読書日記759:天冥の標Ⅹ 青葉よ、豊かなれ PART1


タイトル:天冥の標Ⅹ 青葉よ、豊かなれ PART1
作者:小川 一水
出版元:早川書房
その他:

あらすじ----------------------------------------------
女王ミヒルを駆逐したメニー・メニー・シープは、ついに“救世群”との和平を成し遂げる。太陽系から合流した二惑星天体連合軍(2PA)とともにカルミアンの母星に到達したセレスだったが、そこには超銀河団諸族の巨大艦隊が待ち受けていた。果たして彼らの狙いとは?カドム、イサリ、アクリラらは、メニー・メニー・シープの未来を求めて苦闘するが―今世紀最大最高のSFシリーズ万感の完結篇、ついに刊行開始。

感想--------------------------------------------------
天冥の標の十巻の一。あと本巻を含めて三冊。全十巻、十七冊という長い旅でしたがその終わりが見えてきました。

人、救世群、海の一統、カルミアン、<恋人たち>、ノルルスカイン。。。メニー・メニー・シープに乗り合わせた人種を超えた存在が手を結ぶ。逃亡した救世群の女王は?宇宙を恐るべき速さで蹂躙するオムニフロラに打つ手はあるのか・・・?

本書では、二十一世紀初頭に発生した冥王斑という致死率九十パーセントを超える恐るべき病が物語の大きな鍵となるのですが、昨今のコロナ禍の情勢を見ていると、この物語のようなことが実際に起き得るのかもしれない、と思ったりもします。

冥王斑は致死率九十パーセント以上であり、回復してもウィルスが体内に残るため回復者は健常者と暮らせない、特効薬がない、といった特徴があり、コロナとも共通点が多いと感じます。そしてその冥王斑回復者への差別が憎悪の応酬へと繋がり、やがては太陽系全体を巻き込む戦いへと発展し、人類を絶滅の縁へと追い込んでいきます。

さすがに致死率九十パーセントではないですが、コロナを巡る憎悪の応酬が始まっているところもあり、将来、このようなことが起きてもおかしくない、という危惧を感じさせます。というか、将来を見通したようなこの小説の筋書きはさすが小川一水さん、とも感じます。

物語は太陽系を脱出し、新たなる安住の地、カルミアンの母星を目指すメニー・メニー・シープの上。宇宙空間を駆る数千万の硫黄の竜との戦い、迫り来る本当の脅威を前に団結する異種族たちの姿が描かれます。セアキ、アクリラ、イサリ、エランカ・・・。一巻から描かれていた彼らが、変わらない姿で、本当の現実を知ったメニー・メニー・シープの上で活躍する姿には、「よくここまでたどり着いた」という想いを感じます。

生存と絶滅の狭間で最後の決断と行動を迫られるセアキたち。あと二冊、楽しみに読みたいと思います。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A

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