2016年04月09日

読書日記587:人口蒸発「5000万人国家」日本の衝撃──人口問題民間臨調 調査・報告書



タイトル:人口蒸発「5000万人国家」日本の衝撃──人口問題民間臨調 調査・報告書
一般財団法人 日本再建イニシアティブ (著)
出版元:新潮社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
危ないのは地方だけではない。
首都圏消滅も始まっている。
人口問題は日本史上最大の危機だ!

財界、官界、アカデミズムを代表する賢人が結集。
人口問題をソフトランディングさせ、
100年後も活力ある日本を維持するために
いま何をすべきかを大胆提言!

感想--------------------------------------------------
「人口蒸発」その刺激的なタイトルから読んでみました。人口減少、少子高齢化は現代日本の問題としていろいろな場面で取り上げられていますが、まとまった書籍として読むのは初めてです。

本書は日本再建イニシアティブという一般財団法人がとりまとめた報告書という形式をとっています。本書の最後に書かれていますが、有識者メンバー、ワーキングメンバーともにそうそうたる顔ぶれです。また読むと分かりますが、いろいろな業界、団体に対してヒアリングしていることもわかります。

インフラ崩壊、限界集落・マンションの増加、シルバー民主主義の台頭など様々な問題について本書では客観的な視点から調査し、そこに専門家の観点からの評価・感想を交えて書いています。従って内容は非常に濃いものであり読み応えもあるのですが、残念ながら読みやすくはありません。。。これは一つにはポンチ絵などの絵がほとんどないこと、二つには要点をまとめて書くような書き方をしていないことが原因ですね。昨今のハウツー本は過剰なまでに読みやすさを意識して書かれていますが、本書はその対極にある本と感じました。

しかしその中身は非常に示唆に富んでいます。今世紀末には日本の人口は五千万人になる、限界集落が増加し孤立死などが急増する、人口減により消滅する集落が急増する、などなど。ニュースや新聞で書かれているのでご存知の方も多いかもしれませんが、調査に基づいて書かれているため、説得力があります。また本書はその状況をもとにしっかりとした政策提言にまでまとめています。具体的な行動レベルにまで落としこめていることは評価できます。

「人口問題は長期的な問題である」

これが人口問題の解決を難しくしている大きな要因と感じました。数十年から百年単位で解決が必要なこの問題には世代を超えて対策に当たる必要がありますが、直近の選挙での票の獲得を目指す政治家や、逃げ切りを目指す既得権益層にとっては解決に努力をしてもほとんど意味のない問題です。本書には、ビジネスと紐付けることで人口問題の解決にあたっている例も幾つか紹介されていますが、やはり政策・制度といった「仕組み」で攻めないと難しいと感じます。このあたり日本独特のボトムアップの政治体制の難しさとも感じます。政策が後手後手になるのは仕方ないとして、その遅れを取り戻すためにどうするのか、どのように素早くコンセンサスを取り政策を立案する仕組みを作るのか、その辺りが鍵になるかと感じます。

正直言って、本書に書かれているような数十年後の未来の絵はそのまま現実になる気がします。人口が増えず、子供を生み育てられない最大の理由は、「国民が未来に希望をもてない」ということですね。高度成長期のように国がより良くなっていく未来を誰もが想像できるのであれば、人は増えていくのでしょうが、今はその逆になってしまっています。こうした現実を見ると、日本という国の人口は着実に減っていくだろうし、シビアな話になりますが人口減の行き着く先、日本という国の着地点を見極めておく必要もあるのかな、と感じました。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
レビュープラス
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2015年12月20日

読書日記571:子どもと食べたい時短おやつ



タイトル:子どもと食べたい時短おやつ
作者:菅野 のな
出版元:辰巳出版
その他:

あらすじ----------------------------------------------
人気オーガニック料理教室を運営する著者が、ママや子どもたちから支持された自然派おやつを一挙公開。小さな子どもにアレルギーが多い、卵・乳製品は一切使いません(半数は小麦も不使用)。素材の味を生かすシンプルなレシピは、ほぼ全てが作業時間20分以下。忙しいママでも簡単につくれます。
食育にこだわる教室の方針を反映し、調理方法だけでなく、おやつに対する考え方を整理できる自己分析シートも収録。おやつ初心者にもおすすめの一冊です。

感想--------------------------------------------------
レビュープラス様から献本いただきました。いつもありがとうございます。

これまで献本いただいた本の多くは自己啓発や政治・経済に関連する本でしたが、今回の本は料理の本です。著者は武蔵小杉で料理教室を開かれている方で、ページを繰るとすぐに様々なおやつのおいしい写真が広がります。

本書の特徴は、おやつのどれもが二十分程度で用意ができることと、アレルギー対策をされたおやつが多い、という二点ですね。各ページの右上には料理を準備するために必要な時間が書かれており、時間の目安になりますし、卵、乳製品は一切使われていませんので、アレルギー体質のお子様にも安心して提供できます。

本書はパートが六つに分かれており、ケーキ・クッキー、ゼリー、といった具合に項目が分かれています。中には「米粉のおやつ」・「和のおやつ」といった他のおやつ本にはなかなか見当たらない項目もあり、それも本書の特徴になっています。バナナケーキやフルーツゼリーといった定番のお菓子からくずきりや塩麹クラッカー、緑黄色野菜バーといったものもあり、バラエティーに富んでいると感じました。

こうしたお菓子のメニューというのは最近ではネットでも手軽に検索できますが、そうしたネットでのメニューの違いとしては、上記の「アレルギー対策済み」「短時間でできる」といったことかと感じました。実際に作ってみたお母さんの声も書かれていたりして、参考にもなりますし、何より写真が大きくて美味しそうに見えます。

私は料理は全くできませんが、、、奥さんに作ってもらおうかとおもいました。



総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス
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2015年08月08日

読書日記552:新説 「三国志」の虚構と真実



タイトル:新説 「三国志」の虚構と真実
作者:満田剛
出版元:Panda Publishing
その他:

あらすじ----------------------------------------------
三国志研究家の満田剛氏が、「三国志演義」と「歴史書」で評価が違う英雄たちを解説しつつ、
最新の歴史研究からわかった、これまでとは違う“新しい”人物像も紹介します。

「KOEI三国志」や「三國無双」などのゲームや『横山三国志』『蒼天航路』などの漫画で一通り三国志を知り、“さらにもう一歩深く知りたい”と思っている人にお勧めです。

感想--------------------------------------------------
本書はレビュープラス様に献本いただきました。いつもありがとうございます。

もはや多くの人が知っている三国志の世界ですが、ゲーム「三國無双」や横山光輝さんの「三国志」などは主に「三国志演義」を元にしています。本書はその「三国志演義」と史実の「三国志」を比較し、英雄として描かれている武将たちの真実を描き出した本です。従って読む上では「三国志演義」の世界を知っていることがある程度の前提となります。

本書はレーダーチャートを用いて、魏呉蜀の三国+αに属する武将たちの三国志演義で描かれている能力と史実の能力を比較しています。特筆すべき点はいくつかありますが、私が個人的に面白かったのは以下ですね。

・劉備玄徳は仁徳の人であるだけでなく、一線級の軍才を持つ英雄だった。
三国志の主人公とも言える蜀の王となる劉備玄徳ですが、三国志演技では仁徳の人として描かれ、関羽や張飛、諸葛孔明に助けられてばかりいる人、というイメージです。しかし実際には非常に高い軍事の才能を持った将軍だったようで、蜀を築いたのはまさしく劉備の力によるところが大きいようです。

・袁術は最も天下を動かした男だった。
玉璽を手に、偽皇帝となって世間を敵に回し、最後は村人たちにも愛想を尽かされて死ぬという、袁術ですが、実は天下に最も近い男だったようです。兄の袁紹とともに、名門である袁家一族の勢力は演技で描かれている以上に凄まじかったようですね。

・曹操は万能の天才だった。
 演技の悪役とも言える魏の皇帝 曹操ですが、実際に彼は実際に文武に優れた天才だったようです。しかし袁紹の部下で演技よりも冴えない男だったようですが、、、。

他にも、「もはやマジシャン」と言われる諸葛孔明や、三国志最強の武将 呂布についても描かれていて、演技と史実の比較をしながら読むととても面白いです。また脇役クラスの武将も何人か描かれていて、これまたマニアックな選択だな、と思わされます。

三国志好きの人には文句なしにはまるでしょうね。好きな武将の演技と史実での評価を比較しながら読むと、時を忘れるのではないでしょうか。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス
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2015年02月28日

読書日記531:知性を磨く― 「スーパージェネラリスト」の時代



タイトル:知性を磨く― 「スーパージェネラリスト」の時代

作者:田坂 広志
出版元:光文社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
なぜ、高学歴の人物が、深い知性を感じさせないのか?目の前の現実を変革する「知の力」=「知性」を磨くための田坂流知性論。


感想--------------------------------------------------
「知性を磨く」というタイトルと、「なぜ、高学歴の人物が、深い知性を感じさせないのか?」というキャッチフレーズに惹かれて読んでみました。著者はシンクタンクでの活動から、取締役やシンクタンクの設立などにも関っている方で、世界経済フォーラムや世界賢人会議にも出席され、内閣官房参与も経験されている方です。

本書の構成ですが、全二百ページ強の厚さの本に二十五の話が掲載されており、各話でそれぞれ著者が持論を展開する、というスタイルです。各話はすぐ読め、そんなに分厚い本ではないので割と簡単に読める本です。

内容ですが、「知性」と「知能」の違いから始まり、これからの世の中に必要とされる「スーパージェネラリスト」という人材、さらにスーパージェネラリストに必要とされる「思考」、「ビジョン」、「志」、「戦略」、「戦術」、「技術」、「人間力」という「七つのレベルの思考」そして「多重人格のマネジメント」と多岐にわたります。


「知性」とは答えの無い問いに対して、割り切ることなく、問い続けることである。


これが本書を読んで最も印象に残った言葉です。少し考えれば日常にも「答えの無い問い」というのは溢れていることに気付くと思いますが、これらの問いに対して簡単に割り切ることなく、問い続けることが知性を深めることに繋がる、と本書では言っています。思考を深める、とでも言いったらいいでしょうか。ここの部分には非常に納得できます。

「スーパージェネラリスト」という人材を本書では上記の七つのレベルの思考を「垂直統合できる人材」と評しており、事故を起こしながらも奇跡的に生還したアポロ十三号の主席飛行管制官を勤めていたジーン・クランツを例としてあげて説明しています。非常にハイレベルな例ですが、読み手に「スーパージェネラリスト」という人材がどのような人材かは、よく伝わってきます。

全般的に非常にいいことが書かれているのですが、気になるのは全ての論が著者の思考のみを出発点としている点です。客観的事実に基づいた分析や、一般的資料を基にしていないため、完全にこの著者の思考を学ぶための本、となっています。また一方で非常に話題が多岐にわたるため、一つ一つの話題にさかれている文章の量が少なく、どこか表面的に感じてしまいます。

これは一重に、これだけの内容をこのページ数で書くことに無理があるためですね。本書はこの著者の思想を学ぶための入り口の本、と考えた方がいいかもしれません。本書の中では著者の作品がいくつも紹介されています。ちゃんと読むと本書だけでは必ず物足りなくなると思いますので、興味をもたれたらあわせて著者の作品を何作か読むことをお勧めします。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B
レビュープラス
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2014年11月23日

読書日記516:統計学が最強の学問である by西内 啓



タイトル:統計学が最強の学問である
作者:西内 啓
出版元:ダイヤモンド社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
あえて断言しよう。あらゆる学問のなかで統計学が最強の学問であると。どんな権威やロジックも吹き飛ばして正解を導き出す統計学の影響は、現代社会で強まる一方である。「ビッグデータ」などの言葉が流行ることもそうした状況の現れだが、はたしてどれだけの人が、その本当の魅力とパワフルさを知っているだろうか。本書では、最新の事例と研究結果をもとに、今までにない切り口から統計学の世界を案内する。

感想--------------------------------------------------
本書は一時期、ベストセラーとなった作品です。先日紹介した「ビッグデータの正体」では昨今話題のビッグデータについて語られていましたが、本書では統計分析手法を用いたデータの分析方法について書かれています。「統計」というと高校数学で少し習い、大学の授業でさらに少し習った程度ですが、著者はこの「統計学」を「最強の学問」と位置付けています。

本書では「なぜ統計学が最強の学問なのか?」というその理由の分析から始まり、統計学の内容や用語の説明、統計学の様々な種類・応用にまで話が及んでいます。統計という言葉に馴染みはなくても内容は理解できるように書かれており、理解しやすい本かと思います。

「統計学」という学問は世の中のいたるところで使われ、役に立つ学問だ、というのが読んでの感想です。マーケティングに代表される企業活動でも本当にちゃんとデータを集め、統計学的手法を適用すると、様々なことが浮かび上がってくることがよくわかります。統計分析をうまく使えば、不必要にデータを増やすことなく、適切なデータ数で、信頼性の高い分析ができることが科学的にも証明されており、その効果は絶大です。これも「最強の学問」と呼ばれるゆえんでしょうね。

ビッグデータにも触れていますが、本書では「実際にビッグデータが必要とされる場面は多くない」と言っています。Google翻訳のような言語という膨大な集合体を対象としない限りは、先に述べたように適切なランダムサンプリング(これが実は難しいようですが…。)を行うことで、かなり確かな結果を得られるようです。

これも上述した「ビッグデータの正体」と比較すると、本書の立ち位置がより明確です。「ビッグデータの正体」では「膨大なデータの前では因果関係は意味をなさなくなり、相関関係が全てとなる」と言っていますが、本書では「そのデータを分析する統計手法を正確に把握しないとデータが意味をなさない」と言っているように見えます。

本書の後半では統計学を社会調査法、疫学・生物統計学、心理統計学、データマイニング、テキストマイニング、計量経済学という六つに分類しそれぞれの特徴について述べていますが、個人的にはここが最もおもしろかったです。統計学者がこんなに緻密に分類されることも、それぞれの立ち位置や社会への関わり方など初めて知りました。

あとがきも秀逸です。

おそらく我々がすべきことの多くは、すでに文献やデータの上では明らかなのである。だがそれを現実のものとして実行するまでのギャップが我々を「最善」から遠ざけているのではないかと思う。
統計学の素晴らしいところはこうした「最善」への道を最も速く確実に示してくれるところではないかと思う。
統計リテラシーによって手に入る最も大きな価値は、自分の人生がいつでも最善にコントロールできるという幸福な実感なのだ。

この言葉からも統計学をなぜ著者が最強と位置付けたのか、わかる気がします。闇雲に道を探るのではなく、過去のデータや実験などを利用し統計学を適用すれば、「最善」への道が開けるわけですね。しかもこれは本書で紹介されている生物学、疫学、経済学だけでなく、いかなる分野にも応用できるのですね。統計についてもう少し深く勉強してみようと思わせる本でした。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S
レビュープラスhttp://reviewplus.jp
posted by taka at 23:35| Comment(0) | TrackBack(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする