タイトル:Perfect Days
監督:ヴィム・ヴェンダース
出演:役所広司など
その他:
あらすじ----------------------------------------------
東京・渋谷でトイレ清掃員として働く平山(役所広司)は、静かに淡々とした日々を生きていた。
同じ時間に目覚め、同じように支度をし、同じように働いた。
その毎日は同じことの繰り返しに見えるかもしれないが、同じ日は1日としてなく、男は毎日を新しい日として生きていた。
その生き方は美しくすらあった。男は木々を愛していた。木々がつくる木漏れ日に目を細めた。
そんな男の日々に思いがけない出来事がおきる。それが男の過去を小さく揺らした。
感想--------------------------------------------------
役所広司さんがカンヌで男優賞を受賞した作品です。見たいと思っていましたが、最近になってアマゾンプライムで見られるようになりましたので、さっそく見てみました。*本ブログにはネタバレを含みますのでご注意ください。
東京でトイレ清掃員として働く平山は毎日変わらない生活を送っていた。しかしそのような平山の日常に、ちょっとした変化が訪れ、その変化が平山の心を揺らす―。
起床し、歯を磨き、ひげを整え、植物に水をやり、缶コーヒーを買い、仕事に行き、仕事終わりに銭湯に行き、同じ場所で夕飯を食べ、古本屋で買った古本を読み、眠るー。この映画では、こうした日々を過ごす無口な平山の日常を描いています。一見単調に見える日々の中で、揺れる木々の緑などちょっとしたことに平山は喜びを見出していきます。
Perfect Days。このタイトルが絶妙です。単調ながらも喜びのある生活はまさに「完全な日々」なのだろうな、と感じます。しかし一方で、平山を訪れる姪の存在や、行きつけのバーのママの存在がそうした日々を揺さぶり、寂しさや悲しみを浮き彫りにしていきます。
「君のママと僕は違う世界に住んでいるんだ」
「変わらないはずないじゃないですか」
「今度は今度、今は今」
口数の少ない平山が口にするこうした言葉が、平山の住む世界の狭さ、変わらない生活への焦り、今を見つめて今を生きることしかできない平山の苦悩といったものを浮き彫りにしているように感じられます。Perfect Days。それはある閉じられた生活の中での「完全な日々」なのでしょうね。
物語の最後に流れる曲と、平山の顔がとても印象に残ります。「新しい日々(New Day)」、「新しい夜明け(New Dawn)」といった言葉とは裏腹に、車を運転する平山は笑いながらも泣いています。単調で完全な日々は楽しくもあり、苦痛でもあるのでしょう。そしてこうした日々を過ごしているのはきっと平山だけではないのだろうな、と感じたりもしました。
個人的にはとても印象に残った作品です。このストーリーもさることながら、役所広司さんの演技が素晴らしい。まじめで実直で、少しユーモアのある平山の印象にぴったりです。また各公衆トイレとその周囲の東京の映像にも新鮮さを感じます。東京近郊に住んでいても気づくことのない、東京を再発見した気分にもさせられます。
派手なアクションやどんでん返しはない作品ですが、心に残る良い作品でした。
この記事へのトラックバック
この記事へのコメント