2015年07月11日

読書日記548:インデックス by誉田 哲也



タイトル:インデックス

作者:誉田 哲也
出版元:光文社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
池袋署強行犯捜査係担当係長・姫川玲子。所轄に異動したことで、扱う事件の幅は拡がった。行方不明の暴力団関係者。巧妙に正体を隠す詐欺犯。売春疑惑。路上での刺殺事件…。終わることのない事件捜査の日々のなか、玲子は、本部復帰のチャンスを掴む。気になるのは、あの頃の仲間たちのうち、誰を引っ張り上げられるのか―。

感想--------------------------------------------------
ストロベリーナイト」から始まる女性刑事 姫川玲子が活躍するシリーズの作品です。本作は全八編から構成される短編集です。

池袋署に異動となった姫川は、池袋署でも変わらずに様々な事件を担当していく―。

表題作「インデックス」を含む全八編からなる短編集です。短編であるはずなのに、相変わらず中身は濃く感じられます。そして本作の特徴として、姫川を取り巻く人間に、いつもの面々に加えて新たな人間が加わっていきます。このあたり、物語に変化をつけようとしている著者の意図が感じられます。

物語は様々な切り口の問題を扱った物語が描かれていますが、私が特に印象に残ったのは最後の二編、「夢の中」と「闇の色」です。八編のうちこの二編だけが一続きになった作品となっているのですが、本当に心が痛くなる作品です。最近では現実にこのような事件が多く発生していますが、物語を読み終えても心には痛みが残されますね。救いは物語の最後に現れる、かつての姫川の部下とのやり取りでしょうか。

上記の二編もそうですが、他にも「お裾分け」や「女の敵」など昨今の社会門愛を取り上げた作品が多いです。しかし一方で「彼女のいたカフェ」や「落としの玲子」のようなちょっと一息つけるような作品もあり、相変わらず読み応えがありつつもほろっとくるところや笑わせるところもある満足のいく作品と感じられました。安定して読める刑事者ですね。次回作も楽しみです。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス
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2013年04月03日

読書日記407:ブルーマーダー by誉田 哲也



タイトル:ブルーマーダー
作者:誉田 哲也
出版元:光文社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
あなた、ブルーマーダーを知ってる?この街を牛耳っている、怪物のことよ。姫川玲子。常に彼女とともに捜査にあたっていた菊田和男。『インビジブルレイン』で玲子とコンビを組んだベテラン刑事下井。そして、悪徳脱法刑事ガンテツ。謎めいた連続殺人事件。殺意は、刑事たちにも牙をむきはじめる。


感想--------------------------------------------------
女刑事:姫川が活躍する「ストロベリーナイト」シリーズの最新作です。姫川を竹内結子さんが演じてドラマ化され、映画化もされ、まさに絶好調のシリーズです。「ストロベリーナイト」、「ソウルケイジ」、「シンメトリー」、「インビジブルレイン」と読んできましたが、どの作品も非常に充実していて面白く、本作も期待して読んでみました。

池袋の裏社会を生きる者たちを恐怖に陥れた「ブルーマーダー」。「ブルーマーダー」はどうして生まれたのか。そしてその正体は−。

相変わらず本シリーズも面白いです。本シリーズの面白さは、キャラクターの個性ももちろんなのですが、姫川たち刑事側の視点と犯罪者側の視点が交互に切り替わり、その緊迫度を増していくところだと感じます。

どの作品でもそうなのですが、姫川たちの視点から他者の視点に切り替わる箇所があります。最初はそこで描かれている人々が誰なのか、いったい何のことを描いているのか読者にはわからないのですが、読み進めるうちに物語の本筋とリンクしてきて、最後に全体像が明らかになっていきます。この描き方が本シリーズでは本当にうまいです。

姫川たちの描き方が陽だとすると、たいていの作品でその他者の描き方は陰です。犯罪場面の描写が多く、追い詰められた犯人や被害者達の切羽詰った感が高い緊張感で描かれています。そしてその緊張感の高い描写に読者は引き込まれていきます。

本作でもこの手法は変わらず効果的です。詐欺の仲間にむりやり引きずり込まれた男、覚醒剤中毒の男、そして裏社会の者達を次々に葬り去って行くブルーマーダー。最初は緩かった糸が徐々に引き締められていき、最後に一点に集約させていく手際は見事としか言い様がありません。さらに菊田、勝俣、下井といったいつもの面々が個性を発揮して物語を盛り上げていきます。

各登場人物もシリーズを追うごとに少しずつ成長しています。新しい道を歩き始めた菊田、部下と愛した人を失った過去の辛さを何とか乗り越えようとする姫川。このように登場人物の成長を描くことが出来るのはシリーズ物の強みですね。物語がどんどんと面白くなっていきます。ただしこの面白さを知るためには、やはりシリーズのこれまでの作品を読んでおく必要がありますが。

裏家業の者達を全身の骨を叩き潰して葬り去るブルーマーダー。こうしたとんでもない悪役がでてくると物語全体に勢いが付いて読んでいる方は目が離せなくなります。ブルーマーダーが生み出された背景やその正体、最後も良く考えられていて刑事物としては出色のできだと思います。…ただ、一つ難点としては最後がちょっと呆気なかったですかね。もう少しブルーマーダーの後継者が暴れると面白かったかもしれません。

本シリーズもまだまだ続きそうです。次回作も楽しみです。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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2012年09月01日

読書日記369:ヒトリシズカ by誉田哲也



タイトル:ヒトリシズカ
作者:誉田哲也
出版元:双葉社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
見えそうで見えない。手が届きそうで届かない。時と場所、いずれも違うところで起きる五つの殺人事件。その背後につらつく女の影。追う警察の手をすり抜ける女は幻なのか。いまもっとも旬な著者の連作ミステリー。


感想--------------------------------------------------
ストロベリーナイト」、「ソウルケイジ」など姫川玲子シリーズで有名な誉田哲也さんの作品です。本作は十月からWOWOWで連続ドラマ化もされます。ドラマに先駆けて呼んでみました。

小金井で発生した拳銃による殺人事件。被疑者逮捕の後に明らかになったのは、「被害者は、一度止まった後に動いた弾丸によって殺された」という事実だった−。

本作は第一章の「闇一重」から始まり、「独静加」の第六章まで六章の構成になっています。各章で扱われるのは、暴力団構成員の射殺事件、元暴走族構成員の刺殺事件、暴力団同士の銃撃抗争事件など独立した事件であり、捜査に当たる面々も独立しているのですが、各事件の背後には一人の女の姿が見え隠れします。そして最後の章で全ての物語が繋がっていく−という構成です。東野圭吾さんの「新参者」のような構成と言えばわかりやすいでしょうか。

各章で扱われる事件の描き方はやはり刑事小説をずっと書き続けている著者だけあってうまいですね。こうした刑事小説を書かせたら、今、この方は日本で五本の指に入るのではないでしょうか。姫川玲子シリーズで培われた刑事小説の描き方がうまくこの小説にも反映されています。

一方で、読んでいて感じたのですが、最終章「独静加」での物語の終わり方が呆気なさ過ぎるように感じられました。あまりにも呆気ない物語の終末と、救いの感じられない結末。ネタバレになるのであまり書けないのですが、この女に対してはもっとうまい終わらせ方、見せ方があってもよかったのでは?と感じられます。

悪女を描いた作品というと、私の中ではすぐに東野圭吾さんの「白夜行」や「幻夜」が思い浮かびます。その美貌で他者を利用していく悪女の凄まじい生き方を描いているこれらの作品に比べると、本作では女の描き方がまだ弱いかなあ、って私には感じられてしまいます。短編形式にしている点はいいのですが、ヒロインが不幸な過去を背負って、暴力を利用して生きていく強く悪い女である一方で、中途半端にいい人として描かれてしまっているのが少し弱みに繋がっているのかなあ、って思ってしまいました。もっともっと悪く強く描くことで、その裏のほんのわずかな優しさをもっと効果的に描くこともこの作者ならできるのでは?と感じました。

ドラマではこの女−静加の役を夏帆さんが演じるそうですね。悪女の役をどれだけうまく演じるか、非常に楽しみではあります。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B


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2012年02月22日

読書日記330:シンメトリー by誉田哲也



タイトル:シンメトリー
作者:誉田 哲也
出版元:光文社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
百人を超える死者を出した列車事故。原因は、踏切内に進入した飲酒運転の車だった。危険運転致死傷罪はまだなく、運転していた男の刑期はたったの五年。目の前で死んでいった顔見知りの女子高生、失った自分の右腕。元駅員は復讐を心に誓うが…(表題作)。ほか、警視庁捜査一課刑事・姫川玲子の魅力が横溢する七編を収録。警察小説No.1ヒットシリーズ第三弾。



感想--------------------------------------------------
ストロベリーナイト」、「ソウルケイジ」、「インビジブルレイン」など通称「姫川シリーズ」の作品です。本書はそのまま現在放映中の連続ドラマのタイトルにもなっていますね。主人公の女刑事:姫川玲子を演じるのは竹内結子さん。周りを固める姫川班の面々も菊田を演じる西嶋英俊さんはじめ、豪華な役者さんが揃っていますね。

本書は姫川シリーズ第三作目にして初の短編集です。(「インビジブルレイン」は本作の後の作品ですね。)「東京」、「過ぎた正義」、「右では殴らない」、「シンメトリー」、「左だけ見た場合」、「悪しき実」、「手紙」の全七編から構成されており、一冊でこれだけ姫川班の活躍を読むことができる豪華な作品となっています。

本作は今までの作品「ストロベリーナイト」や「ソウルケイジ」と異なり、衝撃的な残酷描写は少なく、一つ一つのストーリーを丁寧に描いているな、と感じました。どの短編も主人公の姫川と登場人物の心の交流をとても丁寧にしっかりと描かれていますね。特に個人的には「過ぎた正義」や「シンメトリー」は印象に残りました。「過ぎた正義」に登場する元警察官 倉田修二は姫川シリーズの最新作「感染遊戯」にも登場しているようです。こちらはまだ読んでいませんが、いずれ読んでみたいと思っています。

このシリーズの面白さは何か、といわれると、後書きにも書かれていますが、まずは圧倒的なリーダビリティが挙げられると思います。文章もそうですが、なにより姫川班の面々が非常にテンポ良く動くため、途中で息をつく暇なく、最後まで読むことができます。
さらに、それに加えて登場人物の心理描写のうまさが光りますね。本作もそうですが、私的にはこの点では「ソウルケイジ」がピカ一でした。犯人の心理描写が凄く光ります。
姫川班の面々もだいぶ物語にフィットしてきている気がします。姫川、菊田、湯川、葉山、石倉、今泉、国奥先生も含めて大分個性が定着してきているように感じられます。
個性が生き、各キャラクターがテンポ良く動くため、読みやすいんですね。


本作は特に姫川の過去の話が多いですね。若き日の姫川の話が読みたい人は必見です。合わせて現在放映中のドラマも見るとさらに一層楽しむことができるかと思います。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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2011年05月15日

読書日記272:月光 by誉田哲也



タイトル:月光
作者:誉田哲也
出版元:徳間書店
その他:

あらすじ----------------------------------------------
お姉ちゃんが死んだ。誰からも愛された人。優しく美しく、真っ白だった人。同級生のバイクによる不運な事故?違う、お姉ちゃんは殺されたんだー。姉と同じ高校に入り、一人の教師の協力を得て真相を探り始めた妹結花。そこには覗いてはならなかった姉の秘密がー。学園にピアノ・ソナタ「月光」が流れるとき、教師と生徒の心が狂う。


感想--------------------------------------------------
ストロベリーナイト」や「武士道シックスティーン」で有名な誉田哲也さんの作品です。この作品は少し昔の作品ですね。「月光」とはベートーヴェンの「月光」のことを指します。

事故で亡くなった姉:涼子の死の真相を探る結花は、姉の死の裏に隠された悲劇を知ることになる−。

ずしりと重さを感じさせる悲劇的な作品です。
視点が次々と切り替わりながら物語が展開していくこの語り口はこれまでの作品と共通していますが、「ストロベリーナイト」や「ソウルケイジ」といった姫川玲子シリーズでは姫川たち捜査する側がわりと軽く、捜査される側が重く描かれているのに対し、本作では全体を通して「重さ」を感じさせる作品となっています。

序盤の展開、特に事故死した姉:涼子の死の経緯が語られる辺りは読んでいてその悲惨さに重苦しさを感じます。姫川シリーズでも犯人は悲惨な道を辿って犯行まで至ることが多いのですが、本作では被害者の涼子が本当にかわいそうでなりません。妹の結花と音楽教師の羽田の二人が協力して最終的に犯人を追い詰めていくのですが、犯人を追い詰めるそのプロセスよりも、被害者の悲惨さにばかりが印象に残りました。あとは語り手の一人、菅井の章ですかね。この章は菅井の言葉遣いや性根の悪さばかりが残って、どうにも下品な印象しか残りませんでした。(まあ、作者が意図してそう描いているのですが)

あと、本作ではどうも生きていない設定が多い、という印象もありました。主人公はピアノの全国チャンピオンという設定なのですが、読んでいてもとてもそうとは思えませんし、その設定もあまり生きているとは感じられませんでした。ネタバレになりますが、主人公と姉が実は血がつながっていない、という設定もそうですね。どこかで生きてくるのかと思いきや、顔が似ていない、という点でしか関係してきませんでした。どうも最初はいろいろと考えていたのに、それが最後まで生かされず、かといって設定を消すこともせず、ということで落ち着いてしまったのでしょうか。特にピアノの全国チャンピオンという設定だとすると、学校もそれなりの音楽学校であり、音楽一家と言うイメージがあるのですが、(「さよなら、ドビュッシー」ではまさにそうでした。)そのイメージがなく、いたって普通の一家のため、ちょっと浮いてしまっていますね。この様な箇所が結構多く、最後になって辻褄をいろいろとあわせたのかなあ、なんて思ってしまいました。

犯人を追い込んでいくプロセスや各キャラクターの心理描写はとてもよく、これは姫川シリーズにも受け継がれていますね。最近よく読む作家さんなので、また読んでみたいと思います。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B


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タグ:書評 月光
posted by taka at 07:52| Comment(0) | TrackBack(1) | 誉田 哲也 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする