読書日記780:マルドゥック・アノニマス8
タイトル:マルドゥック・アノニマス8
著者: 冲方 丁
出版社:早川書房
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オクトーバー社への集団薬害訴訟が開始、ハンターが市議会議員選に出馬する中、マルセル島の抗争がマルドゥック市全域を揺るがす。
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少し前に刊行された冲方 丁さんの作品です。この作品は続きますね。アノニマスに入ってから登場人物も格段に増え物語の厚みも増してきていると感じます。
本巻の物語の中心は主人公であるバロットの敵対組織、ハンターのマルセル島におけるシザースたちとの抗争です。バロット、ハンター、そして市長を中心とするシザースたち。この三者の抗争が物語全体の中心ですが、特に本巻ではハンターたちとシザースの抗争を描いています。前巻でバロットの活躍は十二分に描かれているのでだと思いますが、主人公であるバロットたちの活躍は少ないですね。
前半はハンターの仲間と、シザース一味のエンハンサー同士の抗争の描写が続きます。これはこれで面白いのですが、、怪獣同士の戦いのようで、もはや人間同士の戦闘に見えないですね・・・。エンハンサーの能力が凄過ぎです。
個人的には物語の後半、戦闘が終わってからの政治的な駆け引きの描写に次の巻への期待を感じます。マルドゥック・スクランブルでバロットとポーカー勝負の激戦を繰り広げたアシュレイ・ハーベストも再登場し、あのポーカー勝負のような熱い描写が、政界を舞台に再び見れるかもしれない、と大きく期待してしまいます。
物語はもう既に八巻とこれまでのスクランブル、ヴェロシティといったシリーズを大きく超える巻数になってきています。人気シリーズですし、終わらせたくない、というのもあるのでしょうね。登場人物の個性も掘り下げられていて、バロットの敵であるハンター、その仲間のバジルなども非常に魅力的に描かれています。
読み終えるのはもったいないシリーズですが、一方で物語はどこへ向かうのだろう、と思ったりもしますね。物語の最初の狙いだったウフコックの奪還に成功し、薬害裁判を使ってハンター陣営にダメージを与えようとするバロットたち、そして自らも議員となることでスクランブル法案を無効にしバロットたちの存在を揺るがそうとするハンター、さらに市の実権を握り暗躍するシザースたち・・・。
次の巻は本巻で描かれていた葬儀の描写から、しばらくは政界や裁判での戦いに移って行くのでしょうかね。エンハンサー同士の戦いもさることながら、頭脳戦の描写も見たいですね。次の巻も楽しみに待とうと思います。
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