2011年03月30日

読書日記264:幻夜 by東野圭吾



タイトル:幻夜
作者:東野圭吾
出版元:集英社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
幻の夜を行く男と女。息もつかせぬ傑作長編!
阪神淡路大震災の直後に、出会った男と女。男が犯した殺人を知る女は、彼を徹底的に利用し、野心を実現していく。だが彼女にも恐るべき秘密が。名作『白夜行』の興奮が再び!


感想--------------------------------------------------
新参者」に続き、東野圭吾さんの作品です。本作は同じく東野圭吾さんの名作、「白夜行」の続編的な位置付けの作品でもあります。明確な絡みはないですので本作から読み始めても十分楽しめるのですが、「白夜行」を読んでいるとさらに楽しめますね。

阪神大震災の騒動の最中に殺人を犯してしまった雅也。その現場を見ていた冬美。美冬に惹かれる雅也は、やがて美冬の言うがままに罪を重ねていく−。

大震災の直後ということで、読むなら今しかないと思いこの本を手に取りました。
全700ページを超える作品なのですが、止め時を失うほど熱中して読んでしまいました。こういうところがさすが東野圭吾さんだと思います。読者の心を掴んだら放さないですね。

本作を読んでの感想ですが、登場人物の心理描写、深まる謎、ディテールを積み重ねることで深まるリアリティ、どれをとっても非常に高いレベルの作品です。隙がありません。登場人物の描写や謎は読むほどに深まっていくのに、文章はすらすらと読めてしまうため気が付くとどんどん物語の奥に入っています。

特にうまいのは美冬が仕掛ける罠の数々の描き方です。直接的な描き方をせずに関連人物の動きを様々な視点から描くことで、読者の眼にだけ美冬の仕掛けた罠の全貌が理解できるようになっています。この描き方が実にうまいです。このような描き方をすることで読者には美冬の仕掛けた罠の恐ろしさが、美冬という女の恐ろしさが伝わってきます。
文章の書き方も実にうまいです。「新参者」の評価でも書きましたが文章が簡潔で単文であるためすらすらと読めます。奇抜な表現を使っているわけでもないのに、どうしてこんなに人物や背景の描写が凄いのですかね…。本当に凄いです。またラストの終わり方ですが、予想していない終わり方でしたので驚きましたね。そして読み終わると同時に本当に恐怖を感じました。恐ろしい物語です。

後書きにも書いてありますが、本シリーズは「白夜行」、「幻夜」と続いていますがまだ完結していないようですね。次作がいつ出るのか、実に楽しみです。ぜひ完結させて欲しいです。

本作はWOWOWでドラマ化されていますね。美冬を演じるのは深田恭子さん。はまり役だと思います。雅也を演じるのは塚本高史さん、そして美冬を追う刑事:加藤を演じるのは柴田恭平さん。派手さはないですがいい配役だと思います。また「白夜行」も映画化されていますね。主人公の雪穂を演じるのは堀北真紀さん。……堀北さんはどうでしょうね。魔性の女を演じるにはイメージが良すぎるような気もします。どこまで魔性を演じられるのか、楽しみではありますね。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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タグ:書評 幻夜
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2011年03月26日

読書日記263:新参者 by東野圭吾



タイトル:新参者
作者:東野圭吾
出版元:講談社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
日本橋。江戸の匂いも残るこの町の一角で発見された、ひとり暮らしの四十代女性の絞殺死体。「どうして、あんなにいい人が…」周囲がこう声を重ねる彼女の身に何が起きていたのか。着任したばかりの刑事・加賀恭一郎は、事件の謎を解き明かすため、未知の土地を歩き回る。


感想--------------------------------------------------
久しぶりの東野圭吾さんの本です。本作は2009年の「このミステリーがすごい!」のNo1に選ばれた作品です。つい先日まで阿部寛さん主演でドラマも放映されていましたので御存知の方も多いのではないでしょうか。

日本橋署に異動して来た「新参者」の警部補、加賀恭一郎は一人の女性が絞殺された事件を担当する。加賀は事件にまつわる謎を一つ一つ、丁寧に解きほぐしていくー。

本作も「赤い指」同様、寡黙でストイックで剣道の達人の刑事、加賀恭一郎が活躍する作品です。ただ、本作では随分と加賀のイメージが柔らかくなったように感じられます。本作は「第一章:煎餅屋の娘」から「第九章:日本橋の刑事」までの全九章で構成される作品です。各章はそれぞれ煎餅屋、時計屋、料亭、瀬戸物屋といった日本橋界隈で生活を営む人々の視点で語られていき、彼ら、彼女らが抱える悩みや謎を、殺人事件の調査を行う加賀が解きながら殺人事件の真相に少しずつ近づいていく、という物語構成になっています。

まず驚かされるのはその構成の巧みさです。各章で扱われるのはそれぞれ殺人事件の本筋とはあまり関わりのない小さな事件ばかりです。被害者がある洋菓子屋に通い詰めていた理由、被害者の部屋に残されていた人形焼きの謎、時計屋の主人が犬の散歩の途中で寄り道をしていた理由・・・。どれも小さな謎なのですが、それを加賀は丁寧に解きほぐしながら少しずつ殺人事件の真相に近づいていきます。殺人事件に関わる一つ一つの小さな謎を日本橋界隈の人と風情に結びつけ、大きな一つの筋として紡ぎ上げる ー 口で言うのは簡単ですが、この構成の上手さは並大抵のことではありません。そしてこれだけ複雑な構成でありながら、読み手に殺人事件のことを忘れさせずに物語を展開させるその展開力も凄いです。

読みながら、物語を構成する文章はもはや練達の域に達していると私は思いました。複雑な文章は一切ありません。奇をてらったような文も、ややこしい表現も、一切ありません。明瞭簡潔な文ばかりでありながらその実、登場人物の心の奥までを描き、あまつさえ、読み手に「ああ、こんな風に感じることある」と感じさせます。これはもう東野圭吾さんにしかできない技かもしれませんね。複雑な表現を駆使し、相当なページ数を割くことでこう感じさせることのできる作者はいるかもしれませんが、これだけ簡潔な表現でありながら人の心の奥深くを描くことのできる作家さんは東野圭吾さんくらいしかいないかもしれません。読みやすいのに奥が深い。東野圭吾さん、売れる訳です。

本作、物語のまとめ方、終わり方も文句の付けようがありません。最後の刑事の話や、被害者の息子の話など、ところどころに人情を絡めた点もあり、実にいい作品です。ほぼ文句のつけようがありません。一つ難点をあげるとすれば、インパクトの小ささかな・・・。私的には「容疑者Xの献身」の痺れるようなラストが忘れられません。しかし、本作も間違いなく良作です。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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タグ:書評 新参者
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2009年07月01日

読書日記140:パラドックス13 by東野圭吾



タイトル:パラドックス13
作者:東野圭吾
出版元:毎日新聞社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
13時13分からの13秒間、地球は“P‐13現象”に襲われるという。何が起こるか、論理数学的に予測不可能。その瞬間ー目前に想像を絶する過酷な世界が出現した。なぜ我々だけがここにいるのか。生き延びるにはどうしたらいいのか。いまこの世界の数学的矛盾を読み解かなければならない。



感想--------------------------------------------------
 ヒット作連発作家、東野圭吾さんの最新作です。この方の作品にしては珍しく、SF的な内容です。私は本作を読んでいて、「LOST」や「ドラゴンヘッド」を思い出しました。

 ”P-13現象”に襲われた日本。その瞬間、目の前に現れた崩壊した東京に放り込まれた13人。極限の世界で生きていくことになった彼らは元の世界に戻れるのか・・・?

 本作、東野圭吾さんの作品らしく、ぐいぐいと展開に引きずり込まれていきます。最初から最後まで息付く暇もない、といった感じす。この展開の素晴らしさはさすが東野圭吾さんだ、と思いました。

 一方で、本作は東野圭吾さんにとっては挑戦的な作品だったのではないか、と思いました。
 東野圭吾さんの作品は人間の心理描写の表現の巧みさが際立っています。特に極限状況に置かれた人間の葛藤を描く技術は他の作家さんでは真似のできないレベルに達していると私は思います。犯罪者の身内として世の中から糾弾されつつも兄弟の絆を捨てきれない家族の姿を描いた「手紙」、親の情と倫理観の間で揺れ動く親の姿を描いた「赤い指」、愛のために殺人犯の汚名を着た男の姿を描いた「容疑者Xの献身」。どれも素晴らしい出来だと思います。
 上記の作品が犯罪/サスペンス/ミステリという括りであるのに対し、本作はSFです。しかも崩壊した東京という、実際には見たことが無い世界を舞台に生きる人々の極限心理を描こうとしています。これは相当難しいことだな、と思いましたが、同時に超一流の作家さんがこういうことにチャレンジすることは素晴らしいと思いました。

 内容は・・・、SFものということもあって、やはりこれまでの東野圭吾さんの作品とは一線を画した作品というイメージです。
 極限状況で生きる人間の心理状況を描いているのですが、「崩壊した東京」という舞台を私がなかなか想像できないため、彼らの精神状況を読み手がリアルに想像できない部分がありました。これはもう、SFの宿命かもしれませんが。「崩壊した東京」という舞台をどれだけ読み手が想像できるか、そこで生きる人間の葛藤を想像できるか、ここが本作を楽しめるかどうかのポイントだと思います。
「世界が変われば善悪も変わる。人殺しが善になることもある。これはそういうお話です」こんな風なことを東野圭吾さんはおっしゃっていますが、この言葉もそうですね。「人殺しが善になるまで追いつめられた状況」をどこまでリアルに想像できるか、がポイントです。「想像力」というのは小説を読む上で重要なファクターだと思いますが、特に本作のような現実とかけ離れた世界の物語を読む際には重要だと感じました。

 あと、ラストがあまりにもあっけなさすぎるかな、とも思いました。本作、「サンデー毎日」で一年に渡って連載されていた作品です。ですので、全50回で終わることを想定して書かれているため、こうなったのかな、と思いました。東野作品にしては珍しくさらっと、終わっていましたね。

 東野圭吾さんはもともとメーカーでお仕事をされていたらしく、理系の知識に非常に強い印象があります。この知識を生かしていただき、またSF作品をぜひ書いていただければと思いました。きっとそう思った読者は多いのではないでしょうか?
 

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B


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2009年04月01日

読書日記123:ダイイング・アイ



タイトル:ダイイング・アイ
作者:東野圭吾
出版元:光文社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
誰もが少しずつ嘘をつき、
誰かを陥れようとしている。

記憶を一部喪失した雨村慎介は、自分が交通事故を起こした過去を知らされる。
なぜ、そんな重要なことを忘れてしまったのだろう。
事故の状況を調べる慎介だが、以前の自分が何を考えて行動していたのか、思い出せない。
しかも、関係者が徐々に怪しい動きを見せ始める……。

俺をみつめるマネキンの眼。
そいつは、確かに生きていた。


感想--------------------------------------------------
何度も紹介している東野圭吾さんの作品です。もう何年も前の作品ですが、さすが東野圭吾さん、古くささは感じません。

男に殴られて記憶をなくしたバーテン、雨村慎介は一年半前に起こした交通事故に関する記憶を失ってしまう。さらに自分の働くバーに怪しい女性が現れ・・・。

 まず引きつけられるのは冒頭のおぞましいシーンです。このシーンが物語の全ての鍵になるのですが、単に恐ろしいだけでなく引きつけられるような描き方をしているため、眼が離せなくなります。あと、あらかじめ言っておきますが、恐ろしい物語が苦手な方には本書はお勧めできません。本書はミステリーではなくホラーですね。最後まで読んでその恐ろしさ、タイトルの「ダイイング・アイ(死に行く眼?)」の本当の意味が分かります。結構、怖いです。

 東野圭吾さんの作品はどれも人間の心の葛藤を通して人間の本性を描いているようなところがあったのですが、本書はこういうくくりにも当てはまらないような気がします。登場人物にもあまり感情移入できませんでしたし、ちょっと違うジャンルを目指して書いてみたのかな?という印象があります。

 殴られて記憶喪失になった男、官能的な美女、失踪した女性・・・。一癖も二癖もある登場人物、そしてその登場人物の誰もが少しずつ嘘を付き、隠し事をしているという設定。徐々に明らかになっていく真実とさらに深まる謎・・・。このストーリーの構成のうまさはさすがですね。こういう物語はどのように作るのでしょうね?最後の最後まで謎を残しつつ、読者を飽きさせず、それでいてストーリーに破綻を生じさせないこの構成は見事としか言いようがありません。最後まで読み終わったところで物語を振り返ると改めてその構成の見事さに舌を巻きます。

 本作、東野作品では異例のホラー作品(?)ですが、ホラーに抵抗の無い方にはお勧めです。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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posted by taka at 21:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 東野 圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月18日

読書日記116:赤い指 by東野圭吾



タイトル:赤い指
作者:東野圭吾
出版元:講談社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
直木賞受賞後第一作。構想6年の後に書きあげられた書き下ろし長編小説、つい
に登場! 身内の起こした殺人事件に直面した家族の、醜く、愚かな嘘に練馬署
の名刑事、加賀恭一郎が立ち向かう。ひとつの事件を中心に描き出されるさまざ
まな親子像。東野圭吾にしか書き得ない、「家族」の物語。
『放課後』でのデビューから数えてちょうど60冊目にあたる記念碑的作品。



感想--------------------------------------------------
容疑者Xの献身」で有名な東野圭吾さんの作品です。東野作品には二人の名探偵が登場します。一人が大学教授で「ガリレオ」の異名をとる、「容疑者Xの献身」、「ガリレオの苦悩」などで有名な湯川。もう一人が剣道の達人にして孤独でストイックな刑事、加賀恭一郎です。本作は後者の名探偵:加賀が主役の長編物語です。

 加賀が主役、と書きましたが、少し正しくありません。本作の主役はあくまでも息子をかばおうとする前原昭夫ですね。自分の息子が起こした殺人事件をなんとか隠蔽しようとするその姿は痛々しさを感じます。殺人犯の身内、という設定は「手紙」でも書かれていましたが、東野圭吾さんは心情の描き型が抜群に上手く、息子をかばおうとする親の情と道徳観の間で揺れ動く心情がリアルすぎるため読んでいて本当に苦しくなります。しかしその一方で目が全く離せなくなります。

 本作で描いているのはまさに「親子の姿」です。痴呆になる親、癌で死にいく親、殺人を犯した子供・・・。親と子の絆の深さは、時にとんでもなく愚かな行為を親子にとらせます。そしてその姿を見つめる刑事:加賀の姿が本作でも非常に光ります。犯人を捕まえるだけでなく、その先の闇を暴く加賀の姿は素晴らしいですね。

 痴呆の母が口紅を手に塗って赤くしたことからついた「赤い指」というタイトル。そして、最後に明かされるこの「赤い指」というタイトルの本当の意味。最後まで読むと感動が押し寄せます。「容疑者Xの献身」にも負けない傑作だと思います。長編(270ページ)ですが、あっという間に読み切りました。

 加賀刑事が活躍する作品には「嘘をもうひとつだけ 」などがあります。天才:湯川と並ぶ名刑事:加賀の活躍を読みたい方にはぜひお勧めです。湯川を福山雅治さんが好演されていましたが、加賀を演じるとしたら誰でしょうね・・・。ストイックでスマートというと・・・豊川悦司さんや大沢たかおさんでしょうか?刑事:加賀の活躍する作品も映像化されると面白いだろうな、と思いました。
 しかし、それにしても東野圭吾さんの作品にははずれが無いですね・・・。ここまでハイレベルな作品を量産できるとは、本当に恐れ入ります。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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posted by taka at 20:55| Comment(0) | TrackBack(2) | 東野 圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする