2014年08月13日

読書日記499:重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る by大栗 博司



タイトル:重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る
作者:大栗 博司
出版元:幻冬舎
その他:

あらすじ----------------------------------------------
私たちを地球につなぎ止めている重力は、宇宙を支配する力でもある。重力の強さが少しでも違ったら、星も生命も生まれなかった。「弱い」「消せる」「どんなものにも等しく働く」など不思議な性質があり、まだその働きが解明されていない重力。重力の謎は、宇宙そのものの謎と深くつながっている。いま重力研究は、ニュートン、アインシュタインに続き、第三の黄金期を迎えている。時間と空間が伸び縮みする相対論の世界から、ホーキングを経て、宇宙は一〇次元だと考える超弦理論へ。重力をめぐる冒険の物語。



感想--------------------------------------------------
本書は超弦理論の第一人者である著者が、「重力」をキーワードとしてニュートン理論から最新の超弦理論についてまで書かれた本です。超弦理論の本も出版されており、そちらを読もうとも思ったのですが、いきなり超弦理論に飛び込むのはハードルが高すぎると考え、まずは本書を読んでみました。


本書は新書版で三百ページを切るほどの厚さの本です。従って、新書サイズとして一般的な厚さの本ではないかと思います。しかしその中身は非常に密度が濃いです。本書にはニュートン理論から始まり、アインシュタインの特殊相対性理論と一般相対性理論、量子力学、そして最後には重力と電磁気力を結ぶ理論と目される超弦理論についてまで書かれています。

「よくこれだけ多くの複雑な話を、この厚さの本に、しかもこれだけ分かり易くまとめられたな」というのが正直な感想です。相対性理論、量子力学、超弦理論と、どれも決して分かり易い理論ではないと思うのですが、分かり易い例を多用しながら、一般人にも理解し易いように丁寧に説明されています。

本当に、各理論の入門書的な位置付けの本としては、最高の本ではないかと思います。各理論供にやはり一読しただけでは理解が難しく、何度か読み直す必要はあると思うのですが、それでも各理論の位置付け、アインシュタインを初めとする様々な物理学者の功績、そして超弦理論で何が分かるのか、今、どのような状況にあるのか、といったことが良く分かる本です。「この分野の知識全くなしで理解できるか」と聞かれると素直に頷きにくくはありますが、高校物理程度の知識があれば理解できる内容ではないかと思います。

この本は一昨年に刊行された本ですが、ヒッグス粒子の発見など、重力を巡る話題については最近豊富です。本書は読んで得をした本ですね。同じ著者の超弦理論についての本もいつか読んで見たいと思います。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S


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2014年07月19日

読書日記495:食べものだけで余命3か月のガンが消えた  全身末期ガンから生還した、私のオーガニック薬膳ライフ



タイトル:食べものだけで余命3か月のガンが消えた 全身末期ガンから生還した、私のオーガニック薬膳ライフ
作者:高遠 智子 (著)
出版元:
その他:

あらすじ----------------------------------------------
28歳の若さで末期の卵巣がんと診断され、余命半年の宣告を受けた著者。
最後の数か月は好きなことをしようと車イスで渡仏し、そこで奇跡のトマトに出会います。
薬の副作用で味覚障害を抱えていたものの、モンマルトルのビオマルシェでトマトを食べた際に唾液分泌が発生し、味覚がまだ残っていることを認識しました。
それまでは食べることを放棄していましたが、食べることによって身体も心もできていることに気づき、自分自身で「食で細胞活性再生することはできないか」と思い立ち食の勉強を始めます。
食事療法によってがんを克服する過程や、料理が大の苦手だった著者がパリのリッツ・エスコフィエでフレンチガストロノミー上級ディプロマを取得、さらに中国で国際中医薬膳師免許を取得した際のエピソードを交えながら、体の不調に効く食材や料理、薬膳のレシピを紹介しています。


感想--------------------------------------------------
「食べものだけで余命3か月のガンが消えた」
本書のこの衝撃的なタイトルは、様々なレビューを見る限り好意的には捉らえられていません。それも当然かと思います。このタイトルは人目を引くキャッチーなものではありますが、このタイトルを見て本を買う人は身近にガン患者を抱えている、まさに抜き差しならない状況の人かと思います。しかしそのような人が読むには本書はあまりにも軽すぎます。

本書はサブタイトルともなっている「私のオーガニック薬膳ライフ」という軽いタイトルにするか、もし現在のタイトルをそのまま使うのであればもっともっと内容を精緻にしっかりと書くべきかと思います。自分の掛かっていたガンがどのような種類のものなのか、それがなぜ食事で消えたのか、どのような成分が作用したと考えられるのか、など少なくとも医学的な見地を交えて書かない限り、このタイトルに釣り合う内容にはできないのではないかと思います。(私には前者の方がいい気がしますが・・・。)

タイトルの件はさておき中身ですが、これは簡単に言ってしまうと「どのような食材がどのような症状に効くか?」が中心に書かれた本です。フランスと中国で学ばれて免許を取得し、ご自身でも教室を開かれている著者の実体験が基になっているため、その内容は非常に説得力があります。実際に効果が出ている実例も交えながら、どのような食生活がよいのか、どのような成分が何に効くのか、について書かれているため、読んでいて非常にためになります。はちみつが身体にいい、フルーツを食前に食べるとよい、など日頃の食生活改善の示唆になる内容が多く書かれていてためになります。

しかし一方で、やはり内容の書かれ方が軽いのと、体系だっていないため「日頃の食生活を変えたい」という方には受けても「身内のガンを食事で治したい」という方の要求に耐えられる内容にはなっていません。そこが少し残念です。あと本書で書かれている食材はある程度の価格がする高級な物が多いように感じました。末期がんなのにフランスに行ったり、そのままフランスに滞在したり、中国に留学したり、と著者は一般市民とは異なる金銭感覚の持ち主の比較的お金に余裕のある方なのかな、と思うと、あまり身近な印象は感じませんでした。

本書は「現在の食生活を改善したい」と考えていらっしゃる方には向いていますし、日頃の食生活改善のヒントも得られるかと思います。しかし本気で「ガンを食事で治したい」と考えている方の要望に耐えられる内容ではありません。そこを意識して読まれる必要がある本だと感じました。内容的には、私には十分に役に立つ本でした。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B


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2014年06月18日

読書日記489:スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実



タイトル:スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実
作者:ルーク・ハーディング Luke Harding, 三木俊哉 (翻訳)
出版元:日経BP社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
全世界のメール、SNS、通話は、米国NSAの監視下にあったースノーデンは衝撃の事実を次々と語った。米国政府の情報収集活動の実態を暴き、2014年のピュリッツァー賞に輝いた『ガーディアン』紙が描く舞台裏の攻防。


感想--------------------------------------------------
レビュープラス様から献本いただきました。いつもありがとうございます。

エドワード・スノーデンという人は、アメリカ国家安全保障局(NSA)から機密情報を抜き出して暴露し、NSAの本当の狙いを全世界に知らしめた人です。米国、いや全世界を行き交うEメール、電話、SNS上の情報は全て監視されている、それどころかマイクロソフトやアップル、フェイスブックという情報大手企業のサーバーにNSAはアクセスして情報を抜き出すことが出来る、という現実にまずは驚かされます。そしてまた、この事件がおきてからまだ一年足らずの時間しか経っていないことに再び驚かされます。

本書はこのスノーデン事件について様々な角度から追ったノンフィクションです。スノーデンの生い立ち、事件を起こすに至った背景などが描かれているのですが、何よりも抜き出した情報を全世界に暴露するまでの経緯、『スノーデンファイル』と呼ばれるNSAの一連の機密情報を巡る米英政府と『ガーディアン』誌編集部との攻防はハリウッド映画顔負けの緊迫感溢れる展開で、ノンフィクションであることを忘れて没頭してしまいます。またスノーデンが暴露した事実−全世界の人々のEメールやフェイスブックなどの情報は当局に監視されているという事実−が公表された後の各国の対応も事細かに書かれており、ここも興味を引かれます。

本書はまさにこの『ガーディアン』誌の編集者が書いたものであり、ノンフィクションに独特の事実を追った書き方なのですが、それが逆に緊迫感や各国の思惑などを際立たせ、読み手に迫力を持って迫ります。本当に、下手なサスペンスのフィクション映画よりも遥かに面白い本です。

スノーデンという一人の青年が引き起こした事件は、オバマ、メルケル、オランド、プーチンといった各国の首脳をも巻き込み、やがては「テロを断つには監視が必要」というグループと「個人のプライバシーを守るために監視は不要」というグループとの二派に分かれ(一般市民はほとんど後者ですが)、論争を繰り広げていきます。次々と暴露される『監視』の実態は恐るべき者で、各国首脳の電話やEメールも軒並み米英に盗聴されていた、という事実まで明らかになっています。−日本ではこの事件についてはほとんど話題になりませんが、なぜなのでしょうね?日本の首脳の電話やEメールも間違いなく盗聴されていたと思うのですが。

この事件については私も名前だけは聞いたことがありましたが、実際のところは良く知りませんでした。しかしこの本を読むことで、細部まで良く理解できると供に、監視国家の実態がよくわかりました。−個人的には『監視している』ということが暴露された後でも言い逃れを続け、現行の体制を維持しようとし続ける首脳たちや、圧倒的な権力でスノーデンやスノーデンに味方する者を妨害しようとする者たちの方が、『監視国家である』という実態よりも恐ろしく感じられました。恐らく、いまではどの国のどんな情報でも当局の監視下にあるのでしょうね。唯一、暗号化は有効だと書かれていますが、NSAは暗号解読のプロジェクトにとんでもない額の投資をしているようで、本気になればできないことはないのではないかとさえ感じてしまいます。。。

圧倒的な迫力で、多面的に『スノーデン事件』を描いた本書はノンフィクションの良書だと思います。何よりもこの事件が起きてからまだ一年しか経っていない、つまりは本書に書かれている内容はつい最近のものなのだ、ということが恐ろしくも感じられます。

全ての引き金になったエドワード・スノーデンは米英をはじめとする西欧諸国から狙われ、現在はロシアに一年という期限付きで亡命中のようです。そして、その一年の期限が切れるまであと少しです。今年の後半にかけてこの事件はどのような動きを見せるのか、決して過去の事件ではなく、現在進行形でまだ続いているこの事件に関する本書を読むなら、今かな、と感じます。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S


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2014年05月10日

読書日記480:生物と無生物のあいだ



タイトル:生物と無生物のあいだ
作者:福岡伸一
出版元:講談社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
生命とは何か? 生命科学最大の謎に迫る!生物も無生物も、原子から成り立っている。しかし我々は瞬時にその違いを見抜く。いったい何が両者を分かつのか? ミステリー仕立てで読ませる分子生物学入門


感想--------------------------------------------------
本書「生物と無生物のあいだ」は理科系の本としては非常に有名な本です。以前から名前は聞いたことがあったのですが、なかなか読むタイミングが無く、ようやく読むことができました。二〇〇七年刊行と少し以前の本になりますね。

本書は著者が自身の若かりし頃、つまりは医学部でポストドクターとして勤務していた頃のことを振り返りながら、自身の研究テーマであるタンパク質の挙動を中心に、DNAの謎や果ては生物の持つ特徴まで紐解きながら語られた本です。

著者はニューヨークのロックフェラー大学で勤務した経歴があり、その経験を語るところから物語はスタートします。全十五章の中で上述の生物の謎や、DNA、タンパク質の謎、果てはその謎を解き明かしてきた先人達について語られるのですが、各章の最初ではいつも著者の生活していたニューヨーク近辺やボストン、さらには研究生活の様子が語られており、研究内容一辺倒の話ではありません。こうしたところに読み手に対する配慮が感じられました。

内容は野口英世の話に始まりDNAの謎を解き明かしたエイブリーやロザリンド・フランクリンの話などに及び、さらにタンパク質の謎を解き明かすための研究の様子、世界各地の研究チームの熾烈な競争の様子などがよく書き込まれています。医学の発展の裏には非常に泥臭い作業と、熾烈な競争があることが良く分かります。

DNAの話やタンパク質の合成の話などは非常に複雑です。著者なりに分かり易く書かれているのだと思いますが、それでもこうした分野への知識が全く無いままに読むと苦戦するレベルの本だとは思います。しかし著者のこの分野への情熱はひしひしと伝わってくる内容であり、生物−動的平衡状態を保つものへの畏敬の念や、複雑な仕組みを持つ「生物」が存在することへの感動に似た感情などは良く伝わってきます。著者は本当にこの分野を愛しており、生物の不思議さに魅せられているんだな、ということがよくわかります。確かに読んでいても、「どうして生物のような複雑な仕組みを持つものが地球上に存在しているのだろうか?」と感じてしまいますね。

ただ一方で、少し読みにくく感じた点や読んでいて退屈した点もいくつかあります。その理由の一つ目としては、本書はこうした生物学・医学の「最前線」について書かれた本ではなく、どちらかと言うとその「歴史」を紐解いた本であるからかな、とも感じました。山中教授のiPS細胞をはじめ、今この分野は非常にダイナミックに動いています。従って少しばかり古く感じてしまうんですね。これはでも今まで読まなかった私のせいと言えるかもしれません。二つ目は純粋に技術的な話だけでなく、過去の研究者の生い立ちや、自身の研究生活の話なども語られており、二百六十ページ程度の本で語るには内容が多すぎるという点です。タンパク質の挙動やDNAの謎の一部を切り取って語っているに過ぎないため、どうしても不足感や、全体像が見えない感じは受けてしまいますね。また私自身が理系だったため、著者のような生活の辛さが想像できてしまうから、その点については目新しさを感じないことも理由の一つかもしれません。

生物を動的平衡状態を持つものとして定義した著者の考えは素晴らしいと思いますし、内容も科学的ですが非常に面白いです。でも話が様々に、各方面に、飛ぶので「一面だけしか見れていない」という感覚は残りました。本書も悪くはないですが、私としては同じような医学、生物学の本としては池谷祐二さんの「進化しすぎた脳」の方が面白く感じましたね(分野が違うので一概に比較はできませんが)。

最後になりますが、千円札にもなっている野口英世や、DNAの構造解明で有名なワトソン、クリックの評価が海外ではそれほど高くない(野口英世に至っては悪すぎる)のには驚きました。。。ある大きな発見があったとしても、それは、それまでに積み上げてきた過去の人々の研究成果があるからこその発見なのだ、ということを強く感じました。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B


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posted by taka at 21:04| Comment(0) | TrackBack(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月23日

読書日記479:そして戦争は終わらない 〜「テロとの戦い」の現場から



タイトル:そして戦争は終わらない 〜「テロとの戦い」の現場から
作者:デクスター フィルキンス (著)、
出版元:
その他:

あらすじ----------------------------------------------
ハルバースタムの再来と絶賛された若きジャーナリストは何を見たのか?ファルージャでは、若い米軍兵士のあとについて銃撃戦の中を走り回り、カンダハールでは、地雷原を楽しげに飛び跳ねる子どもたちに大声を張り上げる。非常事態と日常が交錯する戦地で、米軍兵士、住民、宗教指導者、反政府軍兵士などを丹念に取材。時代、国境、宗教を超えた人間の本質に迫る。全米書籍批評家協会賞、「ニューヨーク・タイムズ」紙年間ベストブック。


感想--------------------------------------------------
本書の著者はアメリカ人ジャーナリストの方です。ニューヨークタイムズ紙の海外特派員としてアフガニスタン、イラクに駐在し、戦火の中で取材を続けたその結果がまとめられたのが本書になります。米軍と行動を供にした時の状況が多く書かれていますので、視点はやはりアメリカ的ではありますが、それでもかなり中立的な立場で書かれていると感じました。本書は全米書籍批評家協会賞など数多くの賞を受賞した、極めて評価の高い本ということで読んでみました。

本書には著者がアフガニスタン、イラクに駐在した際に出会った事件や、人々の生の声が書かれています。そこに私的な感情は無く、米軍兵、イラク市民、武装兵力、統治者の声が分け隔て無く書かれています。そしてそこに描かれている人々は至って普通の人間です。

本書を読んで最終的に思うことは、まさに表題の通り「そして戦争は終わらない」ということです。このような状況にどうしたら終止符を打つことが出来るのか、たとえ世界の一つの地域での戦争が終結しても他の箇所でまた別の戦争が起きる、それだけではないか、と考えさせられます。

本書を読むと、「戦争」というものに対する意識が大きく変わります。戦争というと「○○軍と××軍が戦う」というイメージが強いですが、本書で描かれている戦争はそんなに簡単なものではありません。米軍に敵対する武装勢力は銃を置くことで簡単に市民に紛れ込み、市民を疑って彼らの住居を捜索するたびに市民の米軍への敵対意識は増幅し、さらに武装勢力が拡大していく−そんなことがずっと続いています。また本書を読んでいて違和感を覚えるのは、イラクやアフガンでは「話していることの中身が、本当である保証が全くない」ということです。相手の話していることが本当なのか、相手が本当のことを言うことで何か得があるのか、そんなことを考えながら常に会話を続ける、こんなことは日本ではまず考えられないことです。そして何より恐ろしいのは、周囲の人間のほとんどが自分達を憎んでいる地域を統治しなければならないことがある、ということですね。絶対に一人で徒歩で外出などできず、常に防護用の車の中にいる必要があるそうです。

本書に書かれている「戦争」は、少なくとも私の知っている「戦争」とは大きく異なります。私の知っている戦争は画面の向こうで大局観や要約が語られるものですが、本当の戦争の恐ろしさとは上記のような「混沌」といつ訪れるかもしれない死に怯えつつ暮らす生活にあるのだ、ということがよくわかります。誰が敵なのか、どうすれば争いが終わるのか、誰が何を求めているのか、そんなことさえ全くわからないまま暮らさなければならない戦地の人々の悲惨さは想像を遥かに越えます。

路上に転がるいくつもの死体、身代金を払ったのに死体となって帰ってくる誘拐された子供、常に狙撃の危機に直面している行政庁舎、人だかりに突っ込み自爆する車、爆弾テロの音で目覚めるイラクの朝。まさに狂気の世界であり、著者も書いていますがこうした世界に住んでいると、それが狂気であるかどうかさえもわからなくなるそうです。自分が恐怖を感じているのか、死のすぐ側にいると視野が狭くなりすぎてそれさえも分からなくなるようです。著者もタリバンに誘拐されたり、激戦地の戦闘に同行したり、危うく法廷に連れされれて処刑されそうになったりと、命を危険に曝し続けていますが、それでも戦地に留まり続けているようです。

本当に凄まじい本です。戦争を現実として、自分たちのすぐ隣にあるものとしてここまで描いた本と言うのは他に無いのではないかと思います。四百六十ページと分厚い本でありますが、読む価値のある本だと思います。そして読み終えると「戦争」というものに対する意識が、きっと変わっているのではないかと思います。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S


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