2015年09月27日

読書日記560:クドリャフカの順番 by米澤穂信



タイトル:クドリャフカの順番

作者:米澤穂信
出版元:角川書店
その他:

あらすじ----------------------------------------------
待望の文化祭が始まった。だが折木奉太郎が所属する古典部で大問題が発生。手違いで文集「氷菓」を作りすぎたのだ。部員が頭を抱えるそのとき、学内では奇妙な連続盗難事件が起きていた。盗まれたものは碁石、タロットカード、水鉄砲―。この事件を解決して古典部の知名度を上げよう!目指すは文集の完売だ!!盛り上がる仲間たちに後押しされて、奉太郎は事件の謎に挑むはめに…。大人気“古典部”シリーズ第3弾。

感想--------------------------------------------------
「氷菓」から始まる米澤穂信さんの古典部シリーズの第三作目です。「氷菓」で文集を作り、「愚者のエンドロール」で映画を作り、本作の文化祭でいよいよお披露目です。

いよいよ始まった一大イベント、「カンヤ祭」。ホータロー、える、里志、摩耶花の古典部四人は各々に文化祭を満喫しようとするが、文集「氷菓」を作りすぎてしまった。さらに、学内では奇妙な盗難事件も発生するー。

前二作を受けての本作ということで、一つの区切りとなりそうな巻です。前作「愚者のエンドロール」に登場した人物たちも登場したりしています。本作は古典部四人の視点を切り替えながら物語が進んでいくのですが、その進め方がとてもいいです。各人の個性が十分に発揮されていて、前二作よりも個性がしっかりしている感があります。舞台も文化祭ということで、四人とも高校生らしく描かれていて、ラノベ感が前二作よりもある気がします。

「文化祭での盗難事件」という日常的な出来事を取り上げているあたりも前二作と同じなのですが、上にも述べた「文化祭」という舞台と相まって、さらに個性の強い四人の切り替わる視点での描き方も重なって、エンタメ要素満載で楽しく読むことができました。謎解きもやはり「満願」でこのミス一位をとる作者なので、うまいですね。欠点のない作品です。

個人的には漫画研究会での摩耶花の活躍やコスプレ、料理対決、摩耶花と里志、ホータローとえるの掛け合いなんかがとてもはまりました。萩尾望都とか藤子不二雄とか手塚治虫とかだったり、KOFやスト2がでてきたりとか、著者の意外な一面もかいま見れた気がしたりします。

個人的には前二作を上回るできの三作目だったと感じています。残りの作品も読んでみたいと思います。



総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
レビュープラス
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2015年03月14日

読書日記533:満願 by米澤穂信



タイトル:満願
作者:米澤穂信
出版元:新潮社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
人を殺め、静かに刑期を終えた妻の本当の動機とは―。驚愕の結末で唸らせる表題作はじめ、交番勤務の警官や在外ビジネスマン、美しき中学生姉妹、フリーライターなどが遭遇する6つの奇妙な事件。入念に磨き上げられた流麗な文章と精緻なロジックで魅せる、ミステリ短篇集の新たな傑作誕生。

感想--------------------------------------------------
米澤穂信さんの作品です。本作は非常に評価が高く、「このミステリーがすごい!」の第一位に選ばれ、本屋大賞の候補にも残っています。


本書は「夜警」、「死人宿」、「柘榴」、「万灯」、「関守」、「満願」の六編が含まれた短編集です。さすがにこのミスの一位に選ばれた作品です。どの作品も非常にレベルが高く、独特の雰囲気があります。

本作に掲載されているどの作品も「事件の犯人を捜す」というタイプのミステリーではありません。ちょっとした謎解きのようなものが含まれた作品もありますが、基本的には物語の最後に隠された真実を読者に提示し、物語の見方が変わる、というタイプの作品です。

上にも書きましたが、本書の見所はなんといってもその独特の雰囲気です。昭和を思わせるどこか古風な雰囲気を醸し出す「満願」、官能的な妖しさを漂わせた「柘榴」、ホラーテイストの「関守」。どれも物語としての完成度はもちろん非常に高いのですが、なによりもその雰囲気に魅了されます。どの作品も非常に完成度が高く、甲乙つけがたいですが、個人的には「関守」と「死人宿」が気に入りました。どちらも読み終えた時の読後感が重く、終わりの一文に怖さを感じさせます。こういうタイプの作品は大好きです。

本書は決してさらっと読めるタイプの本ではありません。最初はその硬く重い文章にとっつきにくさを感じるかもしれません。しかし一端読み出すと、止まらなくなります。この感覚は良作に独特のものと感じました。このあたり、最近では万人受けするミステリを多く書く東野圭吾さんとは対照的です。本作は重く深いですね。

本作は短編集ですので、米澤穂信さんの作品の中では「儚い羊たちの饗宴」に似ています。本作の方がさらに重く感じましたが、どちらも傑作だと思います。米澤穂信作品はときどき「?」と思わせる作品がありますが、本作は大人のミステリの傑作として推せる作品です。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S
レビュープラス
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2015年01月15日

読書日記522:さよなら妖精 by米澤穂信



タイトル:さよなら妖精
作者:米澤穂信
出版元:東京創元社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
1991年4月。雨宿りをするひとりの少女との偶然の出会いが、謎に満ちた日々への扉を開けた。遠い国からはるばるやって来た少女、マーヤ。謎を解く鍵は記憶の中に…。余韻あふれる出会いと祈りの物語。

感想--------------------------------------------------
このミスの大賞になった「満願」の著者でもある米澤穂信さんの作品です。今から十年も前の作品なのですね。積まれていた本ですが読んでみました。

一九九一年四月に僕は一人の異国の少女と藤柴市で出会った。彼女との出会いが日常の謎の扉を開いていく−。

米澤穂信さんの作品は、ミステリでありながら殺人や誘拐といった犯罪を扱うのではなく、「日常に隠された謎」を扱う点に特徴があると感じています。それは「氷菓」から始まるアニメ化もされた古典部シリーズがそうであり、小鳩くんと小山内さんが活躍する「春期限定いちごタルト事件」から始まる小市民シリーズがそうであります。「インシテミル」や「折れた竜骨」など、殺人を扱った作品もありますが、一般的なミステリーと一味違う見せ方をしているのが特徴です。

さて本作ですが、異国の少女との出会いをきっかけに、彼女がきっかけを与えてくれる日常の小さな謎を解き明かしていく、という点は他の作品とよく似ています。また主人公である高校生の守屋、男友達である文原、女友達である太刀洗、白河と出てくるあたりは、古典部シリーズを髣髴とさせ、異国の少女 マーヤまで含めた五人のやり取りは凄くいいです。文章ははっきり言って、冗長です。様々な伏線が含まれているとしても、それでも冗長です。ただ冗長ではあるけれど、不思議と読みにくく感じないですね。物語と登場人物に魅力があるからかもしれません。

しかし本作は、残念なことに終わり方がよくありません。「え?」という衝撃と供にどん底に落とされて終わります。この終わり方は、この方の作品である「ボトルネック」に通じるところがあります。なぜにこのような終わり方にしたのか?なんの必要性があってこうしたのか?正直、理解できません。「清新なボーイ・ミーツ・ガール・ミステリ」と書かれていますが、それであればもっと別の終わり方もあったはずです。何かを暗示させたかったのか?予想を裏切りたかったのか?などなどいろいろと考えるのですが・・・。最初からこの終わり方ありきで書いていたのでしょうか。青春を通しての出会いと別れ、を描くのであれば、他の終わらせ方もあったのではないかと思います。ちょっと短絡的過ぎて、残念に感じました。

正直、本作はこのかたの本としては個人的にはあまりお勧めはできないです。読者の期待を悪い意味で裏切ってしまっているのが、少し残念です。この方の作品を読むのであれば、アニメ化で一躍有名となった「古典部」シリーズや映画化された「インシテミル」などがお勧めです。「満願」もそのうち読むつもりです。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス
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2014年04月02日

読書日記474:愚者のエンドロール by米澤穂信



タイトル:愚者のエンドロール (角川文庫)
作者:米澤 穂信
出版元:角川書店
その他:

あらすじ----------------------------------------------
「折木さん、わたしとても気になります」文化祭に出展するクラス製作の自主映画を観て千反田えるが呟いた。その映画のラストでは、廃屋の鍵のかかった密室で少年が腕を切り落とされ死んでいた。誰が彼を殺したのか?その方法は?だが、全てが明かされぬまま映画は尻切れとんぼで終わっていた。続きが気になる千反田は、仲間の折木奉太郎たちと共に結末探しに乗り出した!さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリの傑作。



感想--------------------------------------------------
米沢穂信さんの作品です。少し前にはアニメ化されて放送もされていた「古典部」シリーズの「氷菓」に次ぐ第二作目ですね。完全に積ん読化されていた本ですが、ようやく読むことができました。

奉太郎、える、里志、伊原の古典部四人組は文化祭の出し物として作成されたミステリー映画を見せられる。そのミステリー映画は登場人物の一人が殺されたところで終わっていた。そして彼らは問われる。「この事件の犯人は誰だと思う?」

映画化もされた「インシテミル」や「折れた竜骨」を読んでいて思うのですが、本作の著者はミステリに対して並々ならぬ思い入れがあると感じます。名作や古典と言われるミステリー作品をオマージュとしたり、新しいミステリ方式を考えたりと、ミステリへの造詣が深く、思い入れが強いなあ、と感じます。

本作もこの著者の作品らしく、普通のミステリではありません。よくある学園ものミステリーのように学園で殺人事件が起こったりするわけではなく、学園祭の出し物として作成されたミステリー映画の犯人を当てる、というものです。病気で長期療養に入ってしまった脚本担当の少女の思考を辿っていくことが重要になるのですが、このあたり普通のミステリとの違いを感じますね。通常の殺人ものミステリーだと必ず真犯人がいるわけですが、本作では「ミステリー映画の犯人を当てる」ということで「そもそも脚本家がそこまで考えていたのか」といった脚本家の思考を辿っていくことが非常に重要になります。「もしかしたら脚本家はそこまで考えていなかったのでは?」「そもそも犯人が存在する前提のミステリー映画なのか?」といった、前提を疑ってかかるようなことをしなければならない点が非常に面白いと感じました。

でもこの点って実はミステリ小説を読む我々にも当てはまるんだよなあ、なんて読みながら思いました。我々の読むミステリ小説は当然事実ではないわけで、そうすると自然と作者の想像力、思いの及ぶ範囲がミステリの限界になります。だから著者の思いもよらない解決方法がある場合だって、あるかもしれないわけですね。これが現実との違いかな、なんて感じました。

前作、「氷菓」を読んだのはアニメ化される前なのでだいぶ間が空いてしまいましたが、それでも十分に楽しめました。短編集だった一作目より面白かったと感じたくらいです。「遠回りする雛」など続編も出ていますので読んでみたいと思います。あとは同じ作者の「春期限定いちごタルト事件」に代表される小鳩くんと小山内さんの小市民シリーズですね。これは「秋期限定くりきんとん事件」で止まっていますが、、、続編はでないんでしょうか・・・。楽しみにしています。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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2012年05月30日

読書日記348:折れた竜骨 by米澤穂信



タイトル:折れた竜骨
作者:米澤 穂信
出版元:東京創元社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
ロンドンから出帆し、波高き北海を三日も進んだあたりに浮かぶソロン諸島。その領主を父に持つアミーナはある日、放浪の旅を続ける騎士ファルク・フィッツジョンと、その従士の少年ニコラに出会う。ファルクはアミーナの父に、御身は恐るべき魔術の使い手である暗殺騎士に命を狙われている、と告げた・・・。自然の要塞であったはずの島で暗殺騎士の魔術に斃れた父、"走狗"候補の八人の容疑者、いずれ劣らぬ怪しげな傭兵たち、沈められた封印の鐘、鍵のかかった塔上の牢から忽然と消えた不死の青年ーそして、甦った「呪われたデーン人」の襲来はいつ?魔術や呪いが跋扈する世界の中で、「推理」の力は果たして真相に辿り着くことができるのか?現在最も注目を集める俊英が新境地に挑んだ、魔術と剣と謎解きの巨編登場。


感想--------------------------------------------------
氷菓」がアニメ化され、出す作品どれもヒットしている米澤穂信さんの作品です。このミスの作家別ランキングで一位を獲得するなど、売れっ子作家といっても過言ではないでしょうね。本作は「ジェノサイド」に続いて「このミステリーがすごい!」ランキングで二位に輝いた作品です。

海に囲まれ人を寄せ付けない孤島:小ソロン島の館で領主ローレンとは殺された。暗殺騎士の手下であり殺人者である、「走狗」は誰なのか?父を殺されたアミーナと騎士フィッツジョンは犯人探しに奔走する。

非常に独特な作品ですね。舞台は十二世紀末の欧州:北海の小ソロン島、騎士に暗殺騎士、魔術、さらには不死の「呪われたデーン人」まで現れる本作は作風から言えば完全にファンタジーなのに、そこで繰り広げられるのは領主である父を殺した犯人を捜す、紛れもない「ミステリー」です。こんな舞台で繰り広げられるミステリーはあまりないのではないでしょうか。独特な作品です。

本作の舞台となる世界では「魔術」なるものが存在します。それは青銅の巨人を操るものであり、人を自分のいいなりにするものであり、また自分の姿を消すものでもあります。さらには首を切られない限り死ぬことのない「呪われたデーン人」なるものも存在します。こういったある意味、常識を逸脱した仕掛けを用意するのは、ミステリーを書く者にとっては非常に大きな賭けでもないかと思います。我々の常識が通じない世界で犯人探しをする、というのは通常のミステリーでは通じる論理が通じなくなるわけですから。しかし本作はここのところを非常にうまく処理し、一流のミステリーとして仕上げているなあ、と感じさせます。

しかし一方で、読み始めて最初はこの「魔術」が非常に引っかかりました。「魔術」がある世界として読み進めてよいのか、この「魔術」自体も何かの仕掛けなのか、そのあたりの見極めがなかなか最初はつかないのですね。途中まで読んでようやく「ああ、この世界は本当に「魔術」が存在する世界なのだ」と腑に落ちました。

時代考証や舞台の設定もうまく、十二世紀末の雰囲気が非常に良く出ています。……この時代背景の描き方は確かにうまいのですが、「ローマ人の物語」や「ヴィンランド・サガ」を読んでしまうと、まだまだ甘いなあ、って感じてしまいます。特に時代は違えど同じ北海沿岸付近を描いた「ヴィンランド・サガ」の時代考証と比べてしまうとまだまだと感じてしまいますね。これは比較対象が悪いのですが。

ストーリーは分かり易く、最後に謎解きがあって一件落着するのですが、どうも腑に落ちないところがありますね。それはおそらく、主要な登場人物の誰もが冷静で落ち着いていて、あまり感情的にならないからかな、って考えてしまいます。これはこの著者の作品にわりと共通しているのですが、感情的になる人が登場する物語が少なく、人間味が作品から薄れているからでしょうね。ミステリとしては申し分ないのですが、人間ドラマにはなっていない作品が多いかな、って感じます。まあそれがこの作者の持ち味でもあるのですが。

異世界を舞台にした、独特な作品ではあると思います。この著者の作品らしいです。私がこの著者の作品で好きなのは、「インシテミル」や「儚い羊たちの饗宴」ですね。ああしたゲームのようなミステリ作品はこの著者の真骨頂でしょう。面白い作品を量産する著者ですので、次回作も期待です。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B


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posted by taka at 22:47| Comment(0) | TrackBack(2) | 米澤 穂信 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする