読書日記741:十字軍物語 第一巻: 神がそれを望んでおられる


タイトル:十字軍物語 第一巻: 神がそれを望んでおられる
作者:塩野 七生
出版元:新潮社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
ローマ帝国が滅亡し、「暗黒」と呼ぶ者さえいる中世―。カトリック教会は、イエスが受難した聖地であるにもかかわらず、長くイスラム教徒の支配下にあるイェルサレムを奪還すべく、「十字軍」結成を提唱する。これに呼応した七人の諸侯たちは、それぞれの思惑を抱え、時に激しく対立しながら異国の地を進むのだが…。中世最大の事件、現代まで残響とどろく真相に迫る、歴史大作の開幕。

感想--------------------------------------------------
ローマ人の物語」の塩野七生さんによる「十字軍物語」を読んでみました。カエサルやハンニバルなど知っている人々が登場する「ローマ人の物語」と違い、十字軍についてはほとんど知識がないので、内容のすべてが新鮮です。

カノッサの屈辱を経て法王と皇帝の関係が悪化する中世で、時の法王ウルバン二世は十字軍の招集を宣言します。集まったのは領地を持つ伯領公たち。彼らはアンティオキアを通過し、エルサレムへ至り、遂にはエルサレムを解放します。度重なるエジプトやパレスティーナの太守たちとの戦闘、その中でもなんとか彼の地を統治して行くーと、物語は第一次十字軍の登場人物が全て退場したところで終了します。

エルサレムを統治したゴルフレア、その後を継いだエルサレム王のボードワン、そしてボエモンド、タンクレディ、サン・ジル…。キリスト教の世界では有名な人々なのかもしれませんが、誰一人知りません…。敵地のど真ん中を強奪と略奪を繰り返しながら、十字軍ならではの重装部隊で軽装のセルジュークトルコ軍を圧倒して行く姿は強烈ですが、ローマ人たち程の強さは感じません。これは既知かそうじゃないか、も大きく関わっていそうです。

「十字軍」という言葉を聞くと、私はどうしても悲劇や殺戮をイメージしてしまいます。神の名の下に時の権力者に利用されてイスラム圏に攻め入り、最終的には押し返されて消えた軍隊。いろいろな物語や映画で取り上げられ、神の名の下に戦う敬虔な騎士たちでありつつも、僧に利用された哀れな人たち、というイメージもつきまといます。

塩野七生さんの筆致は確実で正確でありながらも、女性としての独特の感性を交えた物語的な書き方なので読み飽きることがありません。最初の方に十字軍について少しでも語られた作品を幾つか並べられていましたが、女性はいなかったように感じます。過去の作品との比較はさておき、私のような十字軍に関する知識が全くない人が、十字軍について知るには最適な本だと思いました。

マイペースで、次巻も読んで行こうと思います。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S
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