2011年12月28日

読書日記319:恋物語 by西尾維新



タイトル:恋物語
作者:西尾維新
出版元:講談社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
阿良々木暦を守るため、神様と自分の命を取引した少女・戦場ヶ原ひたぎ。約束の“命日”が迫る冬休み、彼女が選んだのは、真っ黒で、最悪の手段だった……。<物語>はその重圧に軋み、捩れ、悲鳴を上げる


感想--------------------------------------------------
西尾維新さんの物語シリーズの最新作です。本作でセカンドシーズンも最後を迎えることになりましたね。あっという間でした。

蛇神と化した千石撫子に死刑宣告を受けた阿良々木暦と戦場ヶ原ひたぎ。千石撫子を止めるべく、戦場ヶ原ひたぎは自分の家を滅茶苦茶にした憎き仇、詐欺師:貝木泥舟に千石撫子を騙すように依頼する−。

相変わらず、いい意味で期待を裏切る作品ですね。本作の語り手は「ひたぎエンド」のタイトルどおりの戦場ヶ原ひたぎではなく、主人公である阿良々木暦でもなく、なんと詐欺師の貝木泥舟でした。主要キャラでもなく、むしろ完全なる悪役である貝木泥舟を物語の中心においてストーリーを展開させるあたり、最初は大丈夫かな?と思ったりもしましたが、読み進めて行くうちに、この物語展開では語り手はこの人しかいないよな、って思えるようになってきます。

戦場ヶ原ひたぎ、阿良々木暦、羽川翼、斧乃木余接、そして千石撫子と、出演キャラクターも多いですね。総出演とまではいかないですが。本作は語り部が貝木泥舟だからということもありますが、物語はわりとシリアスに進んでいきます。戦場ヶ原ひたぎの依頼を受け、千石撫子の素性を調べあげていく貝木泥舟。相変わらず登場人物同士の掛け合いで物語が構成されていくのですが、その掛け合いはいつになくシリアスな気がして、物語シリーズの当初とは大分変わったな、という印象も受けます。

斧乃木余接、影縫余弦、臥煙伊豆湖、忍野扇と、ここまで読んでくると、当初に比べてキャラクターが増えたなあ、って感じます。しかし物語の初期から出ている登場人物たちの個性が余りにも強烈過ぎるため、まだまだ彼らの影は薄いですね。ファイナルシーズンでどこまで彼らが表に出てきて活躍できるか、が見ものです。

物語は、予定調和、というわけではないですが、一応はいい方向に解決して終わりを迎えます。しかし第三者である貝木の視点からの語りなので、いまいち実感が湧かないところがありますね。また最後の終わり方は、まあ貝木が語り手、っていう時点でおそらくこういう結末を迎えるだろうなあ、という予想はつきましたね。この先がどうなるかはとても楽しみですが。あと、本作もそうですが、恋物語とか、「ひたぎエンド」というタイトルとかは、ほとんど意味を持たないですね。あまりタイトルとは関係なく、話は進んで行きます。


セカンドシーズンが終わり、ファイナルシーズンは「憑物語(よつぎドール)」「終物語(おうぎダーク)」「続終物語(こよみブック)」の三作だそうです。個人的にはどうも胡散臭くて全ての黒幕っぽい忍野扇がとても気になりますが…。来年も楽しみです。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):


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2011年10月12日

読書日記305:鬼物語 by西尾維新



タイトル:鬼物語
作者:西尾維新
出版元:講談社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
阿良々木暦の影に棲む吸血鬼・忍野忍。彼女の記憶から呼び覚まされた、 “怪異を超越する脅威”とは…!?美しき鬼の一人語りは、時空を超えて今を呑みこむー!!


感想--------------------------------------------------
つい先日も「少女不十分」で紹介したばかりの西尾維新さんの作品です。本書も出版された瞬間、本の売り上げランキングの総合一位を獲得していました。出す本出す本、全て必ずといっていいくらい、売り上げランキングの一位になっていますね。出版の速度も半端なく速いですし、暫くは西尾維新さんの時代が続きそうです。若干ネタバレですのでご注意を。

阿良々木暦と八九時真宵の前に突如現れた『くらやみ』。全てを飲み込むその『くらやみ』をきっかけに、最強の吸血鬼、忍の過去が甦る−。

本書は再び語り部が主人公である阿良々木暦に戻っていますね。時刻暦的には「傾物語」の直後からの開始となります。語り部が阿良々木暦に戻っていることもあってか、いつもの物語シリーズに戻った気がします。

本書に収録されているのは「しのぶタイム」ということで最強の吸血鬼である忍野忍の話かと思いきや、メインは八九時真宵ですね。確かに忍の話も多くの部分を占めるのですが、だれがメインかと聞かれれば、それは間違いなく八九時真宵です。ここら辺が「傾物語」と逆ですね。あちらは「まよいキョンシー」という八九時真宵の話かと思いきや、忍がメインのような話でしたし。

文体や語り方、話の進め方はこれまでの物語シリーズを踏襲しています。ここらへんは暦が語り部に戻ったことでかなり安定していると感じます。あと、本作で出てくるメインキャラクターは忍野忍、八九時真宵、斧乃木余接の三人なのですが…忍:八歳、真宵:十歳、余接:十二歳と、幼女と少女と童女しか出てこない…。この作者は大丈夫なのだろうか、とかちょっと考えてしまいます(笑)。しかも全作読んでいるにもかかわらず、『斧乃木余接ってだれだったっけ?』って考える始末でした…。

ストーリー自体は今回は盛大なバトルもなく、忍の過去の話や四人の会話で成り立っていてこれはこれでとても面白かったのですが、最後は『え?』って感じでした。あー、こうなっちゃうんだ、という真っ当といえば真っ当な展開に少し驚きました。あとはラストで現れる忍野扇の存在ですね。彼女の存在はなんなのか、どういう役割を果たすのか…。彼女の弁を借りると、彼女事態がこの物語シリーズの『くらやみ』のような役割を果たしそうですが…。次回作でうまく終わるのか、それとも第三シリーズに続くのか、彼女の存在が左右しそうです。

あとは次回作、「恋物語:ひたぎエンド」で第二シリーズもおわりですね。ツンデレを超えてツンドラに進化した戦場ヶ原ひたぎ。彼女は第二シリーズではほとんど出てきていませんが、彼女がどう変わったのか、はたまた何も変わっていないのか、とても楽しみです。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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2011年09月17日

読書日記298:少女不十分 by西尾維新



タイトル:少女不十分
作者:西尾維新
出版元:講談社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
少女はあくまで、ひとりの少女に過ぎなかった…、妖怪じみているとか、怪物じみているとか、そんな風には思えなかった。ー西尾維新、原点回帰にして新境地の作品。


感想--------------------------------------------------
西尾維新さんの最新作です。相変わらず凄まじい売れ行きですね。Amazonでは直木賞受賞作の「下町ロケット」、東野圭吾さんの最新作「マスカレード・ホテル」を抑えて本全体の売り上げランキング一位になっていました。恐るべし、です。

作家志望の「僕」は交通事故の現場で少女:Uと出会う。この出会いが、「僕」の作家との原点となっていく−

西尾維新という作家がなぜにこれほどまで売れるのか。
そのヒントが本作を読んでいてなんとなく分かった気がします。本作の主人公である作家志望の「僕」はいろいろな劣等感を抱えています。人と付き合うことが苦手であり、ものの見方がどことなく捻くれていて、人生に対して前向きというよりは後ろ向きです。しかし「僕」はそんな自分から決して眼を逸らすことなく、しっかりと受け入れて生きています。そして物語の中で「僕」は少女:Uと出会い普通ではない体験をするのですが、結果として「僕」もUも大きくは変わりません。大袈裟に言っても、本の少しだけ人生に対して前向きに進めるようになった、という程度です。


主人公が基本的にネガティブであり、それでも現実をしっかりと生き、様々な体験をするけれど大きな変化がない。これは戯れ言シリーズなどにも共通する部分かと思いますが、これまでの他の方の作品で、このような物語って少ない気がします。主人公が前向きで、物語を通して成長して、最後に事件を解決したり、世界を救ったりする−。こんな物語が多くて、でも現実にはそんなことはありえないことを知っている賢い読者は、いつしかこのような物語に飽きてきていて、それが自分達の視点に近い視点で語られる西尾維新の作品に惹かれている原因なのかなあ、って感じます。

ネガティブだけどそんな自分をしっかりと分析していて、その自分を受け入れつつ現実を生きている。だけど、やはりどことなく人生には後ろ向き−。これは作者である西尾維新さん自身にも重なるのでしょうが、このような人は今の世の中、特に若い層を中心に実はかなりたくさんいて、そういう人たちの共感をうまく集めているのだろうな、と感じます。特にこの方の作品は全て一人称視点で語られるため共感もし易いのでしょうね。そしてそのような「自分」の視点で語られる物語の中で巻き起こる、予想の斜め上を行く物語展開のうまさが、やはりこの方の作品の魅力なのだと思います。

さて本作ですが……正直、途中まで読んでいて「この物語はどういう終わりを迎えるのだろうか?」ということばかりが気になっていました。しかし、終わってみると「なるほど!」と満足の終わり方でしたね。予想外の終わり方だったのですが、その終わり方がとても良くって、不覚にも感動を覚えたくらいです。

西尾維新さんの作品を何作も読んでいて思うのですが、この方は物語の終わらせ方がとてもうまいと感じます。「え、こんな終わり方?」と思う予想を裏切る終わり方の作品もあるのですが(「囚物語」とか)、期待を下回る終わり方の作品は無いですね。これも若い人を中心に売れる理由かと思います。

……さて、今月末には化物語シリーズの最新巻も出ますね。一ヶ月で千枚以上書く、とか一ヶ月以上、人と話すことなく作品を書き続けることもある、とか売れっ子作家さんの凄まじい生活ぶりも本作では語られていましたが、読者である我々としてはもっともっと読みたいところです。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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2011年07月09日

読書日記284:囮物語 by西尾維新



タイトル:囮物語
作者:西尾 維新
出版元:講談社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
“ー嘘つき。神様の癖に”かつて蛇に巻き憑かれた少女・千石撫子。阿良々木暦に想いを寄せつづける彼女の前に現れた真っ白な“使者”の正体とは・・・?“物語”は最終章へと、うねり、絡まり、進化するー。



感想--------------------------------------------------
三か月に一冊のペースで刊行される西尾維新さんの「化物語」シリーズ。本作はその最新作です。本作の主人公は、本シリーズの主人公、阿良々木暦に惹かれる女子中学生、千石撫子です。毎回、予想を裏切るストーリー展開で読者を驚かせる西尾維新さん。今回も楽しみにしていました。

可愛いけれど内気な女子中学生:千石撫子はある日、白い蛇に巻き付かれるー。

毎回、語り手が変わる本シリーズのセカンドシーズンですが、今回の語り手は本作の主人公である千石撫子でした。これは一応、想定内ですね。物語展開は、「花物語」や「猫物語(白)」のように語り手の成長を描く、ストーリーになっています。ここら辺は実に真っ当ですが、本作ではそのエンディングに驚かされます。というか、あっけにとられます。え、こんな終わり方なの?みたいな。

掛け合いだけで進んで行く西尾維新さんの作品ですが、本作もその勢いは止まりません。一見、無害で被害者で可愛いだけの撫子の本性をいろいろな人や怪異達との会話を通して曝け出して行きます。まあもともと本シリーズ内でどこか危なそうな雰囲気を醸し出していた撫子だけに、その本性が分かっても驚きはなかったのですが、その最後の終わり方には、繰り返しになりますが、驚かされました。

本作のポイントはいくつか私的にはあるのですが、まずは撫子と月火の会話ですかね。女子中学生同士の会話なのに、月火が怖い怖い。撫子でなくても怖くなります。しかし、この逃げを許さずに徹底的に撫子を追いつめる月火はある意味、撫子を本当に心配している一番の親友なのかもしれません。

次が、撫子がぶち切れる場面です。これは本作の中で最高に笑えました。回し蹴りで教室の扉を蹴破り、クラスメイトに有象無象と呼びかける撫子。いいです、この壊れっぷり。西尾維新らしさ全開です。

そして最後が、何度も繰り返しますが、エンディング場面。え、こんな終わり方なの?このあとどうなるの?ってな感じで、余韻を残した終わり方なのですが、続きが読みたくてしょうがありません。続きは最終巻「恋物語」で語られるのでしょうね。ここら辺は、上手いです。さすが西尾維新です。

本シリーズもあと二作で終わりです。爆発的に売れていて、新刊が出るたびに売り上げランキングの十位以内に必ず入る本シリーズ。サードシーズンもありそうですね。こんな売れるシリーズを講談社さんが放っておくはずありませんものね。あと二作も、サードシーズンも楽しみです。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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2011年04月16日

読書日記268花物語 by西尾維新



タイトル:花物語
作者:西尾維新
出版元:講談社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
“薬になれなきゃ毒になれ。でなきゃあんたはただの水だ”阿良々木暦の卒業後、高校三年生に進級した神原駿河。直江津高校にひとり残された彼女の耳に届いたのは、“願いを必ず叶えてくれる『悪魔様』”の噂だった…。“物語”は、少しずつ深みへと堕ちていくー。


感想--------------------------------------------------
三ヶ月に一作のペースで刊行される西尾維新さんの「物語」シリーズの最新刊です。近くの本屋では東野圭吾さんの「麒麟の翼」を押さえて売り上げ一位になっていました……。恐るべし、西尾維新、です。

直江津高校に通う神原駿河は、どんな願いも叶えてくれる「悪魔様」の噂を耳にする−。
本作に収録されているのは「するがデビル」。元バスケ部エースにして左手に悪魔を宿す神原駿河が主人公の作品です。本作はまたまた予想を裏切り神原駿河が語り手として紡がれる物語になります。私の中で、神原駿河は本シリーズの中で最もぶっ飛んだ性格のキャラクターなのですが、まさか彼女が語り部になれるとは思っていませんでした。羽川翼が語り部を務めた「猫物語(白)」と同じような展開で、こんなにこいつはまともなキャラだったか?と少しびっくりしました。物語が普通です。

相変わらず本シリーズならでは、西尾維新作品ならではの作品です。独特の会話、言葉、文章。いいです。これが作品の根幹にあり、物語を作っていますね。本作ではメジャーキャラクターは主人公の神原駿河以外はあまり出てこないです。脇役&悪役っぽかった貝木泥舟なんかがちょっといい役で出ていたりします。びっくりです。

本作、読み進んでいくとわかるのですが、極めてまっとうな青春小説になっています。神原駿河がライバルとの対決を超えて、色々なものを乗り越え、失い、そして得ていく。神原駿河の成長が描かれた小説というべきかもしれません。これまたびっくりです。猫物語(白)でもそうでしたが、読み終わって、あれ?こんなにこのシリーズってまともだったっけ?っという感じですね。

特に猫物語(白)からの後期ステージに入ってから感じることですが、これまで本シリーズにあったぶっとんだ印象がだいぶ消えています。前期ステージの作品では登場人物のぶっとんだ性格が売りだった部分もあるのですが、だいぶ陰が薄くなった気がします。物足りなさを感じる人も多いのかもしれませんが、これはこれで面白いです。

さて、次作は「囮物語:なでこメデューサ」。また三ヵ月後が楽しみです。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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タグ:書評 花物語
posted by taka at 10:54| Comment(0) | TrackBack(1) | 西尾 維新 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする