2012年10月17日

読書日記379:The Bookーjojo’s bizarre adventure 4th another day by乙一



タイトル:The Bookーjojo’s bizarre adventure 4th another day
作者:乙一
出版元:集英社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
『ジョジョ』シリーズ第4部・杜王町を舞台に起こったもうひとつの事件。構想・執筆2000日以上、鬼才・乙一が渾身のノベライズ!!



感想--------------------------------------------------
乙一さんと言えば「夏と花火と私の死体」という作品によりジャンプ小説大賞でデビューした作家さんですね。デビューしたのは17歳の時で、「夏と花火と私の死体」を読んだ時、「この本を17歳で書いたのか」と驚いた記憶があります。それほど完成度の高い作品でした。

以来、乙一さんは「GOTH」や「ZOO」、「暗いところで待ち合わせ」など猟奇的な作品やほろっとさせる作品など様々な作品を世に送り出している、ストーリーテリングの名手です。(少なくとも、私的には非常に物語の作りが上手い人だと思います。)その乙一さんが書き上げたジョジョのノベライズ作品ということで読んでみました。

本作を読んでの感想ですが、非常に高い質の作品です。ジョジョファンはもちろんのこと、ジョジョファンじゃない人が読んでも楽しめるのではないかと思いました。物語の舞台は第四部、杜王街で、第四部に出て来た登場人物の多くが本作にも登場します。東方仗助、広瀬康一、虹村億泰、岸辺露伴、山岸由花子・・・。主立ったメンバーが登場し、それだけでも非常に物語をもり立てるのですが、あくまで彼らは脇役で、物語の中心となるのは琢馬と千帆という二人です。そして彼ら二人を中心に据えた物語の描き方が非常に上手いです。

物語は様々な人々の視点から少しずつ語られて行き、少しずつ少しずつ進行して行きます。
室内で「轢き逃げ」された死体、壁の隙間に閉じ込められた女性、眼の前に現れた古びた本・・・。最初はばらばらだったこれらの事件と各登場人物が一つになり、最後になってわかる物語の全体像。この物語の作り方はまさに乙一さんならではですね。本作は単純なミステリというだけでなく、深い愛情と強い憎悪がおりなす復讐劇だったということが最後まで読んでようやくわかります。そして中心となる二人の強い思いもはっきりと読者に伝わってきます。本作は第四部を舞台としてそこに出てくる登場人物も出てきますが、彼らは脇役ですね。間違いなく主人公は琢馬と千帆の二人です。

またジョジョならではの見せ場もちゃんと用意されていて、そこがまたうまいですね。「The Hand」や「クレイジー・ダイヤモンド」の戦闘もしっかりと読めてしまう。ジョジョの物語を読む上で欠かせない要素である戦闘を、心理戦の部分も含めて、本作ではしっかりと描かれています。いいです。

本作で特筆すべきなのは、これはジョジョの物語でありながら紛れも無く乙一さんの作品でもあり、さらにジョジョや乙一さんの作品というレッテルがなかったとしても、紛れも無く秀逸な作品である、ということです。ジョジョの本質がスタンドによる戦闘ではなく、その裏にある人間讃歌であり、人間の勇気や決意を讃えることであると同じように、本作でもスタンドバトルは本質ではなく、その裏にある人間ドラマが物語の主軸にあるため、物語の質を高めているのでしょうね。これまでジョジョのノベライズは「恥知らずのパープルヘイズ」と「Over Heaven」を読んでいますが、今のところ本作が最も面白かったです。さて残すは舞城王太郎さんの「JORGE JOESTAR」これもいつか読むつもりです。いまから楽しみです。



総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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タグ:書評 jojo
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2012年10月13日

読書日記378:JOJO'S BIZARRE ADVENTURE OVER HEAVEN by西尾維新



タイトル:JOJO’S BIZARRE ADVENTURE OVER HEAVEN
作者:西尾 維新 (著), 荒木 飛呂彦 (著)
出版元:集英社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
かつて空条承太郎の手によって焼き捨てられ、エンリコ・プッチ神父が切望したDIOのノート。世界の深淵で、DIOが探し求めた「天国」とは。小説家・西尾維新が、禁断の手記を再生する。“VS JOJO”第2弾。



感想--------------------------------------------------
荒木飛呂彦さんによる、改めて語る必要も無いほど有名な「ジョジョの奇妙な冒険」。現在は第八部が「ジョジョリオン」として連載中ですね。本作は「化物語」や「クビキリサイクル」で有名な西尾維新さんがジョジョのノベライズに挑戦した作品です。西尾維新さんが描くのは第一部、第三部でジョジョの敵役として登場したあのディオ。読む前から嫌が応にも期待が高まります。

プッチ神父が渇望し、空条承太郎の手によって消却された「ディオの手記」そこにはあのディオの知られざる思いが書かれていたー。

本作の舞台は第三部。そして物語は手記の形をとり、ディオの一人称で語られていきます。ディオの生い立ちから始まり、ジョースター家に入り、ジョナサンと対立し、石仮面の力によって吸血鬼化して、最後のジョナサンとの戦いまで、という第一部の内容を回想という形で描き、そして日本からエジプトへと向かう承太郎の一行との戦いという第三部の内容を現実という形で描き、この二つを交互に描きながら「なぜ天国を目指すに至ったか」というディオの想いが綴られていきます。このような独白の描き方はさすがに西尾維新さんが得意としているだけあってうまいです。文章を読み進めながら「ああ、西尾維新さんの作品だな」と実感できます。

ただ、残念ながら本作に限ると残念な点が多くありますね。
まず本作は上遠野浩平さんの手による「恥知らずのパープルヘイズ」と違って戦闘場面が全くありません。ディオの手記なのですから当然と言ってしまえば当然ですが、目新しいスタンドが出てくる訳でも、新しい敵が出てくる訳でもありません。ジョジョファンにとっては既に知っている内容が新たなディオの立ち位置から語られているだけで、刺激的な内容が全くないんですね。これが非常に残念な点の一つ目です。

残念な点の二つ目は、この小説で描かれているディオが、第一部、第三部で描かれているディオと、別人?と思わせるほど性格が異なる点です。ジョナサンに敗北した回想の途中や、承太郎一行に放ったスタンド使いの敗北の知らせを受けたりすると、ディオは簡単に嫌な気分になったりして、簡単に心が揺れ動きます。ここが非常に「ディオらしくない」と感じてしまいます。「化物語」の阿良々木暦や「クビキリサイクル」のいーちゃんのようなどこか優柔不断な男の子ならこの西尾維新さんの独特の物語の運び方が生きるのでしょうが、さすがにディオをこの描き方で物語化されると、「らしくないなー」って感じてしまいます。だってあのディオだよ?傲岸不遜で自分以外の存在を虫けらと同じと思っているディオだよ?それがこんな風にちまちま考えないよ、とか思ってしまいます。違和感を感じた点は、ブックレビューとかで他の人も書いていますがやはりここですね。

本作でエジプト九栄神とホル・ホースを前にしてディオは、「もしもこの十体のスタンドがチームを組んで同時に襲って来たら、さすがのわたしもひとたまりもなかろう」とか言っていますが、原作を読んでいると、とてもディオはそんなこと言いそうもないですね。エジプト九栄神とホル・ホースどころか、他のスタンド使いが全部揃っても決して自分の負けなど認めず、逆に傲岸不遜にふん、と鼻を鳴らして見下しているのがディオです。このあたり、ディオという存在の描き方がやはり根本からずれているなあ、って感じてしまいました。

西尾維新さんの作品は、一人称で主人公の独白か、主人公と誰かの会話のやりとりで成り立つことが多いため、確固たる信念を持って自分の道を迷わず進んで行くキャラクターは描きにくいのだろうな、って感じました。迷わないキャラって内面や独白を描いていても面白くないですからね。本作のディオとか、六部のプッチ神父とかは迷いが無く、確固たる信念の基に行動しているため、西尾維新さんの作風にははまりにくそうです。逆に西尾維新さんが悪役を描くのであれば、平凡なサラリーマンという表の顔を持ちつつ暗躍する第四部の吉良や、二重人格の第五部のディアボロなんかの方が、内面に葛藤を抱えていそうで描きやすいだろうなって感じました。

さて、「ジョジョの奇妙な冒険」は今年で25周年を迎え、今年は「ジョジョの年」だそうですね。ジョジョ展が開かれ、"VS JOJO"と称された作家とのコラボレーション企画も立ち上がっていて本作はその二作目です。一作目は先に紹介した上遠野浩平さんの「恥知らずのパープルヘイズ」そして三作目は舞城王太郎さんの「JORGE JOESTAR」が刊行されています。他にも乙一さんが本企画とは別に「The Book」と題してジョジョのノベライズを行っていますね。これらもいずれ読む予定です。やはりジョジョにはたまらない魅力がありますね。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B


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2012年04月18日

読書日記342:恥知らずのパープルヘイズ ージョジョの奇妙な冒険よりー by上遠野 浩平



タイトル:恥知らずのパープルヘイズ ージョジョの奇妙な冒険よりー

作者:上遠野 浩平 (著), 荒木 飛呂彦 (著)
出版元:集英社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
舞台は第5部完結の半年後。“裏切者”パンナコッタ・フーゴのその後どうなったのか。


感想--------------------------------------------------
ジョジョの奇妙な冒険」と言えば、荒木飛呂彦さんの名作です。作家さんの中にもファンが多いようで、乙一さんや西尾維新さんが外伝的な作品を書いていますが、その中でもAmazonでの評価が高かったのが、上遠野浩平さんによる本作です。

ボス:ディアボロの脅威に怯え、ジョルノやブチャラティたちを裏切ることになったフーゴ。そのフーゴにジョルノがボスとなった新生「組織」が裏切り者である「麻薬チーム」の壊滅を命令する−。

本作の舞台はジョルノ・ジョバーナが主人公となる第五部の、その後です。組織のボスの娘トリッシュを守りきり、ボス:ディアボロを倒すことで新しい組織のボスとなったジョルノ。そして物語の途中でジョルノたちを裏切ることになったフーゴ。原作ではフーゴはジョルノたちを裏切ったところでそのまま消えてしまい、確かに読者としてもその後が知りたいところでしたので、着眼点はいいなあ、と思います。

本作にも幾人ものスタンド使いが出てくるのですが、そのほとんど全てが本作のオリジナルです。スタンドの能力も物語自体の構成も原作に負けず劣らず独創的であり、舞台となるイタリア、シチリア島の風景なども含めていかにもジョジョらしいつくりです。読んでいると、そのままこの物語が荒木飛呂彦さんの原作で漫画化されて、眼の前に浮かんでくるようです。

さらに内容も非常に濃いですね。第一部、二部の石仮面や第四部のスタンド使いも少しですが絡んできたりして、原作ファンは十分に楽しめるのではないでしょうか。またフーゴの内面描写も非常に深いです。原作を踏襲しながら各人のキャラクターを深く掘り下げ、仲間を裏切らざるを得なかったフーゴの心理を深く描いて行く−。いいですね。ジョジョファンならかなり満足のいく作品になっているかと思います。

一方で難点を挙げるとすると、本作はあくまで「原作のジョジョの延長」ですね。作者である上遠野浩平さん独自の脚色はあまり多くないように感じられました。(これは私が上遠野浩平さんの作品を読んだことが無いため、そう感じるだけかもしれませんが)荒木飛呂彦さんのジョジョを描きつつその先の著者のオリジナリティのようなものを求めている読者にとっては少し物足りないかもしれません。確かに面白いのですが、ジョジョのエピソードが一つ追加された、という印象が抜けきれないんですね。

難点も書きましたが物語としては非常に面白いです。特に、読者であればきっと誰もが気になっていたフーゴのその後を書いて、いい形で完結させてくれたのは嬉しいですね。さて西尾維新さんや乙一さんはディオやプッチ神父を描いたりもしているようですが…、私は個人的には五部のジョルノ編や六部のジョリーン編が好きなので、このあたりについて書いてくれないかなあ、と思います。アナスイとか、承太郎のその後とか。ディオは、ジョジョではどの話でも揺るぎ無い存在感を放つキャラクターなので、外伝として扱うには難しそうですね。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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2011年06月29日

コミック日記65:スティール・ボール・ラン 24 by荒木飛呂彦



タイトル:スティール・ボール・ラン 24
作者:荒木飛呂彦
出版元:
その他:

あらすじ----------------------------------------------
大統領を倒し、その野望を食い止めたジョニイ。だが、一瞬の隙を突かれ、何者かに遺体を奪われてしまった! 犯人を追う中、いよいよレースはFinal STAGEに突入する。レース、遺体争奪戦、そして世界の行方は-!?


感想--------------------------------------------------
「スティール・ボール・ラン」の完結巻です。少し前に出た本ですが、感想を乗せてみました。「スティール・ボール・ラン」という漫画の題名に馴染みの無い人でも、「ジョジョの奇妙な冒険」と言えば分かる人は多いのではないでしょうか。本作は「ジョジョの奇妙な冒険」の第七部に相当します。

アメリカ大陸を西から東へ馬を使って横断するスティール・ボール・ランレース。このレースに参加したジョニイ・ジョースターは鉄球を駆使して回転を自在に操るジャイロ・ツェッペリと出会い、旅を共にすることになる。道中、スタンドを駆使する敵たちの攻撃を受けるジョニイ達は無事にレースを終えることができるのかー。

 ジョジョの奇妙な冒険は本作を読んだことで全ての部、全巻読んだことになります。一部から六部までは各登場人物につながりがあったのに対して、本作「スティール・ボール・ラン」では登場人物達がこれまでの物語と完全に切り離されており、個別の物語となっています。しかし、それでもジョジョらしい登場人物は数多く出てきますね。スタンド能力も健在です。こう言ったところがシリーズ通してのファンにはたまりませんね。

 長らく週刊少年ジャンプで連載されていたジョジョの奇妙な冒険は、他の漫画と一線を画す存在だったと私は思っています。当時はキャプテン翼キン肉マンドラゴンボールSLAM DUNK、といった読者に夢と希望を与える、少年マンガの王道のストーリーの漫画が多かったですが、本作はだいぶ路線が違い、また路線が違うにもかかわらず多くのコアなファンを獲得していました。特に私が惹き付けられるのはどのような登場人物にも必ずその人をその人足らしめる背景となるストーリーが用意されており、各登場人物の設定に手を全く抜いていない点です。本作ではラスボスのような立ち位置にヴァレンタイン大統領という存在が現れますが、ストーリーを読むと彼さえも完全な悪役ではなく、拷問により死んだ父の思いを強く受け継いでいることがよくわかります。これが単純にスタンドを駆使した人間同士の異能力バトルだったらきっとここまで読者を惹き付けないでしょうね。作者が謳っている「人間讃歌」が物語の根底にあるからこそ、このシリーズはファンを多く獲得しているのでしょう。

またストーリー自体も決してご都合主義で描かれはいません。道中、数多くの敵と対決し、彼らを倒して行きますが、同時にこちらも多くの仲間を失っていきます。決して敵だけがやられるのではなく、その代償として多くの味方も失い、彼らの残したものを乗り越えて、進んで行くのですね。こう言った描き方は見事です。

あとはやはり第三部から登場したスタンドでしょうね。最初のうちは能力も炎を操る、とか普通のものでしたが部が進むにつれてとんでもない能力を持つスタンドが次々と現れて行きます。そして彼らとジョジョと仲間達の息詰まる攻防戦。これがやはり本作の真骨頂でしょう。

本作は大統領を倒して一件落着かと思いきや、大統領を越えるラスボスがいました。そのラスボスはジョジョの永遠のライバルのあいつ、そしてスタンドはー。ああ、こいつか、こいつがここで出てくるのか、ああこんな攻撃もしていたな、懐かしいな。そんな風に思いながら最終巻は読みました。こいつをここで登場させるとは、流石、荒木飛呂彦さん、ファンの期待を裏切りませんね。まだ七部が終わったばかりですが、さっそく次回作を読みたくなりました。

ちなみに、次回の週末の更新は都合によりスキップさせていただきます。
次回更新は7/6(水)の予定です。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A


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posted by taka at 21:41| Comment(0) | TrackBack(0) | JOJO | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする