読書日記781:ツインスター・サイクロン・ランナウェイ


タイトル:ツインスター・サイクロン・ランナウェイ
著者: 冲方 丁
出版社:早川書房
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人類が宇宙へ広がってから6000年。辺境の巨大ガス惑星では、都市型宇宙船に住む周回者(サークス)たちが、大気を泳ぐ昏魚(ベッシュ)を捕えて暮らしていた。男女の夫婦者が漁をすると定められた社会で振られてばかりだった漁師のテラは、謎の家出少女ダイオードと出逢い、異例の女性ペアで強力な礎柱船(ピラーボート)に乗り組む。体格も性格も正反対のふたりは、誰も予想しなかった漁獲をあげることに――。日本SF大賞『天冥の標』作者が贈る、新たな宇宙の物語!
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天冥の標の作者、小川一水さんの作品です。もう天冥の標が完結してから三年が経ち、新作が何巻か出ているんですね・・・。早いものです。

今から遥か未来、宇宙の彼方のガス惑星FBBの周囲に都市型宇宙船を展開して住む周回者たち。その一人、若き女性のテラは、一人の少女、ダイオードと出会う。デコンパとツイスターとして宇宙船を操り惑星周囲を泳ぐ昏魚を捕らえだした二人に試練が訪れるー。

長年ブログを書いていると文章を書くことにはある程度慣れてくるのですが、このような作品と出会うと、「文章を書く」ということと「物語を創る」という二つの間の大きな隔たりに愕然としますね 笑。ガス状惑星FBB、その周囲を泳ぐ昏魚とやばれる超巨大な魚、その魚を資源として軌道上の都市型宇宙船で暮らす暮らす三十万人、十六氏族の人類、想像に反応していかなる材質にも形状にも形を変える粘土、その粘土を想像力を駆使して操り、粘土製の巨大な宇宙船を意のままの形に作り変える脱圧精神者(デコンパ)と船を操るツイスター-。これだけの個性的で魅力溢れる世界を創り上げて造り上げ、その中で軽いタッチで二人の少女の冒険劇を描く。ああ一流のSF作家さんは凄いなあ、と簡単仕切りです 笑。

これだけの独特の設定なのに、あくまで主軸は二人の少女、テラとダイオードです。この二人がまたとてもいい。軽妙な言い回しとか、反発しあいながらも協力し合ったりとか、最近増えてきている少女二人の物語を地で言っている感じです。有名なところではリコリスリコイルや水星の魔女などがありますが、この作品は二千二十年刊行ですし、これらの作品にも影響を与えたのかもしれないな、とも感じました。

天冥の標は時間軸が何度も移り変わり、膨大な数の人物が登場してきました。一方で本作はあくまでこの二人が主軸で、その中での宇宙を舞台とした冒険が繰り広げられるのだろうな、と想像できます。登場人物に話が寄っている感じですね。


天冥の標と同じように宇宙を舞台とした読み手の想像の及ばない、それでいて惹き付けて止まない物語が展開されるのだろうな、と思うと次の巻も楽しみで仕方ないです。天冥の標よりもだいぶノリが軽くて、ラノベに近い作品だと思いますが、SFとしての深みもあって、読むのが楽しみな作品が増えたな、と嬉しく思います。まずは既刊の三巻までを読んでみようと思います。上記二作品のような映像作品が好きな人はぜひ一読をお勧めします。楽しく読めると思います。

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