タイトル:豆の上で眠る
作者:湊かなえ
出版元:新潮社
その他:
あらすじ----------------------------------------------
小学校一年生の時、結衣子の二歳上の姉・万佑子が失踪した。スーパーに残された帽子、不審な白い車の目撃証言、そして変質者の噂。必死に捜す結衣子たちの前に、二年後、姉を名乗る見知らぬ少女が帰ってきた。喜ぶ家族の中で、しかし自分だけが、大学生になった今も微かな違和感を抱き続けている。―お姉ちゃん、あなたは本物なの?辿り着いた真実に足元から頽れる衝撃の姉妹ミステリー。
感想--------------------------------------------------
湊かなえさんの作品です。久しぶりに読みました。
小学生で失踪した姉と、戻って来た姉。その姉に抱く微かな違和感。真実はー。
身近な変化に対する描写の細やかさが感じられる作品です。姉の失踪、姉を捜しながら変わっていく母と、結衣子の周囲環境。そして戻って来た姉を違和感無く受け入れることの出来ない自分ー。作中に書かれていますが、タイトルの「豆の上で眠る」とは童話のお話を題材にしています。えんどう豆の上に羽布団を何枚も重ねて寝るお姫様は、本物のお姫様であるが故に羽布団の下の豆のかすかな違和感が気になって眠ることが出来ません。同様に妹は、微かな違和感が気になって姉を受け入れることができません。
本物とは何か。
それが物語の根底にある問いかけのような気がします。物語の根幹に触れてしまうのであまり書けませんが、本物はそれが本物であると証明されても、なおかつ違和感を感じる人には受け入れられません。本物を本物と受け入れることが出来ない場合、それを認められない自分が偽物になるのかー?そんなことを考える物語でした。
全体として、前半部分は非常に描写が綿密で、結衣子の感じたことが克明に描かれています。一方で後半部分、特に最後はかなり説明的になっていると感じました。ミステリーテイストで先を読みたいと読者が感じる箇所の描写が克明なためなかなか読み進められず、一方で詳細な説明が欲しい謎解き部がさらりとしすぎているー。なんとなくミスマッチだな、と感じました。
読みやすいのは間違いないと思います。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B
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