2010年10月28日

読書日記236:ばいばい、アース3 by冲方 丁



タイトル:ばいばい、アース〈3〉爪先立ちて望みしは
作者:冲方 丁
出版元:角川書店
その他:

あらすじ----------------------------------------------
カタコーム戦役で皆を叱咤した城外の民の指導者、ジンバックが死んだ。弔いに訪れたベル一行は、城外の友人たちと再会し、酒と剣と恋に夜は更けてゆく。一方、飢餓同盟に身を投じたアドニスは、究極の治療薬にして猛毒「試者の灰」を手に城を襲い、王に挑みかかった。今度は敵としてベルの前に立ったアドニスは笑いながら問いかける。「俺を、斬れるか?」ー冲方丁がおくる魂のファンタジー、狂騒の第3巻


感想--------------------------------------------------
「ばいばい、アース」の三巻です。物語も佳境に入ってきました。

飢餓同盟へと堕ちたアドニスは「錆びた爪」を振るって神の樹に自らの懐疑をぶつけんとする−。

復活を遂げたベルと更なる強さを手に入れたアドニス。恋人のような関係だった二人が、いつの間にか敵対し、激しくぶつかり合います。だんだんと物語が佳境に入るにつれ、物語独特の世界観で語られる内容が多くなり、非常に魅力的な物語りながらも、物語の内容が独特すぎてだんだんと理解し難くなってきます。しかしそれでも本作の魅力は薄れるどころか強まるばかりです。

盲目の結界士ベネット、隻腕の指揮者ギネス、「唸る剣」を振るうベルに「錆びた爪」を使うアドニス、演算魔法を展開するうさぎのキティ、幻の紫煙をくゆらせるシアンに神に挑戦し続けたドランブイ……。どのキャラクターも個性的かつ魅力的で、物語を引き立てています。そして濃密な世界観。世界観が濃密過ぎて、何冊も続けて読むとその世界に酔ってしまいそうにさえ感じます。

また、どの巻もそうなのですが、見せ場が非常に多いですね。激しい戦闘シーンが息つく間もなく立て続けに展開されるため、物語から目を離すことができません。激しいファンタジーアクション映画を見ているような印象さえ受けます。そしてそれでいて、各キャラクターの内面をしっかり描いているところがさすが本屋大賞受賞の作者だと思いました。
本巻の見所はやはり後半の飢餓同盟とベルたちの戦いのシーンでしょうね。楽隊を組んでの戦いは一巻のカタコームでの戦いを思い起こさせます。あのときと比べて誰もが成長しており、無類の強さを発揮するベル、ギネス、ベネットの戦いは読んでいてとても面白いですね。

さて、本作も残すところあと一巻ですね。神の樹の内部で繰り広げられる戦い。そしてアドニスとベルの戦いの行方は……?だんだんと熾烈を増す戦いと、ちょっと見落とすと置いてかれそうになるストーリー展開。アドニスにシアンやドランブイがどう関ってくるのか、最後まで目が離せません。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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タグ:冲方丁 書評
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2010年10月13日

読書日記233:ばいばい、アース2 by冲方 丁



タイトル:ばいばい、アース 2 懐疑者と鍵
作者:冲方 丁
出版元:角川書店
その他:

あらすじ----------------------------------------------
ひとつの戦いが終わり、つかの間の休息にひたるベル。戦友である弓瞳族のギネス、水族のベネットと夜通し馬鹿騒ぎ、王家の姫シェリーとは姉妹のように睦み合い、弧剣士アドニスを訪れては人生を語る。触れたもの全てを朽ちさせる宿命を持ったアドニスは、誰とも深く交わらず、世界への疑いが捨てられない。そんな彼とベルの間には、恋にも似た思いが通い始めるがー冲方丁がおくる傑作ハイ・ファンタジー、急転の第2巻!!


感想--------------------------------------------------
「ばいばい、アース」の二巻です。本作、文庫では全四巻です。前作は主人公のベル、孤高の剣士アドニスなど登場人物の紹介的な側面と、カタコームの戦いという大規模な戦闘に終始していました。本巻ではベルとアドニス二人の内面がより強く描かれています。

 孤独でありながらも強き剣士であるベルとアドニスの二人はいつしか心を通わせていくが、アドニスは自分の生き様にますます何も見出せなくなっていく−

 似たような境遇でありながらも正反対の道へと進んでいくベルとアドニス。読み進めていくと分かるのですが、常に生まれ続ける剣を持つベルと、常に枯れ続ける剣を持つアドニス、二人の激突は必至のようです。二人の生き様がどのように交錯するのか、そしてそれを見るとき読み手である我々は何を感じるのか、非常に興味のあるところでもあります。

 相変わらず表現力、描写力、構成力、どれをとっても凄いですね。単純なファンタジーの領域などとうに超えています。ベルとアドニスそれぞれの内面描写の深さ、迫力のある戦闘シーン、独特な世界観、どれも秀逸です。
 特に本作では二人の内面描写がうまいですね。何にも楽を見出せず、堕ちて行くアドニスと、ある事件をきっかけに抜け殻のようになってしまったベル。それぞれが求めるものは何なのか、何を欲して生きていくのか−。その根源的な欲求を見出すべく葛藤し慟哭するベルの姿は痛々しいまでです。

 ファンタジーでありながら登場人物が生き生きと躍動し、悩み、苦しみ、その苦しみから抜け出そうともがいており、一流の小説のようです。前巻の紹介でも書きましたが、独特すぎる世界も違和感なく仕上げており、見せ場もたくさんあり、実に面白い、一流のエンターテイメント作品だと思います。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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2010年09月30日

読書日記231:ばいばい、アース1 by冲方丁



タイトル:ばいばい、アース 1 理由の少女
作者:冲方 丁
出版元:角川書店
その他:

あらすじ----------------------------------------------
地には花、空に聖星、人々は猫や蛙、鼠などさまざまな動物のかたちを纏う。この世界に、ラブラック=ベルはたったひとり、異形のものとして生まれた。牙も毛皮も鱗もない“のっぺらぼう”の彼女は、自分と同じ存在を探す旅に出る。放浪者の資格を購うため、剣士となって“都市”と“外”との戦いに臨むベル。そこで彼女を待っていたのは-。異能の世界構築者冲方丁、最初期の傑作が待望の文庫化。



感想--------------------------------------------------
天地明察」で本屋大賞を受賞した冲方丁さん。「天地明察」は図書館で予約しているのですが予約数が多くてまだまだ来そうに無いですので、他の作品を読んでみようと思い、本作を手にとってみました。過去には水野良さんの「ロードス島戦記」や田中芳樹さんの「アルスラーン戦記」などを読みましたが、最近はめっきりファンタジーは読まなくなり、こういうファンタジー小説を読むのは本当に久しぶりです。なのでかなり期待して読んでみました。

大剣「唸る剣」と共に、旅人になるために師匠の下を離れて「剣の国」を訪れる少女剣士ベル。ベルはやがて大きな戦いに身を投じていく−。

読み始めてまず驚くのは、その世界設定です。
猫瞳族、弓瞳族、長耳族、水族といった数多くの種族、自分だけのスペルが刻まれた自分だけの剣を育て上げていく剣士たち、演算魔法、飲食魔法といった数多くの魔法、刻を表す様々な色と、その色で刻を告げる時計石、神を楽しませるための剣楽と楽しめなくなった者が陥る飢餓同盟。そしてそんな世界にただ一人、人間として生きるベル−。
 既存のどのファンタジー小説、RPGゲームとも異なる独特な世界設定です。様々な種族や、魔法、剣が入り交じり、そのどれもに非常に精緻な設定があります。読み方の複雑な語、謎だらけでありながら先を案じさせるストーリー、神の樹が中心の国など、この世界が非常によく考えられて構築されていることがわかります。この作品の世界設定には、大作RPGの世界設定と同じくらいの労力がかけられているのではないでしょうか。

 そして次に驚くのは、それだけ独特な世界設定でありながら、キャラクターもストーリーも全く浮いていない、ということです。これだけ独特な設定だと作者の独りよがりでストーリーが進んでしまい、読み手が全くついていけなくなることもあるのですが、そういう点が全くありません。読めば読むほど物語の世界に引き込まれていきます。これは独特なストーリーでありながらそのストーリーをきちんとした物語にするだけの文章力、構成力があるからでしょうね。冲方丁さん、さすがです。本屋大賞を受賞するだけのことはあります。

物語の前半はベルと師匠の別れ、長耳族のキティや猫瞳族のアドニスやガフといった仲間との出会いが中心に描かれています。そして後半では壮絶な戦闘シーンが描かれています。RPGをやりこんだ人やファンタジー好きの人にはたまらない展開ですね。長耳族(うさぎ)のキティと一緒に旅する辺りを読んでいると、私は不思議の国のアリスを連想してしまいました。

物語の中にはこの世界独特の考え方や言葉があるため、やや難解に感じられるところもありましたが、それも全てこの世界の設定をより深めるための設定であり、決して物語りに破綻をきたしたり、読み手がついていけなくなるようなものではありません。物語を読んでいて、終始読み心地の良さを感じる作品でした。

この作品は 冲方丁さんの初期の作品で、2000年に書かれた作品です。10年も前にこれだけの作品を書くとは凄いですね。本作は文庫ではあと三冊あります。表紙の絵も文庫はいいですね。ベルをうまく描いていると思いました。あと三冊も順次紹介して行きたいと思います。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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posted by taka at 00:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 冲方 丁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする