読書日記775:鳩の撃退法(上)
タイトル:鳩の撃退法(上)
著者: 佐藤 正午
出版社:
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かつては直木賞も受賞した作家・津田伸一は、「女優倶楽部」の送迎ドライバーとして小さな街でその日暮らしを続けていた。そんな元作家のもとに三千万円を超える現金が転がりこんだが、喜びも束の間、思わぬ事実が判明する。-昨日あんたが使ったのは偽の一万円札だったんだよ。偽札の出所を追っているのは警察だけではない。一年前に家族三人が失踪した事件をはじめ、街で起きた物騒な事件に必ず関わっている裏社会の“あのひと”も、その動向に目を光らせているという。小説名人・佐藤正午の名作中の名作。圧倒的評価を得た第六回山田風太郎賞受賞作。
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藤原竜也さん主演で映画化もされた作品です。原作を読んでみました。
「女優倶楽部」のドライバーで、昔は著名な作家だった津田は、ふとしたことで幸地という男とであう。幸地一家が失踪したことを知った津田は奇妙な出来事に巻き込まれていくー。
上巻だけでも五百ページ超、しかも文章がぎっしりと書かれた作品は読み応え十分です。物語は「津田」という作家が事実に基づいた作品を書くというスタイルで、その作品を読者は体感していくことになります。時間軸が前に行き、後ろに行き、登場人物も多く、贋金、失踪、不倫、などなど様々な事件が発生し、と盛りだくさんな物語です。
この方の作品は初めて読みましたが、文章が本当にうまいと感じます。無駄のない文章を並べるのではなく、無駄や意味なく見える言葉を並べることで、物語に現実感や臨場感を生み出していきます。女優倶楽部の女優とのやり取りや、沼本店員とのやり取りなど、すごいと感じます。こういうやり取りを書ける作家さんは多くはないのではないでしょうか。
癖のある登場人物ばかりの中で繰り広げられる数多くの奇妙な事件。その多くの事件の背後にいると目される倉田という男。上巻の最後は痴情の話ばかりで個人的にはいまいちでしたが、下巻への期待は高まります。というか、これだけの文章量なのに飽きることなく最後まで読ませる著者の力量はさすがかと思います。
下巻も期待!
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