読書日記778:闇祓


タイトル:闇祓
著者: 辻村深月
出版社:KADOKAWA
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辻村深月さんの作品は久しぶりに読みます。「闇祓」というタイトルに惹かれて手にとってみました。ホラーですね。怖い話です。

澪のクラスに転校してきた白石要。普通の転校生と少し違う、と思っていた澪は、要の人との距離のとり方に戸惑いを覚え、部活の先輩に相談するー。


人に闇を押し付ける「闇ハラ」の家族と、そんな「闇ハラ」を祓う人の話です。中編集と言うのでしょうか、「転校生」、「隣人」、「同僚」、「班長」、「家族」の全五編から構成されています。

あの人と関るようになってからおかしくなったー。
あの人が来てから全てが変わってしまったー。

そんな人のことを「闇ハラ」と本書では呼んでいます。この「闇ハラ」という行為にはすごくしっくり来るものを感じます。本人達は至って優しく、正義で動いているのに、周囲の人を狂わせていく人、「闇ハラ」。そんな「闇ハラ」に取り込まれてしまった人々は人生を狂わされ、多くの場合、死に至って行きます。

行為や言動に悪意はないのに、人々を狂わせていく「闇ハラ」。そんな「闇ハラ」を祓う人、「闇祓」が主役の本作ですが、読んでいて非常に印象的なのは「闇ハラ」に魅入られて狂っていく人々の心情がとてもリアルに描かれている点です。ちょっとした優しさ、正義感といったものが人を蝕み、死に至らせていくー。リアルに感じてしまいます。


本書の最後に書かれていますが、「闇ハラはおそらく誰の近くにも存在しています」という言葉が本当に恐怖を誘います。エピローグに書かれているようなことは、多くの人にも身に覚えがあると思いますし、日本社会自体がしたり顔で真っ当な「優しさ」や「正義」を吹聴し人を狂わせる闇ハラの巣窟なのかもな、って思ったりもしました。

他人の行動や言動一つ一つを確認し評価する社会。正直、もっと他人に無関心に生きていければいいのに、と思うことも多々ありますし、そのような社会を一つの呪いとして描いた著者の目の付け所はうまいなあ、と感じたりもします。

他者比較・批評の目ばかりを養ってしまう、どうやっても先行きの見えない社会の閉塞感こそがこの「闇ハラ」という呪いの根源なのかもしれないなあ、って読みながら思ったりもしました。

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