2011年09月11日

読書日記296:夜の桃 by石田衣良



タイトル:夜の桃
作者:石田衣良
出版元:新潮社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
これほどの快楽は、きっとどこか真っ暗な場所に通じているー。成功した仕事、洒落た生活、美しい妻と魅力的な愛人。全ては玩具にすぎなかった。安逸な日々を謳歌していた雅人が出会った少女のような女。いちずに自分を求めてくる彼女の、秘密の過去を知った時、雅人はすでに底知れぬ恋に陥っていた。禁断の関係ゆえに深まる性愛を究極まで描き切った、瑞々しくも濃密な恋愛小説。


感想--------------------------------------------------
石田衣良さんの作品です。久しぶりに読みました。

会社経営者である雅人は妻、愛人と満ち足りた私生活を満喫していた。そこに派遣社員として千映という、自分より二十歳も若い女性が現れる−

正直、私にとって本作はいまいちでした。
雅人が三人の女性の間を行ったり来たりしながら自分の今の立場や、生きることの意味みたいなものについて、考えたりしていくのですが……。正直駄目です。無駄に性描写が多すぎます。官能小説並みです。こんなになくてもいいから、もう少し一人一人の女性の個性とか、他の側面とかをもっと掘り下げて欲しいと思いました。その方がよほど三人の女性に対する雅人の考えとか、三人の違いとかがわかったような気がします。

文章はさすがにうまいので読むことはできるのですが、いかんせん、同じような展開が繰り返されていくだけで、どうにも物語にのめりこむことはできません。だいたい、こんなに簡単に愛人関係になってしまうものなのか?とか、なんで女達は主人公のことを好きになっていくんだ?とか、そういう過程がよくわからず、しかも主人公は会社経営者で物凄いお金持ち、という設定なので、現実感が全く湧きません。東京を舞台としているのに、なんというか、どこか他の世界の話?と感じてしまいます。まあ、これも私がこういう世界を知らないだけかもしれませんが…。

物語の結末の迎え方は、ありきたりと言えばありきたりですが、良かったと思います。
この方の作品はIWGPシリーズはいいのですが、他の作品では時々こういう性描写がきつい作品があって、それがいまいちに感じてしまいます。IWGPシリーズ中心に読もうかなあ、って思いました。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):C


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2011年02月27日

読書日記257:灰色のピーターパン 池袋ウエストゲートパーク〈6〉 by石田衣良



タイトル:灰色のピーターパン 池袋ウエストゲートパーク〈6〉
作者:石田衣良
出版元:
その他:

あらすじ----------------------------------------------
池袋は安全で清潔なネバーランドってわけじゃない。盗撮画像を売りさばく小学5年生が、マコトにSOSを発してきた。“まだ人を殺してない人殺し”マッドドッグ相手にマコトの打つ手は?街のトラブルシューターの面目躍如たる表題作など4篇を収録したIWGPシリーズ第6弾


感想--------------------------------------------------
石田衣良さんの作品です。やはり石田衣良さんの作品はこのIWGPシリーズが最も安定して面白いですね。IWGPシリーズは最新作として第十作目の「PRIDE」が出ています。本作は第六作目にあたりますね。第七作目の「Gボーイズ冬戦争」を既に読んでしまいましたが、後から読んでも十分面白いです。

本作には「灰色のピーターパン」、「野獣とリユニオン」、「駅前無認可ガーデン」、「池袋フェニックス計画」の四編が収録されています。特に面白かったのは「池袋フェニックス計画」でしょうか。池袋を浄化するために本腰を入れてきた警察の特別部隊とマコトたちの戦いの様子が描かれているのですが、サル、タカシ、ゼロワンといった主だったメンバーが登場しボリュームも大きく読み応えのある作品となっていました。

本シリーズ全般に言えることですが、生きていく上での真理に近い核心的なことをマコトがさらっと言葉にしていきます。これがとても私は好きです。池袋を拠点とするトラブルシューターとしての身上の軽さが反映されているのでしょうが、ともすると重くなりがちな本質的なことを軽い言葉として読み手に伝えていくこの腕前はさすが石田衣良さんだと思いました。

また、以前にも書きましたが各話の導入部分がとてもうまいですね。「他人の欲望が見えたら、どんなに楽だろうと思わないか?」これは「駅前無認可ガーデン」の冒頭ですが、こんな文で始まる物語であれば、続きを読みたくなりますよね。マコトが発する疑問形の一文から始まり、一般論的な話を展開し、最後に本題のストーリーへと結び付けていく。この冒頭の展開がその後のストーリー展開をとても引き立てていると感じます。

そして最後に、これは言わずもがなですが主人公マコトを始めとする各キャラクターの個性ですね。特にマコトはいい味を出しています。普段はクラシックを聞きながら八百屋の店番をする青年なのに、人から頼まれれば嫌とは言えず、美女にはめっぽう弱く、ヤクザやGボーイズ、警察にも顔が利く。そしていつも事件は無事解決。…長屋のご隠居みたいな人ですね。パターンは決まっているのに池袋という土地柄と世相を反映して持ち込まれる事件はいつも異なるため、新しい作品が出るたびに読みたくなりますね。マコトは困るかもしれませんが、これからも石田衣良さんにはぜひ本シリーズを続けていただきたいです。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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2010年01月20日

読書日記177:Gボーイズ冬戦争 by石田衣良



タイトル:Gボーイズ冬戦争ー池袋ウエストゲートパーク〈7〉
作者:石田 衣良
出版元:文藝春秋
その他:

あらすじ----------------------------------------------
鉄の結束を誇るGボーイズに異変が生じた。ナンバー2・ヒロトの胸の内に渦巻く、キング・タカシに対するどす黒い疑念。Gボーイズが揺らげば、池袋のパワーバランスも破綻しかねない…。タカシの危機にマコトはどう動くか?史上空前の熱き闘いを描く表題作はじめ4篇を収録した、IWGP第7弾。


感想--------------------------------------------------
 石田衣良さんの「池袋ウエストゲートパーク」シリーズの第七弾です。相変わらずこのシリーズは安定して面白いですね。主人公の何でも屋:マコトの軽快な語り口も変わらずに冴えています。

 本巻には「要町テレフォンマン」、「詐欺師のヴィーナス」、「バーン・ダウン・ザ・ハウス」、「Gボーイズ冬戦争」の四作が掲載されています。振り込め詐欺など時代を感じさせるストーリーが多いですが、やはり本巻の目玉は「Gボーイズ冬戦争」ですね。久しぶりに熱いバトル物語が読めました。

 Gボーイズの不動のキング:タカシ、キングの座を狙うNo2のヒロト、そしてGボーイズを潰して回る目出し帽の男達と、”影”と呼ばれる凄腕の殺し屋・・・。久しぶりにバイオレンスな薫りがしていいですね。
 主人公のマコトと共に本作のメインの登場人物であるGボーイズ達の王:マコト。このマコトの活躍を読むといつも私は窪塚洋介さんを思い出します。テレビドラマでは窪塚洋介さんがマコトを演じていましたが、間違いなくはまり役ですね。作者も窪塚さんを意識しながら書いているのではないでしょうか?

 何でも屋のマコトと氷高組のサル、そしてGボーイズのキング・タカシ。男性の常連キャラクターは豊富ですが女性のキャラクターは少ないですね。マコトの母親くらいでしょうか?その代わり各話毎に入れ替わり立ち代わり女性キャラが登場してきます。そして話に変化と彩りを添えていきます。・・・なんか007みたいですね。あそこまでスタイリッシュではないですが、本作も池袋の”今”を切り取った作品ばかりなのでどれも躍動感がありますね。現在は最新作「ドラゴン・ティアーズ──龍涙」が出版されています。こちらも読んでみたいですね

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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2009年12月23日

読書日記171:夜を守る by石田衣良



タイトル:夜を守る
作者:石田衣良
出版元:双葉社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
上野・アメ横通り。繁、サモハン、ヤクショの三人は、この街で暮らす幼なじみ。仕事上がりにガード下の定食屋に集まるのを楽しみに生きてる、そんないまいちクールじゃない毎日。だが、酔っ払いに息子を殺されたという老人と知り合ったことにより、アメ横の夜を守るべく「チーム」を結成することにした。痛快青春ミステリー。


感想--------------------------------------------------
 石田衣良さんの作品です。久しぶりに読みました。

 本書は「夜を守る」というタイトル通り、上野・アメ横で夜のガーディアンを勤めることになった4人のストーリーです。全8章からなり、各章で様々な事件に4人が巻き込まれて行きます。その事件は人探しだったり、ヤクザの店に嫌がらせをする犯人探しだったり、リサイクル店の手伝いだったり、実に様々です。

 本作は舞台を上野に移した「池袋ウエストゲートパーク」といえるかもしれませんね。池袋ウエストゲートパークで活躍していた何でも屋のマコトの代わりに本作ではガーディアンの隊長、フリーターのアポロが活躍します。マコトが一人で池袋の街を疾走していたのに対し、本作ではアポロ、サモハン、ヤクショ、天才の四人が上野の街を疾走します。池袋ウエストゲートパークシリーズと違って本作は四人チームですのでその掛け合いがいいいですね。いきつけの飲み屋「福屋」での会話も楽しいです。

 池袋ウエストゲートパークのノリは非常に軽快でテンポが良かったですが、本作はそこまでではありません。その分、アメ横の商店街の方々との会話がいいですね。これは池袋と上野の土地柄の違いでしょうね。こういったところで土地の違いが出ていて面白いですね。

 ストーリー自体は非常に軽いです。池袋ウエストゲートパークも軽かったですが、それよりもさらに軽く、上野で巻き起こるちょっとした事件を解決する何でも屋の話、と言った感じです。誰でもさらっと読めますが、その分あまり後に残るものはありませんね。池袋ウエストゲートパークの番外編(上野版)という雰囲気がどうしても漂います。やはり石田衣良さんの作品は"池袋"の方が似合っているのかな、と感じました。池袋ウエストゲートパークシリーズが好きな方ははまるかもしれませんね。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B


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2009年09月02日

読書日記151:親指の恋人 by石田衣良



タイトル:親指の恋人
作者:石田衣良
出版元:小学館
その他:

あらすじ----------------------------------------------
許されぬ愛にもがく二人…。究極の恋愛小説
大学三年生の江崎澄雄は、携帯メールの出会い系サイトでメールのやり取りをかさねたジュリアと恋に落ちる。しかし、二人の経済的な環境は、極端なまでに違っていた。


感想--------------------------------------------------
 何度も紹介している石田衣良さんの作品です。「親指の恋人」とは携帯メールで知り合った恋人のことを指します。タイトルの付け方、上手いですね。さすがです。 本作、冒頭である新聞記事の抜粋が紹介されます。そして物語はその新聞記事の結末に向けて進行して行きます。「現代版ロミオとジュリエット」まさにこの名の通りの作品ですね。

 携帯メールで知り合った澄雄とジュリア。この世界に居場所を見つけられない者同士、恋に落ちるが・・・。

 本作、印象的なのは澄雄の家庭とジュリアの家庭の違いです。六本木ヒルズのレジデンス棟に住み何億もの金を稼ぐ父親を持つ澄雄と、借金にまみれ日々の生活にも困窮するジュリア。この二人の姿は物語の中だけの物ですが、現実にこのような人たちは存在します。
 大きな経済力を持ち欲しい物は何でも手に入れる人がいる一方で、どんなに努力しても這い上がれない人もいる・・・。これが今の社会の一面であることは確かです。

 また本作で特徴的なのは全てが与えられた澄雄でさえも「世の中に自分の居場所が無い」と感じていることです。経済的な要因など関係なく、今の日本に住む人の一部はこのように感じているのでしょうね。空虚な心を抱え、明日への希望を持てない日本人。全てが与えられているのに、明日への希望だけがない・・・。有名な「希望の国のエクソダス」の中の台詞を思い出します。

 今の日本社会は決して平等ではありません。
 努力したくてもそのチャンスさえ与えられない人がいる一方で、初めから全てが与えられている人もいます。このような世の中が改善されない限り本作の中の澄雄やジュリアのような人間は後を絶たないのでしょうね。
 いったい何に希望を見いだせばいいのか、何を糧として明日を生きればいいのか・・・。簡単に答えられそうなこんな問題に対する答えさえ、今の日本社会は提示できません。敷かれたレール、叶わない努力。今の日本は自由な社会などではなく、とても狭く重苦しく、行き場の無い社会であることを実感させられます。そして私だけかもしれませんが、読んでいてこういうことを強く感じました。

 本作、石田衣良さんの作品にしては珍しく軽いだけでは終わらない、いい意味で色々と考えさせられる作品でした。ただ、主人公の二人の名前が澄夫(スミオ)とジュリア・・・。ロミオとジュリエットを文字っているのでしょうが、ちょっとやり過ぎの気もしました。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B


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posted by taka at 21:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 石田衣良 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする