コミック日記164:チェンソーマン 13巻 


タイトル:チェンソーマン 13巻
作者:藤本タツキ
出版元:集英社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
チェンソーマンだとバレたくて仕方がないデンジ。その欲求は、監視を続ける吉田をものともせず…!? 一方、負傷したユウコの見舞いに訪れたアサ。仲を深める2人は、“秘密”を告白し合うことになるが!? 悪魔が来たりて、少女たちの友情は地獄絵図と化す!!

感想--------------------------------------------------

言わずと知れた大人気漫画です。最新巻が発売され、アニメもつい先日、第一期が終了、と乗っているチェンソーマン。やっぱり全巻読んだし、感想・考察書いてみようかな、書きたいな、と思い、書いてみました。ちなみに、以下、コミック十三巻+ジャンプ+での連載最新話までのネタバレを盛大に含みますので、未読の方はご注意ください!














悪魔が普通に存在する世界、デビルハンターとなった主人公デンジは、「デンジの夢を私に見せて欲しい」という言葉と共に、ポチタからチェンソーの悪魔の力を得る。公安のデビルハンターとなったデンジは、上司のマキマや先輩のアキと様々な悪魔と戦うことになるー。



めちゃめちゃ好きです、チェンソーマン。魅力的なのは、主人公デンジが自分の欲望にしっかりと忠実なところ、そしてデンジの成長をしっかりと描いているところです。バトルと、凄惨な展開が目を引きますが、これをデンジの成長の物語と捉えると、意外と個人的にはしっくりきます。

自分のことだけを考えていればよく、先輩である姫野を失っても心の痛みを感じることのなかったデンジはアキを失ったときには物凄く心に痛みを感じるようになります。これは考える範囲が自分からパワーやアキまで広がっていたからなんでしょうね。そしてコベニによって自分の目指していた「普通の暮らし」が辛いことばかりであることを知り、やはり特別な存在であるチェンソーマンであろうとする。最低限の、自分のことだけを考えていればよかったのに、いつの間にか周囲の人々のことで心を痛め、目指していた「普通」に失望するようになるー。これは大人になっていく過程を描いているんだろうな、と感じます。


そして「支配の悪魔」であるマキマ。
彼女は母親の象徴なのかな、と感じます。一人前に育て、自分の言葉は絶対とする彼女の存在はまさに「支配の悪魔」です。デンジは第一部を通じてそんな母親の象徴であるマキマから逃れ、何も考えずに『はい』と『ワン』しか答えない存在から、自分で考える一人前の存在になっていきます。まさにデンジの自立していく様を描いているんだろうなーと感じます。


「公安編」が家族を描き、ママであるマキマとアニキであるアキ、妹のパワーと共に歩む「成長」と、家族からの「自立」を描いているとすると、次の「高校編」で描かれるのは「他者との関係性」なんだろうなーと感じます。


とにかく「関係」が多いのが高校編の特徴と感じます。
舞台となる高校での人間「関係」、別人格として存在する「戦争の悪魔」ことヨルと主人公アサの「関係」、友人であるユウコや吉田と、アサの「関係」などなど。悪魔を別人格として描き、悪魔と自分の間にも関係性を持たせるあたりも拘っているなーって感じます。

ヨルは「戦争の悪魔」ですが、戦争も他者や他国との「関係」で成り立っているし、「自分のものを武器に変える」という能力も、自分と「自分のもの」との「関係性」の強弱で威力が変わったりと、目白押しですね。特に二部に入ってからは、アサとユウコ、アサとデンジといった二人で走ったり並んだりしているシーンがとても多く感じます。このあたりも関係性を重視している二部の特徴かと感じたりします。



そしてデンジ。「チェンソーマンであることがばれればもてる」と他者との「関係性」を単純に考えているデンジは、リアルな「関係性」に気付かされてきっと痛い目を見るんだろうな、と感じます。そしてアサとの「関係」からリアルな人間関係に気付き、学んでいくんだろうな、と思ったりもします。


「私はみんなが羨ましかったんだ」という結末で終わる、ありきたりの「関係性」の物語に最初の一話目でコケピーの死と共に止めを刺しているあたり、ほんと好きです。アニメ化もされて、漫画も売れて、予定調和への圧が強まれば強まるほど、その圧を吹き飛ばして暴れて欲しい、って本作には感じてしまいます。

最後に、、、、チェンソーマンは「支配」、「戦争」、「飢餓」、「死」という四人の悪魔と戦っていたそうですが、、、親の「支配」から逃れ、他人との関係性の築き方を学んで「争い(戦争)」を回避し、生きるための糧を得て「飢餓」を逃れ、年をとって「死」ぬ、というのは人の生き方の気もします。デンジとアサが、どのような生き方を辿るのか?今後も本当に楽しみです。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S
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