2015年03月08日

読書日記532:マスカレード・ホテル by東野圭吾



タイトル:マスカレード・ホテル
作者:東野圭吾
出版元:集英社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
都内で起きた不可解な連続殺人事件。容疑者もターゲットも不明。残された暗号から判明したのは、次の犯行場所が一流ホテル・コルテシア東京ということのみ。若き刑事・新田浩介は、ホテルマンに化けて潜入捜査に就くことを命じられる。彼を教育するのは、女性フロントクラークの山岸尚美。次から次へと怪しげな客たちが訪れる中、二人は真相に辿り着けるのか!?いま幕が開く傑作新シリーズ。

感想--------------------------------------------------
東野圭吾さんの作品です。もはや鉄板の作家さんですが、なかでもこの「マスカレードホテル」は読んでみたいと思っていた作品でした。

犯人も被害者も不明のまま、殺人事件の現場になると予測されたホテル・コルテシア東京。フロントデスク係として潜入操作を命じられた新田の教育担当となったのは、山岸尚美という女性だった―。

全四百ページ以上と分厚い作品ですが、その厚さを感じさせずに一気読みさせてしまうところがさすが東野作品です。しかしもうこの程度ではこの作家の作品は驚きませんね。本書の見所はまさにそのタイトルともなっている通り、舞台が「ホテル」であるところです。そして本作を読むと著者がこの「ホテル」についてすごく勉強していたことがわかります。

本作の舞台となるホテル・コルテシア東京は超一流のホテルですが、ホテルに泊まりに来る人間には実に多種多様な人間がいて、泊まりに来る目的も様々であることがよくわかります。また客も模範的な客ばかりでなく、横柄な客、我が儘を言う客、不思議なことを言い出す客もおり、客である以上、その全てに対応しなくてはなりません。一流のホテルマンというのがどれだけたいへんか読むと良く分かります。

物語はホテルマンである山岸と潜入捜査員である新田を中心に進んでいきます。物語は犯罪捜査がメインですが、上に書いたようにホテルに宿泊に来る不思議な客についても書かれています。そしてこれが凄いところなのですが、一読した限りでは全く無関係に見えるこの宿泊客の話が、見事に犯罪捜査―殺人事件の被疑者の捜査の話と結びついてきます。この物語の構成のうまさは、さすが東野圭吾、と唸らされます。「新参者」でも幾つもの短編が少しずつ軸となる殺人事件と絡んでいて、その構成のみごとさにうならされましたが、あの作品と同じように驚かされました。

物語はいつもの東野作品のように、簡潔明瞭な文章でどちらかというと淡々と進んでいきます。しかし物語りはラストに向けて次第に加速し、最後は満足すべき終わり方を見せます。やはりすごいですね、東野圭吾。

なんの奇のてらいもない、純粋なミステリですが、それをこれだけの高い質で読み手を満足させるように書けるのはさすがです。・・・ちなみにタイトルの「マスカレード」というのは本書の中に出てくる文に由来しています。「お客様は皆、客という仮面をかぶっている」。なるほど、と思わされます。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
レビュープラス
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2015年01月05日

読書日記520:ガリレオの苦悩 by東野圭吾



タイトル:ガリレオの苦悩
作者:東野圭吾
出版元:文藝春秋
その他:

あらすじ----------------------------------------------
“悪魔の手”と名のる人物から、警視庁に送りつけられた怪文書。そこには、連続殺人の犯行予告と、帝都大学准教授・湯川学を名指して挑発する文面が記されていた。湯川を標的とする犯人の狙いは何か?常識を超えた恐るべき殺人方法とは?邪悪な犯罪者と天才物理学者の対決を圧倒的スケールで描く、大人気シリーズ第四弾。

感想--------------------------------------------------
探偵ガリレオこと帝都大学准教授・湯川学が活躍する通称ガリレオシリーズの作品です。「容疑者Xの献身」、「真夏の方程式」、「聖女の救済」などガリレオシリーズはテレビドラマでの福山雅治さんの好演も相まって、知らない人のいないシリーズなのではないかと思います。

「悪魔の手」と名乗る人物から警察に届いた犯行予告と、湯川を挑発する手紙。犯人はどのような手口で被害者を殺したのか−?

本作は短編集であり、「落下る」、「操縦る」、「密室る」、「指標す」、「撹乱す」の五話が掲載されています。東野圭吾さんの作品らしい明瞭簡潔な文章、それでありながら読み手にしっかりと何かを残す物語構成と磐石です。

どの作品も面白いのですが、中でも個人的に良かったのは「操縦る」ですね。湯川の恩師である元准教授の家で発生した殺人事件。そして予想もつかない結末−。百ページほどの作品ですが、読み手を驚かせる仕掛けや感動させる仕掛けが用意されていて、十分に印象に残る作品でした。

どの作品も言うまでもなく、鉄板で、安定して読めて、すらすらと読み進められてしまう、まさに王道のストーリーです。また内海、草薙、湯川の三人のキャラクターもいいですね。メインは「撹乱す」ですが、他の作品も十二分に面白くて、読んでいてページを繰る手が止まらなくなります。

まったくもって非の打ち所のない作品で、評価する側もどうしようかと言葉に困りますね。ガリレオ先生の活躍をこの先もドンドン読みたい、と思ってしまいます。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス
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2013年11月14日

読書日記447:聖女の救済 by東野圭吾



タイトル:聖女の救済
作者:東野圭吾
出版元:文藝春秋
その他:

あらすじ----------------------------------------------
資産家の男が自宅で毒殺された。毒物混入方法は不明、男から一方的に離婚を切り出されていた妻には鉄壁のアリバイがあった。難航する捜査のさなか、草薙刑事が美貌の妻に魅かれていることを察した内海刑事は、独断でガリレオこと湯川学に協力を依頼するが…。驚愕のトリックで世界を揺るがせた、東野ミステリー屈指の傑作。


感想--------------------------------------------------
東野圭吾さんの「ガリレオ」シリーズの作品です。福山雅治さん主演でテレビ化、映画化もされ、認知度もとても高くなりました。本作は「容疑者Xの献身」や「真夏の方程式」と同じように長編の作品です。

男が毒殺された。しかし毒混入の経路が分からず、容疑者である、男の妻には鉄壁のアリバイがあった−。

本作は以前に紹介した「真夏の方程式」より以前の作品ですが、相変わらずの鉄板ぶりです。短く簡潔で奇を衒わない文章、緻密に作りこまれた構成と謎、きっちりと描きこまれた人物の心情描写と、本当に完璧です。特に凄いと思うのは、読み手の心情を読みきったような描写です。読んでいて「これはどういうことだろう?」と疑問に感じる箇所や、「こういう考え方もあるんじゃないか?」と感じるところについては的確なタイミングで内海や草薙といった脇役の刑事たちが意見を述べてその疑問を明らかにしていきます。そのタイミングがあまりに絶妙なため、「この著者は読み手の心を読み切っているのではないだろうか?」と感じることさえあります。物語の進め方が読み手の心情に寄り添っているため、読んでいて誤解することや道を外すことがないんですね。

トリック自体も「こんなこと本当に出来るのか?」とは思いますが、奇を衒ったような無茶なものではありません。最近の小説にたまに見られる言葉遊び的な表現もないですし、本当に王道中の王道です。「ミステリファン」と呼ばれるマニアな人たちにとっては物足りなく感じるかもしれませんが、それでも恐らく外すことは絶対にできないのが東野作品かと思います。「本当のミステリとは何か」がこの人の作品を読んでいると良く分かりますね。登場人物の心情やトリック、状況などに無理なところがいっさいなく、すんなりと読めるんですね。

謎解きの理論も実に見事です。物理学者である湯川の消去法的な発想による理論の解明、「虚数解」と呼ぶ解を追求して行く理論の見事さ、本当に上手いです。また容疑者に恋をする草薙刑事の描写も抑え気味でありながら読み手にはしっかりと分かるようにかかれており、このあたりの描写も絶妙です。過剰な描写やわざとらしい表現とは無縁で、一つの文、単語で登場人物の心情を描写していきます。

このシリーズはまだきっともっともっと続くでしょうね。続く作品もぜひ読んでみたいです。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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2012年08月15日

読書日記364:真夏の方程式 by東野圭吾



タイトル:真夏の方程式
作者:東野圭吾
出版元:文藝春秋
その他:

あらすじ----------------------------------------------
夏休みを伯母一家が経営する旅館で過ごすことになった少年・恭平。仕事で訪れた湯川も、その宿に滞在することを決めた。翌朝、もう一人の宿泊客が変死体で見つかった。その男は定年退職した元警視庁の刑事だという。彼はなぜ、この美しい海を誇る町にやって来たのか…。これは事故か、殺人か。湯川が気づいてしまった真相とはー。



感想--------------------------------------------------
東野圭吾さんの作品です。「容疑者Xの献身」や「探偵ガリレオ」に代表される、物理学者:湯川が難事件を解決していくガリレオシリーズの一作です。最新作である「虚像の道化師」が刊行されたばかりです。

親元を離れ、一人で伯父の家に止まることになった小学生の恭平は、電車の中で物理学者、湯川と出会う。そして伯父の家族が経営する海に程近い旅館の宿泊客が謎の死を遂げる−。

奇を衒わない平易で簡潔な文章、徐々に深まる謎と少しずつ明らかになる真実のバランス、人の心に響くストーリー展開、そして物語を読み終えて残る読後感のよさ−。どれを取っても完璧です。さすが日本で最も売れている作家さんですね。本当に面白く、読めば読むほどどんどんと物語に引き込まれていきます。

「新参者」に代表される加賀恭一郎ものでもそうですが、特に物語の進め方が絶妙です。上にも書きましたが徐々に深くなっていく謎と、同様に少しずつ明らかになっていく真実のバランスが絶妙なため、読者は物語の展開に退屈することも無く、かといって情報が多すぎて混乱することも無く、心地よく読み進めて行くことができます。湯川の滞在する海沿いの街と、草薙と内海が操作を行なう東京。この二箇所の描写がうまく切り替わり、さらに現場と東京の操作状況も読み手に分かり易く伝えられていくため、非常にわかりやすく、物語の先をどんどんと読みたくなるように物語が展開していきます。この展開のうまさはさすがです。これまで数多のヒット作を生み出してきた著者ならではでしょうね。

また読んで行くうちに少しずつ明らかになってくる登場人物たちの意外な側面、人間性の描写もうまいですね。直接的な言葉を使わずに、ちょっとした身振りや態度、ふとしたときの言葉を使って各登場人物の内面を丁寧に描きだしていきます。普段は心の内に秘めている葛藤や悩み、苦しみなどが表面に出てくる瞬間の描写が本当にうまいです。人間とはどういうものなのか、その矛盾に満ちた部分まで含めて良く理解していないと、こうは描けないでしょうね。一流の作品を描くためにはどうしても登場人物をしっかりと描かなければならず、それは必然的に人間をどれだけ見つめ理解しているかに拠ってくるかと思うのですが、著者は本当に人間を正面からしっかりと見つめてきたのだろうな、と思います。その眼力は凄まじいばかりです。

本当に、東野圭吾さんの作品は鉄板ですね。先に挙げた「容疑者Xの献身」、「探偵ガリレオ」、「新参者」、「麒麟の翼」、「赤い指」、さらには「秘密」、「白夜行」、「幻夜」……。本当にはずれがありません。東野圭吾さんの作品は、何度も繰り返しますが単なる事件を描いたミステリではなく、その背後でしっかりと人間ドラマを描いているからこそ、ここまで売れるのでしょうね。さらに最近ではその描き方に無駄が無く、極みの域にまで達しているようにさえ感じられます。特に湯川シリーズ、加賀シリーズは鉄板ですね。どの作品も面白いですし、今後もどんどんと読みたくなります。

またテレビ&映画シリーズも面白いですね。福山雅治さんの湯川、阿部寛さんの加賀もとてもはまっていると思います。本作も映画化されるのでしょうか。相棒の柴崎コウさんとともに真夏の海を舞台に活躍する湯川の姿をぜひ見たいと思いました。

しかし、ミステリってネタバレになってしまうため具体的なことをなかなか書けないですね・・・。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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posted by taka at 21:15| Comment(0) | TrackBack(3) | 東野 圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月19日

読書日記346:麒麟の翼 by東野圭吾



タイトル:麒麟の翼
作者:東野圭吾
出版元:講談社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
寒い夜、日本橋の欄干にもたれかかる男に声をかけた巡査が見たのは、胸に刺さったナイフだった。大都会の真ん中で発生した事件の真相に、加賀恭一郎が挑む。


感想--------------------------------------------------
東野圭吾さんの作品である本作は「赤い指」や「新参者」と同じように刑事:加賀恭一郎が活躍するシリーズです。本作は阿部寛さんや新垣由比さん出演で映画化もされていますね。図書館では千人を超える順番待ちの作品でしたが、ようやく読むことができました。

日本橋の麒麟像の前で殺されていた男。その男を殺したと目される被疑者は交通事故により意識不明の重態に陥る。二つの事件の裏に隠された真実とは−?

相変わらず東野圭吾さんの本は完成度が高いですね。本当にこの方の作品ははずれがありません。最初から最後まで一気に読めてしまいます。特に本作や「新参者」に代表される刑事:加賀恭一郎の活躍する作品と、「容疑者Xの献身」に代表される大学教授:湯川学ものは、安定して楽しむことができます。

本作を読んでいくと分かるのですが、一文一文の完成度が本当に高いです。ページ数こそ三百ページを超えているのですが、さほど文が多いイメージはありません。だから簡単にどんどん読み進めることができてしまうのに、読者の心をしっかり掴んでしまいます。一文一文が非常に良く練られており少ない文で、テンポを損なうことなく、必要な情報を過不足無く読者に提供し、さらに各登場人物の心情を的確に表現していきます。

もはや練達の極みですね。宮部みゆきさんの作品が多くの文でしっかりとした情景描写、心情描写を組上げて行くのとは対極にある気がします。並みの作家では書けないようなこういった文章を普通に書けてしまうからこそ、日本No1のベストセラー作家なのでしょうね。

本作は加賀たち刑事側と、被害者:青柳武明の家族、さらに被疑者:八島冬樹の恋人、中原香織の側の三つの視点が切り替わりながら描かれていきます。この視点の切り替えるタイミング、各キャラクターの心情、そして舞台となる日本橋の描写とそこに隠された謎の描き方、最後の結末までの描き方、どれもが非常に秀逸です。

また本作には過去の加賀が主人公として活躍した「赤い指」、「新参者」との関りも少し描かれていますので、この二作をあらかじめ読んでいると、さらに楽しめるかと思います。しかし著者は相当に日本橋に惚れ込んでいるのでしょうね。本作と「新参者」を読むとそれが凄く良く分かります。

さて東野圭吾さんの本は他にも「マスカレード・ホテル」や「ナミヤ雑貨店の奇蹟」などが出ていますが……。人気が凄まじいので、なかなか読むのは難しいかもしれないですね。これだけの質の作品を絶え間なく出し続けることが出来るということが、また凄さの一つでもありますね。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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posted by taka at 21:04| Comment(0) | TrackBack(3) | 東野 圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする