2011年05月01日

読書日記270:インビジブルレイン by誉田哲也



タイトル:インビジブルレイン
作者:誉田 哲也
出版元:光文社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
姫川玲子が新しく捜査本部に加わることになったのは、ひとりのチンピラの惨殺事件。被害者が指定暴力団の下部組織構成員だったことから、組同士の抗争が疑われたが、決定的な証拠が出ず、捜査は膠着状態に。そんななか、玲子たちは、上層部から奇妙な指示を受ける。捜査線上に「柳井健斗」という名前が浮かんでも、決して追及してはならない、というのだが…。幾重にも隠蔽され、複雑に絡まった事件。姫川玲子は、この結末に耐えられるのか。


感想--------------------------------------------------
ストロベリーナイト」、「ソウルケイジ」と女性刑事:姫川玲子の活躍を描いたシリーズの続編です。この二作に続いて本作の前にシリーズの短編集、「シンメトリー」が出ていますが、こちらは未読です。「ストロベリーナイト」は竹内結子さん主演でドラマかもされました。続く作品もドラマ化されるかもしれませんね。楽しみです。

チンピラの刺殺事件を追う姫川玲子。しかし捜査線上に「柳井健斗」という名前が浮かんでも捜査をするな、という圧力がかかる−。

このシリーズは相変わらず面白いです。本シリーズのどの作品もそうなのですが、ストーリーが捜査を行なう側の姫川の視点と、捜査される側の視点を切り替えながら物語が進んでいきます。捜査される側はどこか切羽詰った緊張感漂う文体で語られるのに対し、捜査する側の支店は姫川や今泉、菊田、井岡といった常連メンバーとの掛け合いを交えながら軽妙なタッチで語られていきます。このバランスが絶妙です。

また姫川を始め捜査陣が個性的でわりと軽く描かれている一方で、犯行状況の描写は非常に克明で精密に描かれています。殺害の状況、死体の状況などをまるで見てきたかのような正確な筆致で語るため、重量級の重さを読み手の心に残します。

警察ものというと、どうしてもストーリーが男臭く重くなりがちですが主人公の姫川のキャラクターがそういった点を払拭していい具合に物語に軽さを与えています。軽と重をうまく使い分け、それが物語をうまく引き立てていますね。

本作はあらすじだけ読むと、捜査に圧力をかける警察上層部との戦いが物語の主題のように見えますが、実際には姫川と、柳井健斗、そして極道の牧田の生き様が物語の主題となっています。特に柳井健斗の生き様は悲劇の積み重ねで読み手に重苦しいものを与えますね。このように人の生き様を主題とする描き方はこれまでの作品「ストロベリーナイト」、「ソウルケイジ」にも共通しています。そしてこのように人の生き様を物語の主題に据えているからこそ、本シリーズは面白く人気を博しているのでしょうね。

本シリーズは、本作の続きとして「感染遊戯」が出ていますね。こちらもいずれ読んでみたいと思います。あと本シリーズの作者である誉田哲也さんの作品、「武士道セブンティーン」と「武士道エイティーン」も読みたいですね。なかなか読めていないですが……。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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2010年05月08日

読書日記201:武士道シックスティーン by誉田哲也

本ブログで紹介した本もいつの間にか200冊を超えました。今後もよろしくお願いします!!



タイトル:武士道シックスティーン
作者:誉田 哲也
出版元:文藝春秋
その他:

あらすじ----------------------------------------------
武蔵を心の師とする剣道エリートの香織は、中学最後の大会で、無名選手の早苗に負けてしまう。敗北の悔しさを片時も忘れられない香織と、勝利にこだわらず「お気楽不動心」の早苗。相反する二人が、同じ高校に進学し、剣道部で再会を果たすが…。青春を剣道にかける女子二人の傑作エンターテインメント。


感想--------------------------------------------------
ストロベリーナイト」、「ソウルケイジ」で紹介した誉田哲也さんの作品です。「ストロベリーナイト」シリーズとは大分異なった印象を受ける作品ですね。剣道の名門高校の女子剣道部を舞台に、「勝利こそ全て」と勝負にこだわり続け宮本武蔵を心の師と仰ぐ磯山香織と、勝負に拘らず楽しい剣道を志す西荻早苗の話です。

全日本中学選手権で準優勝した実力者:磯山香織は市民戦で無名の中学生に負けてしまう。その中学生を追いかけて東松学園に進学した香織は―。

本作、香織と早苗の視点が切り替わりながら物語が展開していくのですが、まずこの両者のキャラクターが対照的でとてもいいです。敗北=死と考え、「斬る」、「殺す」といった物騒な単語がポンポン飛び出す香織と、楽しくやって、自分が成長できればそれでいい、と考えるどこかお気楽な早苗。相容れない二人の掛け合いや絡みが物語を盛り上げていきます。いやあ、文句無しに楽しい小説ですね。

剣道を通して悩み、考え、気付き、そしてお互いを理解し合っていく―。まさに青春小説の王道ですね。私は本作を読んでいて「ピンポン」や「風が強く吹いている」を思い出しました。物語の後半で生じる二人の心境の変化や、それを超えていく様もとても爽やかに描かれていますね。あと、これは名作と思える青春小説に共通している点なのですが、恋愛、という要素が全くありません。これもいいです。わき道にそれることなく、部活に青春の全てをぶつけている二人の姿がとても清々しいです。

作者の特徴かもしれませんが、文体がとてもテンポがいいです。「ストロベリーナイト」シリーズではこの文体のせいでとても読みやすいのですが一方で主人公の姫川たち警察の行動がどこか軽く見えてしまっていました。でも本作のように主人公を女子高生に据えるとその文体のテンポのよさが非常に生きてきますね。三百ページを超える作品なのにその長さを全く感じさせず、あっという間に読むことができました。本作、続編の「武士道セブンティーン」と「武士道エイティーン」も出ていますね。これらもそのうち読んでみたいと思います。

あと、本作は映画化もされていますね。まさに今、上映中です。磯山香織を成海璃子さんが、西荻早苗を北乃きいさんが演じていますが、この二人は原作のイメージにとてもよく合っていると私は思いました。これが逆だとだめでしょうね。ひたすら真っ直ぐな香織を成海璃子さんが、天真爛漫な早苗を北乃きいさんが演じるからこそ、いいのでしょうね。ただ、予告編などで制服で竹刀を持って決闘するシーンがありましたが、あれはちょっと・・・。本当に制服で打ち合うと確実に怪我しますからね。ちょっとやりすぎな気がしました。

青春小説の王道中の王道ですが、読んで損は全くありません。読み終わって清々しい気分になれる、良い作品でした。著者プロフィールに「本書は著者初の、人が一人も死なない青春エンターテインメントである。」と書かれていましたが…。ということは、本シリーズ以外の全ての作品では人が死んでいるのですね…。恐るべし、です。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S


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posted by taka at 23:16| Comment(0) | TrackBack(1) | 誉田 哲也 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年04月07日

読書日記195:ソウルケイジ by誉田哲也



タイトル:ソウルケイジ
作者:誉田哲也
出版元:光文社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
多摩川土手に放置された車両から、血塗れの左手首が発見された!近くの工務店のガレージが血の海になっており、手首は工務店の主人のものと判明。死体なき殺人事件として捜査が開始された。遺体はどこに?なぜ手首だけが残されていたのか?姫川玲子ら捜査一課の刑事たちが捜査を進める中、驚くべき事実が次々と浮かび上がる-。シリーズ第二弾。


感想--------------------------------------------------
 「ストロベリーナイト」に続く、女性警官:姫川玲子が活躍するシリーズの第二弾です。このシリーズは、姫川をはじめとした各キャラクターがとても個性的ですね。

 放置車両から発見された左手首。遺体はどこに?被害者の素性を調査する姫川たちの前に驚愕の真実が浮かび上がるー。

 本作は姫川たち警察組織が犯人と被害者を追う話の一方で、被害者と、被害者が息子のように思っていた三島耕介の視点からも物語が語られていきます。被害者の生い立ちや耕介の動きを追ううちに姫川たちが隠された真実を暴いていく、というストーリーになっています。
 本作で特筆すべき箇所は、被害者と耕介の生き様の描き方ですね。おそらくここに作者は最も力を入れて本作を描いたのではないでしょうか。強烈な父性をもって身寄りのない耕介を一人のたくましい人間として育てていった被害者:高岡。彼の耕介を思いやる意思の強さは凄まじい物があります。そしてその思いやりの裏にある真実ー。読み終えた時にはある種の感動さえも感じられます。

 ストーリーとしてはもちろん姫川をはじめとする警察側の調査場面がメインで進むのですが、本作の主人公は誰か、と言ったらそれは間違いなく高岡だと私は思います。警察側調査の場面や、姫川と同じ十係の日下の確執、菊田や井岡との関係、新人の葉山の活躍など、警察側のストーリーもそれなりに面白いのですが、やはり高岡の生き様の描き方の前には霞んでしまいますね。
 とくに最後の数ページの被害者の回想場面の描き方は凄まじいです。私は正視できずに眼を背けそうになりました。ここまで書ききるのもすごいですね。

 本作、前作の「ストロベリーナイト」でも感じたのですが、犯人、被害者側の描き方が凄まじく重いのに対し、警察側の描き方が軽いですね。大阪弁で姫川に言い寄る井岡、姫川のことを愛する菊田、係長の今春、など個性的なのですがあまり重さを感じさせないキャラクターが多いため、ちょうどいいバランスになっているように感じました。(犯人、被害者、警察と全て重いと、なかなか読み進めることができないです。)あと、本作では警察側の主役は姫川というよりも日下でしょうね。この人もいろいろなものを抱えていて、今後の作品でもその持ち味を発揮してくれそうです。

 前作「ストロベリーナイト」では、まだ各登場人物が落ち着かずどこかふわふわしている印象があったのですが、本作は二作目ということもあって、各キャラクターの居場所もしっかり固まって落ち着いた感があります。井岡のキャラクターだけはまだ受け付けにくいですが、それでも前作よりは気にならなくなりました。シリーズの続編「インビジブルレイン」も読む予定です。あと映画化される「武士道シックスティーン」も。いろいろな作品を読んでみたくなる作家さんです。

 あと、タイトルの「ソウルケイジ」はスティングのアルバムのタイトルから来ているのですね。解説を読むとその辺の成り立ちもわかりますよ。



総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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posted by taka at 20:48| Comment(0) | TrackBack(1) | 誉田 哲也 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月28日

読書日記186:ストロベリーナイト by誉田哲也



タイトル:ストロベリーナイト
作者:誉田 哲也
出版元:光文社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
溜め池近くの植え込みから、ビニールシートに包まれた男の惨殺死体が発見された。警視庁捜査一課の警部補・姫川玲子は、これが単独の殺人事件で終わらないことに気づく。捜査で浮上した謎の言葉「ストロベリーナイト」が意味するものは?クセ者揃いの刑事たちとともに悪戦苦闘の末、辿り着いたのは、あまりにも衝撃的な事実だった。人気シリーズ、待望の文庫化始動


感想--------------------------------------------------
武士道シックスティーン」が映画化される誉田哲也さんの作品です。女性警部補:姫川玲子が活躍するシリーズ物の第一作目です。誉田哲也さんの本は初めて読みました。

ビニールシートにくるまれた男の惨殺死体が発見される。警部補:姫川玲子はその死体に隠された謎に気付いて行くー

 女性警察官ものというと、女性警察官:雪平夏美が活躍する「アンフェア」が有名ですね。原作は秦建日子さんの「推理小説」ですが、本作の主人公:姫川玲子もどこか型破りで、雪平夏美に共通する部分があります。30前にして独身、ノンキャリアにして異例のスピードで警部補に上った姫川玲子。彼女には部下も既に何人かいて、そういったいみではうまく警察組織の中で動いているように見えます。
 しかしその性格は男勝りで惨殺死体にたじろぎもせず、凶悪犯を追いつめて行きます。また周りの警察官たちもいい味出してますね。菊田に井岡、勝俣、今泉・・・一癖も二癖もありそうなキャラばかりです。

 本作は男の惨殺死体をきっかけとした連続殺人から浮かび上がるキーワード「ストロベリーナイト」を軸として物語が展開して行きます。展開の仕方は警察物としてはありがちな気もしますが、各キャラクターの設定がしっかりとしていて個性的なため、物語にメリハリがついて動きがあります。姫川玲子を主人公としたシリーズはまだまだ続きそうです。というか、一作だけでこのキャラクターを終わらせるのはもったいないですね。

 ただ、個人的に私はこの井岡というキャラクターだけは受け入れられませんでした。関西弁で下手な冗談ばかりとばすキャラクターなのですが、どこか物語からこの人だけ浮いている気がしましたね。
 ただ、そんなものを補ってあまりある面白さですねキャラクターが立っていてストーリー展開が早いため気付いたら読み終わっていました。女性警察官物の新しい傑作シリーズかもしれません。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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posted by taka at 16:23| Comment(0) | TrackBack(1) | 誉田 哲也 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする