2009年07月04日

読書日記141:反自殺クラブー池袋ウエストゲートパーク〈5〉 by石田衣良



タイトル:反自殺クラブー池袋ウエストゲートパーク〈5〉
作者:石田衣良
出版元:文春文庫
その他:

あらすじ----------------------------------------------
今日も池袋には事件が香る。風俗スカウト事務所の罠にはまったサンシャイン60階通りのウエイトレス。伝説のスターが設立を夢見るロックミュージアムの真実。集団自殺をプロデュースするインターネットの“クモ男”ー。ストリートの「今」を鮮やかに描くIWGPシリーズ、切れ味がさらに増した第5弾。


感想--------------------------------------------------
 池袋の果物屋の店番であり、なんでも屋であるマコトが友人達の力を借りながら数々の事件を解決していく「池袋ウエストゲートパーク」シリーズ。本シリーズは石田衣良さんの代表作ですね。本作はこのシリーズの第五作目にあたる作品です。「スカウトマン・ブルース」、「伝説の星」、「死に至る玩具」、「反自殺クラブ」の四作から構成されます。本シリーズ、時代劇で言うと「長屋に住む御隠居さんが毎回持ち込まれてくる難題を解決していく」という話です。違うのは舞台・人物設定を現代に置き換えている、という点ですね。

 私は本シリーズが最も石田衣良さんの持ち味が生きた作品だと思います。
 軽快なテンポ、時勢を切り取ったストーリー、生き生きとした人物の描写など、読んでいてどんどん引き込まれ、池袋の街をスピーディーに生きていくマコトの姿が目に浮かび、楽しくなってきます。

 特に素晴らしいと思うのは各話の最初の数ページです。各話、出だしの数ページで事件の背景をマコトの口から説明していくのですが、ここの部分の掴みが抜群にうまい。読者の興味を引き、話の背景を説明しつつ、リズムの良い語り口・比喩表現でストーリーにテンポを与えて読者を載せ、あっというまに話の最後まで連れて行きます。
 中でも最初の最初、出だしの一行はどの話でも秀逸だと思います。この一行にストーリーが集約されているといってもいいと思うのですが、ここの出だしはとても見事だと思います。
 また、登場人物もとても個性的ですね。Gボーイズのキングで氷の男:タカシ、ヤクザのお偉いさん:サル、ファミレスを根城にする情報屋:ゼロワンなどなど、いい味をだしています。

 ストーリ自体も非常に軽いテンポで書かれています。「反自殺クラブ」は自殺を食い止める若者達の戦いを描いた作品で、確かに他の作品よりは重いのですが、他のミステリものと比べると、そこまでシリアスにならずに読めます。この軽さも本シリーズの魅力かと思います。
 また本作、宮藤官九郎さんの脚本でドラマ化もされていますね。主人公のマコトを演じていたTOKIOの長瀬さん、タカシを演じていた窪塚洋介さんが特に印象的でした。

 現代の池袋の街をスピーディーに駆け抜けていくマコトとその仲間たちの姿はとても生き生きとしています。どんな難題にも報酬をもらうこと無く立ち向かっていくマコトの姿は魅力的ですね。そして彼らへの石田衣良さんの愛着も感じられる作品です。現在、第八作目まで出ていますので、そのうち残りも読む予定です。
 

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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2009年05月09日

読書日記130:シューカツ! by石田衣良



タイトル:シューカツ!
作者:石田衣良
出版元:文藝春秋
その他:

あらすじ----------------------------------------------
仕事も会社も、わからない。でも今、闘うしかないんだ。水越千晴、鷲田大学三年生。仲間七人で「シューカツプロジェクトチーム」を結成した。目標は全員で、最難関マスコミ合格。


感想--------------------------------------------------
 石田衣良さんの作品です。最近は結婚活動、コンカツをテーマにした作品がドラマ化されていますが、本作はシューカツこと就職活動をテーマにした作品です。

 マスコミ志望の千晴は仲間とシューカツプロジェクトを結成した。最難関のテレビ局、出版社へのシューカツの行方は・・・?

 本作、テーマが何より新鮮です。就職活動を面白くテーマ化した作品は初めてではないでしょうか?現代の大学生の生活や就職活動の顛末を誰にでも読みやすい形で本にした、というのは眼のつけどころとして素晴らしいと思いました。また、テレビ局や出版社の入社試験・面接の様子がとてもよく描かれていて、私の勤めている業界とは全く異なる業界なのでとても興味を持って読むことができました。

 一方でやはり、石田衣良さんの作品ですね・・・。最近、私はどうもこの方の甘く優しいストーリー、文体が苦手になってきています。初期の作品である「池袋ウエストゲートパーク」を読んでいた頃はそんなこと感じなかったのですが・・・。なんでしょうね?私が慣れてきてしまったのでしょうか?それとも本作だけで他の作品は違うのでしょうか?登場人物もよく言えばいい人、悪く言えば単純な人が多く、心の奥底の機微が全く描かれておらず、どうにも苦手です。若者らしい複雑さとか純粋さがあまり感じられない・・・。

 本作も就職活動の顛末を描いているのですが、やはりどうにも甘さを感じてしまいます。本当の就職活動は非常に厳しいのですが、その厳しさがあまり上手く伝わってきていない気がします。まあ、とてもライトな中身なので本をあまり読まない人や若い人にも非常に受け入れやすい内容だとは思います。でも、心に残るものを求めたい、感動したい、という方にはお勧めできませんね。あと、これからシューカツに望む学生さんにはお勧めですね。シューカツの様子がよく分かりますよ。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):C


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2008年12月25日

読書日記106:リバース by石田衣良



タイトル:REVERSEリバース
作者:石田衣良
出版元:
その他:

あらすじ----------------------------------------------
ネットで出会い、心を通わせた男と女。しかしふたりは、自分の性別を偽っていたー一度送ったメールは二度ともとにもどせない。やり直しがきかない、人生のように。石田衣良。リバース。リアルな性を超えた新しい恋のかたち。ありえないことじゃない。


感想--------------------------------------------------
石田衣良さんの作品です。これまでも何作も紹介していますが、本作も甘くて切ない、現代の童話、大人のお伽噺のような作品に仕上がっています。

ネットで出会った男と女。実は男は女で、女は男だったー。

本作で訴えたかったのは「現代の「愛」の形」のようです。
これまでは男は男らしく、女は女らしくと言われていましたが、現代ではその愛の形は大分変わってきています。ネット上で知り合い恋に落ちる男女に、同性同士での恋愛を発展させていく男女。女らしい男に男らしい女ー。どれも一昔前まではあり得ない恋愛の形、男女の姿でしたが、今の世界ではどれもごく当たり前になってきています。
 
 特に本作ではSNS上でのネット恋愛に主眼を置いていますが、これなどはテクノロジーの進歩による愛の形の代表と言えるかもしれませんね。でも、人間はよく知った人達よりも全く知らない人にこそ話せることも多いですから、SNS上で恋に落ちたり、友人になった人たちも多いのではないでしょうか。

 本作、ネット上で出会った二人はなかなか交わりません。お互いの生活の中で、お互いに悩みを抱えそれを話し合い励まし合うことでどんどん絆が深まっていきます。そしてラストに繋がっていく訳ですが・・・。
 本作、確かに「あり得ない話ではない」とは思いますが、限りなく「あり得ない話に近い話」、だと思います・・・。こんなにいい話はそうそうありませんが、みんなこのような展開を望んでいるのでしょうね・・・。あと、主人公の男性がやたらともてるのが気になりました。ここら辺が、ああやはりお伽噺なんだな、と感じさせてしまいますね。
 いろいろと書きましたが、読んで損はないと思いますよ。いいお話です。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B


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2008年09月27日

読書日記88:下北サンデーズ



タイトル:下北サンデーズ
作者:石田衣良
出版元:幻冬舎
その他:

あらすじ----------------------------------------------
春から大学生になる里中ゆいかは、芝居のおもしろさを生まれて初めて教えてくれた劇団「下北サンデーズ」に入るのが夢で…。演劇の街・下北沢を舞台に贈る、弱小劇団奮闘グラフィティ!


感想--------------------------------------------------
 石田衣良さんの作品ですね。割と最近、文庫本にもなりました。「下北サンデーズ」というのは弱小劇団の名前ですね。下北サンデーズの演劇を見て感動した大学生が、下北サンデーズに入団し、そのことをきっかけとして劇団がどんどん成長して行く、サクセスストーリーです。
 登場人物がみんな一癖あるキャラクターで、成功や挫折を経験しながらそれぞれが成長して行く話はのりも軽く、あっという間に読み切ることが出来ます。

 ただ、少しストーリーが軽すぎるかな、と思いました。「下北沢」という実際の街を舞台にしているにしては、キャラクターやストーリーにいまいち現実味が無く、浮いている気がします。(「アキハバラ@DEEP」もこんな感じでした。)あと、「下北サンデーズ」がどんどん成功して行く話なんですが、その成功の理由もいまいち曖昧です。10年以上売れていなかったのに、ぽっと出の新人女優が一人入ったぐらいで売れる物なんですかね・・・?

 さらに言ってしまうと、これが決定的なんですが、劇団の話なんですけど、劇の中身の話があまり多くないんですね。むしろ劇団内の人間関係の話や、各自の身の上話がメインで、演じている劇の中身の話がとても少ないです。以前、読書日記44で紹介した恩田陸さんの「チョコレートコスモス」はここが詳細に描き込まれていたため、素晴らしい作品になっていたんだな、と分かりました。

 本書、さらっと読むにはお勧めの本です。ただ、感動したい、とか、じっくり読みたい、という方には「チョコレートコスモス」の方がお勧めですね。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):C


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2008年06月28日

読書日記68:空は、今日も、青いか?



タイトル:空は、今日も、青いか?
作者:石田衣良
出版元:日本経済新聞社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
階層社会、少子化、テロ、転職時代の風がどんなに冷たくても、ぼくらは一度きりの「今」を生きるんだ。道に迷ったあなたに贈る、やさしく、力強いメッセージ。「R25」と日経夕刊の好評連載がまとめて読める!


感想--------------------------------------------------
 石田衣良さんのエッセイ集ですね。日本経済新聞やR25などに2004年から2006年にわたって書かれたエッセイを集めた作品です。タイトルの「空は、今日も、青いか?」は冒頭にもある通り、石田衣良さんの代表作「池袋ウエストゲートパーク」で出てきたフレーズです。"あたりまえのこと"といった意味合いのようです。

 内容は政治問題や時事問題といった固めの話題から恋愛や趣味の話まで幅広く、それぞれの話題を石田衣良さんならではの切り口で切り取って話を進めています。各話題とも3、4ページ程度ですので、非常に読みやすいですね。

 読んでいて思うのは、石田衣良さんというのは本当に善意の人なんだなあ、ということです。当たり前のように悪いことを悪いと言って、良いことを良い、といっています。40超えた大人なのだから、少しくらいひねた見方、物事を斜めに見るような見方があるのかな、と思いきや、本当にみんなが当たり前のように考えることを当たり前のように言っているんですね。書き方にもどこか余裕が伺えて、ここら辺が、嫌いな人にはちょっと鼻につくのかもしれません。いいこぶっている、とかってね。

 でも、私はこの石田衣良さんのしごく"まっとうな"考え方には概ね賛同できます。というか、多くの方が賛同できるのではないでしょうか?世間的には、"ひねた見方"や"物事を斜めに見る見方"というのがかっこよく映るのかもしれませんが、それは基準として"一般的でまっとうな"考え方があるから言えることで、石田衣良さんのような"一般的でまっとうな"考え方の人が全くいなくなってしまったら、それは大問題です。

 世の中に対して自分自身の考え方を、名前と顔を出して訴えていくというのは、非常に大変なことだと思います。何か意見を出せば、その意見に同意する人からの賛同だけでなく、必ず反対意見を持つ人からのバッシングも受けるでしょうしね。そういうことを臆せずきちっとやっているだけでも、この方は尊敬に値しますね・・・。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
posted by taka at 16:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 石田衣良 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする