読書日記756:天冥の標Ⅸ ヒトであるヒトとないヒトと PART2
タイトル:天冥の標Ⅸ ヒトであるヒトとないヒトと PART2
作者:小川 一水
出版元:早川書房
その他:
あらすじ----------------------------------------------
セレス地表で世界の真実を知ったカドムら一行は、再会したアクリラとともにメニー・メニー・シープへの帰還を果たした。そこでは新政府大統領のエランカが、“救世群”との死闘を繰り広げつつ議会を解散、新たな統治の道を探ろうとしていた。いっぽうカドムらと別れ、“救世群”のハニカムで宥和の道を探るイサリにも意外な出会いが―。あまりに儚い方舟のなか、数多のヒトたちの運命が交錯する、シリーズ第9巻完結篇。
感想--------------------------------------------------
コロナの影響で在宅テレワークとなり、通勤時間=読書タイムがなくなりました。。。なので更新は鈍るかと思います。。。
天冥の標の9巻の2です。全十巻、十七冊の数百年にわたる壮大な太陽系を巡る旅も最後の一巻、あと三冊で終わりです。
アクリラ、セアキ、イサリ、そしてラゴスたち<恋人たち>やエランカたち新政府は、この世界の真実を知り、救世群たちから世界を取り戻すことを画策する。しかしその背後には、さらなる脅威が待ち受けるー。
自分たちの住む世界が箱庭の世界であることを知ったセアキたちの奮闘は続きます。咀嚼者たちとの戦いとさらにその先にあるミスチフの脅威との戦い。物語は大詰めを迎えていきます。
天冥の標のどの巻にも共通して言えることですが、物語の脇役とも言える巷の人々や、主人公たちの周囲の人間までがしっかりと活かされていて、彼らの目を通して語られる世界の方に真実を感じることも多いです。特に本巻では第五章の最後、かつての救世群の貴族であり、不自由な身体ながらも夫とイサリを支えて来たエフェーミアの言葉にそれを感じました。イサリを逃した罪でミヒルから厳しい罰を受けたエフェーミア。その彼女が語る「持つもの」への思いがそれにあたります。
第六巻「宿怨」に登場し、初めて冥王斑非感染者と対話を持った救世群、ノルベールの妻、そして救世群と人類の協調にまだ希望を持つ、不自由な身体ながらも毅然とした意志を持つ女性。この「宿怨」には本作のタイトルである「天冥の標」という章がありましたが、まさに標となる人の一人がこのエフェーミアなのかな、と思ったりもします。
物語は十巻へと続く、といった感じで終わりますが、十巻へと続くあとがきを筆者自らも書かれているのが印象的でもあります。ミスミィや<恋人たち>、救世群、そしてノルルスカインやミスチフと言った人外の存在も交えながらの物語は何処に着陸するのか、次の巻が楽しみです。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
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