2008年11月15日

読書日記99:使命と魂のリミット



タイトル:使命と魂のリミット
作者:東野圭吾
出版元:新潮社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
心臓外科医を目指す夕紀は、誰にも言えないある目的を胸に秘めていた。その目的を果たすべき日に、手術室を前代未聞の危機が襲う。あの日、手術室で何があったのか? 今日、何が起きるのか? 心の限界に挑む医学サスペンス。


感想--------------------------------------------------
 「流星の絆」、「容疑者Xの献身 」などで有名な東野圭吾さんの作品です。この本はここ二、三年で出版された本です。この方もかなりハイペースで本を出版してますね。最近では「聖女の救済」、「ガリレオの苦悩」といった”ガリレオシリーズ”を二冊同時に出版し、話題になってます。この二冊と「流星の絆」の三冊が今週の本の売り上げのトップ3になってます。一人でベスト3を独占・・・。本当に絶好調です。

 自分の父親が術中死・・・。その死の真相に疑問を持つ夕紀は・・・。

 先日紹介した「チーム・バチスタの栄光」と同じく心臓外科の話です。そして同じく術中死の話なのですが、本作は「チーム・バチスタの栄光」よりも”人の心”に大きく焦点をあてていますね。父親の死に疑問を抱き、担当した外科医への疑念を晴らせないでいる夕紀の心の葛藤と苦悩。まさに東野圭吾さんの得意とする分野です。克明な手術の描写と個性的なキャラクターでサスペンスとして仕立ててある「チーム・バチスタの栄光」とは対照的ですね。一言で言ってしまうと「チーム・バチスタの栄光」がミステリー、本作が人間ドラマ、といった感じでしょうか。

 本作、「人間ドラマ」と評しましたが、もちろんミステリーの要素も多く含まれています。病院に恨みを抱き、病院を脅迫する男。その男の動機は?真の目的は?そして夕紀の父親の死は殺人なのか?それとも事故なのか?ストーリーが進むにつれてこれらの謎が徐々に明かされて行き、目を話すことができません。そして最後の手術シーンは圧巻ですね。「人は誰もが使命を持っている。その使命を全うするために生きているのだ」という台詞が大きく胸に響いてきます。

この方の作品は人の心の描き方が非常に克明で繊細でしっかりしているため、安心して読むことができますね。はずれがありません。「聖女の救済」、「ガリレオの苦悩」もぜひ読んでみたいです。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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2008年10月26日

読書日記94:流星の絆



タイトル:流星の絆

作者:東野圭吾
出版元:講談社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
全ての東野作品を凌ぐ現代エンタメ最高峰!
殺された両親の仇討ちを流星のもと誓った功一、泰輔、静奈の兄妹。
十四年後、泰輔が事件当日目撃した男に、功一が仕掛ける復讐計画。
誤算は、静奈の恋心だった。


感想--------------------------------------------------
容疑者Xの献身」などヒット作を連発している東野圭吾さんの作品です。本作もドラマ化されていますね。現在放映中です。
 本作、読み終わって、素直に「とても面白かった」と言える作品でした。うたい文句通り、過去の東野作品の中でも随一かもしれません。読後感もすっきりしていて、私は一度読んだ本を読み返すということはほとんどないのですが、この作品はもう一度読み直したくなりました。

 両親を惨殺された三人の兄弟、功一、泰輔、静奈。施設に入れられ、成人し、結婚詐欺で金を稼いでいた三人の前に、犯人らしき男の陰が現れるー。
 相変わらず、各登場人物の心理描写が素晴らしいです。特に両親の復讐に燃えると同時に兄弟のことを何より大切に思う功一と、やはり両親の復讐に燃えつつも犯人の息子である戸神行成に知らず知らず惹かれて行く静奈の描写は秀逸です。
 特に、静奈の心情描写は凄いと思いました。本作では静奈が「高峰佐緒里」という女性に成り済まして行成に近づくのですが、作品内の表記が「佐緒里」から話が進むにつれて「静奈」に変わって行きます。そのことによって、最初は「佐緒里」という仮面を被っていたのが、徐々に本当の自分「静奈」を抑えきれなくなってしまう心情をうまく表現しているんですね。この辺りはさすがだなあ、と思いました。

 クライマックスへの盛り上げ方、ラストと、本当に隙がありません。読者をうまく引き込み、ハラハラ、ドキドキさせ、最後に涙を誘うその展開のうまさ、凄いです。「この小説は私が書いたのではない。登場人物たちが作り出したのだ。」という作者の言葉通り、登場人物達が生きている作品だと感じました。




 本作、ドラマ化もされています。まだ私は第一話しか見ていませんが、こちらも本当におもしろかったです。脚本が宮藤官九郎さんで、原作と大筋は同じなのですが宮藤官九郎さんの脚本らしく、ユーモア溢れた個性的な作品となっています。原作と大分テイストが違うので、原作を読んでいる方にとっては好き嫌いが別れるかもしれませんね。私はドラマ版「流星の絆」も最高に面白いと思っていますが。
 特にドラマ版では「本とテレビの違い」というのが随所に感じられ、いい意味でテレビ向きの作品に仕上がっていると思います。功一がバイトするカレー屋での功一と泰輔の掛け合い、泰輔がバイトするレンタルDVD屋でTVゲームで対戦する泰輔と静奈、メールや携帯、PCを駆使して連絡を取り合う三人の姿は、非常にスピーディーでユーモアに溢れていて小説にはない明るさを感じさせます。そして最後に両親の惨殺シーンと、夜の屋上で復習を誓い合う三人の姿で、きっちりと締めています。小説の作品をそのままドラマ化したのではどうしても野暮ったさが出てしまったでしょうが、そこをコミカルでスピーディーな脚本で乗り切っているなあ、と感じました。
 また、三兄弟を演じる二宮和也、錦戸亮、戸田恵梨香の三人も、華がある、とは言えないですが、アクティブでスピーディーで、激しい感情表現も様になっていて、演技が非常に光ります。特に静奈役の戸田恵梨香はいいですね。錦戸亮も「ラストフレンズ」のストーカー役と対照的な泰輔の役柄をとてもうまく演じてます。
 あと、個人的には二宮君を「かわいそ村の村長さん」て名付けるセンスの良さ(?)・・・抜群です。今後が本当に楽しみなドラマです。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S


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2008年10月15日

読書日記92:宿命



タイトル:宿命
作者:東野圭吾
出版元:講談社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
 高校時代の初恋の女性と心ならずも別れなければならなかった男は、苦闘の青春を過ごした後、警察官となった。男の前に十年ぶりに現れたのは学生時代ライバルだった男で、奇しくも初恋の女の夫となっていた。刑事と容疑者、幼なじみの二人が宿命の対決を果すとき、余りにも皮肉で感動的な結末が用意される。


感想--------------------------------------------------
東野圭吾さんの作品です。今、日本で最も売れている作家さんの一人です。「流星の絆」が連続ドラマ化され、「容疑者Xの献身」が映画化され、相変わらず絶好調ですね。本作「宿命」は1993年と今から15年前の作品です。でも今読んでも全く古さを感じさせません。素晴らしいです。

 ライバル関係の二人の男、勇作と晃彦。そして勇作の初恋の相手であり晃彦の夫である美佐子。一件の殺人事件を巡るこの三人の心の葛藤が主に勇作の視点から丁寧に描かれています。
 何をやっても晃彦に勝てなかった勇作が晃彦に抱える嫉妬。二人の間で揺れる美佐子の気持ち。そして物語は二人の出会いの原点の場所、レンガ病院へと凝縮されていきます。

 東野作品を読んでいつも思うのですが、どの作品でも登場人物の心理描写が物凄く深いですね。特に追いつめられた人間の心の葛藤の描き込み方は凄まじいです。論理的なだけでなく、感情や矛盾を抱えた人間の心をここまで深く描き込めるものなんだ、といつも感心します。そしてもう一点、クライマックスへの盛り上げ方も実に見事です。出来事・事件だけでなく登場人物の心もそのクライマックスへ向けて徐々に緊張が高まり、凝縮されて行くので読者も引き込まれてもう目が離せなくなりますね。
 東野作品に限らず、どの作品にも言えることですが、物語で大事なことは「何が起きたか」ではなく登場人物が「何を考えたか」なんでしょうね。登場人物の心の描写がリアルで深いほど読み手が登場人物と共感でき、その結果物語にぐいぐいと引き込まれて行く訳です。ここまで深い心理描写が出来るのは東野圭吾さんと宮部みゆきさんぐらいではないでしょうか?


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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2007年12月09日

読書日記27:夜明けの街で



タイトル:夜明けの街で
作者:東野圭吾
出版元:角川書店
その他:

あらすじ----------------------------------------------
幸福な家庭で起きた殺人事件。
まもなく時効を迎える。
僕はその容疑者と不倫の恋に堕ちた―。


感想--------------------------------------------------
 東野圭吾さんの作品です。今、福山雅治さん主演で月9で放送中の「ガリレオ」の原作者ですね。他にも広末涼子さん主演で映画化された「秘密 (文春文庫)」、沢尻エリカさん主演の「手紙 (文春文庫)」、山田孝之さんと綾瀬はるかさん主演の「白夜行 (集英社文庫)」、藤木直人さんと仲間幸恵さんの「ゲームの名は誘拐 (光文社文庫)」などなど・・・作品は数え上げたらきりがありません。そして、「ガリレオ」シリーズの「容疑者Xの献身」で直木賞を受賞した、今、日本で最も売れている作家さんの一人です。

 この方の作品を読んでいてすごいと思うのは、「はずれが一切ない」ということです。どの作品も非常に素晴らしい出来で、安心して読むことができます。

 さて、この「夜明けの街で」という作品ですが、殺人事件の容疑者と不倫の恋に堕ちた主人公の話です。ミステリーというよりも、不倫の恋に堕ちた主人公の心の葛藤を描いた恋愛小説、といった方が近いですね。

 この方の作品全てについて言えることですが、心理描写が本当に巧みです。不倫の恋にずるずると堕ちていく過程や、妻に感じる後ろめたさ、彼女に対して疑念を感じつつも愛しているがゆえに信じざるを得ない主人公の心理などを、非常に見事に、深く描かれています。そしてクライマックスへ向けて高まっていく緊張感。見事としかいいようがありません。この方の作品を読んでしまうとしばらくは他の方の作品が読めなくなってしまいますね。本当にすごいです。

 そして、特にこの作品は男性目線から描かれている不倫物ですので、共感できる心理描写は多々あるのですが、本当に「不倫はこわい」と感じました。全てを失うかもしれないのに、なぜか不倫をしてしまう世の男たち―。本当に男は馬鹿ですね・・・。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
posted by taka at 18:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 東野 圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする