作者:山田鐘人 (著), アベツカサ (著)
出版元:小学館
その他:
あらすじ----------------------------------------------
今は亡き勇者たちに捧ぐ後日譚ファンタジー
勇者ヒンメルと歩んだ旅路を追想と共に再び歩む魔法使い・フリーレン。過去へと遡った彼女の意識は、七崩賢の残酷な魔法と対峙する――
物語は、勇者ヒンメルの奇跡を体現する。英雄たちの“軌跡”を伝承する後日譚ファンタジー!
感想--------------------------------------------------
アニメで大人気となった「葬送のフリーレン」の新巻です。楽しみにしていました。刊行からだいぶ経っての感想です。
魔王を倒した勇者ヒンメル、フリーレン、ハイター、アイゼン。千年を生きるエルフのフリーレンはヒンメルの死後、人の心を知るたびに出る。遥か北方の地を目指し、帝国領土に踏み入れたフリーレンたち一行は帝国の不穏な動きを目の当たりにするー。
*以下、最新刊までのネタバレを多く含みますので、未読の方はご注意ください。
一巻から読んでいて思うのは、物語の作りがとても丁寧な作品だということです。フリーレン、フェルン、シュタルクといった主要人物をはじめ回想上の人物や脇役、誰一人とっても悪役、といった人間が存在しません。誰もが自身の正義と優しさを持っており、それらが物語の端々に描かれていると感じます。
また伏線も非常に多く張られています。レヴォルテたちとの戦闘でのフェルンの超長距離狙撃能力はそのままソリテール戦に繋がっていきますし、アウラ戦でのフリーレンの解呪魔法はマハト戦での全てを黄金に変える魔法の解呪に繋がっていきます。「可能性を示唆し、その可能性を回収する」ということを繰り返し描いていて、それがとても生きていると感じます。大きな物語と物語の間の小さな物語がその伏線だと思うと、読みながらどんどんと先の展開が楽しみになってきます。
最新刊のヒンメル編でも多くの伏線らしきものが張られていて、とても楽しみになってきます。実体と寸分違わぬ幻覚を見せることができる七崩賢 奇跡のグラオザーム、彼の登場は様々な現実が彼の見せる幻覚である可能性を示唆しますね。もしかしたら魔王を倒したという事実も、彼の見せる幻覚なのかもしれません。また帝国の怪しい動きについても、彼は何か暗躍しているのかもしれません。彼の魔法を使えば人を操ることなど造作もないことでしょう。対抗できるのが僧侶 ハイターだけだったとするのであれば、帝国編の終盤ではきっと僧侶 ザインも戻ってくるのでしょうね。
そして女神の力によって時を超えられる、という事実。時を超えられるのはまだ精神だけですが、肉体も超えられるのであれば、いずれ過去の勇者たちといまのフリーレンの仲間たちの共闘も見られるかもしれません。ハイターとフェルン、アイゼンとシュタルクの共闘やヒンメルとフリーレンの共闘はぜひ見てみたいですね。もしかしたらフランメもでてくるかもしれません。このあたりはとても期待してしまいます。
また封魔鉱や支配の石環といった強力すぎるサブアイテムもそのうち出番を迎えるかもしれません。フリーレンが収集している役にたたなそうな魔法もどこかで出番を迎えたら面白そうだな、って感じたりもします 笑。
またこの物語には故郷や家族といったものが頻度高く、とても上手に描かれていると感じます。人の心を知るために人と共に旅に出たフリーレンと、人の心を知ろうとして人を殺してしまう魔族の対比の取り方もうまいです。魔族を一方的な悪として描くのではなく、哀しき存在として描くことで、「例え魔族であっても一方的な悪ではない」と示しているようにも感じます。特にマハト編でのマハトの描き方は秀逸ですね。マハト編は最初から最後まで、全てが美しく描かれていると感じます。
果たして物語の最後でフリーレンは人の心を知ることができるのか、目的の地で何を得るのか、最後に帰ろうと思う場所はどこなのか。これからの旅もとても楽しみです。
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