「武器」を提供する。

感想--------------------------------------------------
レビュープラス様に献本いただきました。いつもありがとうございます。

本書、「プロフェッショナル・シンキング」は大前研一さんが学長を務めるビジネス・ブレークスルー大学の教授陣が不確実な世の中で、自分の力で未来を見通し、切り開くためのノウハウの一端をまとめた本です。ビジネスに関するエッセンスが凝縮された本、と言えるかと思います。

「はじめに」にも書かれていますが、本書は大きく分けて三つのパートから構成されています。最初のパートでは準備運動として思考逃避の要因を取り除き思考力を鍛えることについて、二番目のパートでは「市場の未来を見通す思考力」について、三番目のパートでは「『顧客の未来』を見通し、『未来の顧客』を創造する思考力」について書かれています。ここでも紹介した「プラットフォーム戦略」の著者が書かれていたり、「ブルーオーシャン戦略」や「イノベーションのジレンマ」を取り上げたりと、多岐にわたる非常に濃い内容となっています。「市場」と「顧客」という異なった二つの観点から、それぞれのプロフェッショナルの方が論じているのが印象的ですね。

個人的な感想としては、「プラットフォーム戦略」は既読でしたので思い出しながら読んだ部分があります。一方で顧客視点でのマーケティング理論の考え方は新鮮でした。ユーザーIn and OutやMROCなどこの分野では新しい手法が次々に開発されているようで、そうした最新の手法や考え方に触れられるというのも大きな収穫でした。本書の全編を貫いている考え方は、「疑う」ということかな、とも感じました。常識を疑う、既成概念を疑う、既存のフレームワークを疑う。既存のものを「疑う」という行為は新しいものを「想像し、創造する」という行為に繋がり、ひいてはそれが、新しいビジネスを生み出すきっかけとなるのだな、と感じました。

また、本書の中に書かれていた有名な経済学者であるマイケル・ポーター教授の「日本の大企業には戦略がない。あるのは業務効率だけである」という文章には「まさにその通り」と思う反面、残念な思いもあります。戦略=長期ビジョンについての施策、業務効率=短期利益を追求するための施策、と考えると、日本企業は目先の利益にばかり目が行き、長期スパンで物事を考え成し遂げることが本当に下手なのでは?と考えてしまいます。これはトップダウン式がなかなか受け入れられない日本の企業風土とも密接な関係があると思います。定年までの逃げ切りを考える経営層などではリスクのある長期戦略など望めるべくもなく、このあたりは超高齢化社会となる日本社会の実情と相まって、今後も日本企 業の大きな問題となるのでは?と考えてしまいます。また、それでうまくいってしまっている企業環境も問題なのかもしれません。

二百五十ページ程度の本でありながら、その中身は非常に濃いです。まさに不確実な現代を生き抜く「武器」となる本ですね。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス
posted by taka at 18:13| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする