コミック日記159:3月のライオン 15


タイトル:3月のライオン 15
作者:羽海野チカ
出版元:白泉社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
ひなたの待つ駒橋高校の文化祭にぎりぎりで間に合った零。
後夜祭のファイヤーパーティーの中で、ついに零からひなたへある思いが伝えられる。
出会ってからの日々や思い出が心に浮かんでは消える時間。
そこでふたりの間を行き交う思いは──。

一方、棋戦シーズンも真っ盛りを迎える。
「天才」に異様な嫉妬を燃やす「元天才」の中堅棋士、重厚な棋風に経験という厚みを加えたベテラン棋士、対局するは一筋縄ではいかない相手ばかり。
盤を挟んだ相手との静かなる対話を通して、己自身とも向き合う零。
振り返るこれまでの道のり、そして感じる成長とは…。

感想--------------------------------------------------
毎回楽しみな「3月のライオン」の最新巻です。

ひなたとの距離が縮まった零、そして強敵たちとの激戦を繰り広げる中で自分の中の変化と大事なものを改めて認識する零ー。

零の成長を感じる最新巻です。「図太くなってきた」と語る零、そしてー

「焦らなくてなってきたのはいいんです。−でも、必死にもなれなくなるのだとしたら?」

この一言は重いです。それと同時に、零の老成を感じさせる言葉でもあります。必死になれない=歳をとって大局的に見てしまう、ということに繋がる言葉でもあると思います。大局的に見るという言葉はいい言葉のようにも思えますが、裏返すと局面局面で必死になれなくなってきてしまうことでもあるので、それは即ち老いなのかなとも感じます。まだ高校生の零には早すぎる言葉かもしれませんが。

その対極として登場するのが野火止あづさ君ですね。かつての天才少年。数年後の零の姿かもしれません。しかしそれでもあづさは一局一局に全身全霊で取り組みます。その不器用さ、一途さがコミカルではあっても読者の心に刺さります。

たいていの夢は「しんどそうでやりたくない」の先に光っている。

まったくもってそのとおりだと思います。しかもやっても報われる保証なんてどこにもない。これは棋士だけでなくあらゆる世界に生きる人に共通する言葉ですね。こうした情熱と必死さと大局観と、そのバランスの取り方の難しさ。それをしっかりと読者にわかるように描く。これは相当に難しいことであり、この流れを、構成を描くまでには相当な苦労があったんだろうなあ、と想像してしまいます。

やはりこの作品からは眼が離せません。次の巻も楽しみです。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S

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