読書日記766:逆ソクラテス


タイトル:逆ソクラテス
作者:伊坂幸太郎
出版元:集英社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
逆境にもめげず簡単ではない現実に立ち向かい非日常的な出来事に巻き込まれながらもアンハッピーな展開を乗り越え僕たちは逆転する!無上の短編5編(書き下ろし3編)を収録。

感想--------------------------------------------------
伊坂幸太郎さんの作品です。この方の作品はほとんど読んでいますね。今も本屋さんの棚に多く並んでいる本です。

同級生の草壁のことをどこか下に見る担任の久留米。そんな久留米の意識を変えるために、僕は同級生の安齋や佐久間と作戦を考えるー。表題作の「逆ソクラテス」をはじめとした、小学生時代を思い返したくなる全五編!

「逆ソクラテス」、「スロウではない」、「非オプティマス」、「アンスポーツマンライク」、「逆ワシントン」の五編からなる作品です。各作品は教師の磯憲を軸に緩く繋がっている形です。時代も様々ですね。回想形式の話が多いですが、現代軸の話もあります。

どの話も小学生時代の仲間や先生との関係や、小学生時代からの今を描いていて、とてもいいです。いや、とてもいい、なんて言葉だけでは表現できないですね。本当に、読んでよかった、と思える作品でした。

特定の生徒を見下す担任、クラス内で威張る生徒、弱気な先生の授業を妨害しようとする生徒などなど、それぞれの話で扱うテーマは重くなりがちなのですが、そこを伊坂幸太郎さんならではの明るさと軽さで、うまく扱っていると感じます。こうしたテーマって重くなりがちなんですけどね。現代軸と過去軸と、そこに担任の磯憲を絡めて軽く、面白く扱っていて、本当にいいです。

個人的によかったのは「非オプティマス」と、「アンスポーツマンライク」から「逆ワシントン」への繋がりの下りですね。特に「逆ワシントン」の最後の下りは、本当にいいです。ああ、ここへ繋がるのか、と納得し、ちゃんと救いを与えている物語の創りに本当に脱帽です。詳しくはぜひ読んで欲しいです。

このお話って、小学生が読んでもぜんぜん楽しめると思います。夏の課題図書とかに含めても、いいよなあとか、読んでいて思ったりもしました。

あとがきには伊坂幸太郎さんが「この仕事を続けてきた一つの成果」と書かれていますが、数ある伊坂作品の中でも手放しで色々な人にお勧めできる作品だと思います。特にお子さんをお持ちの方はきっと感じるところがあるのではないかと感じました。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S
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