読書日記739:天冥の標6 宿怨 PART 2


タイトル:天冥の標6 宿怨 PART 2
作者:小川 一水
出版元:早川書房
その他:

あらすじ----------------------------------------------
太陽系世界の均一化をめざすロイズ非分極保険社団に対して、“救世群”副議長ロサリオ・クルメーロは、同胞に硬殻化を施して強硬路線を推し進める。その背後には秘かに太陽系を訪れていた異星人“穏健な者”の強大なテクノロジーの恩恵があった。いっぽうセレス・シティの少年アイネイアは、人類初の恒星船ジニ号の乗組員に選ばれ、3年後の出航を前に訓練の日々を送っていたが―すべての因果が悲劇を生む第6巻第2弾。

感想--------------------------------------------------
さて、天冥の標の第六巻の二冊目です。六巻だけで三冊もあるのですね。全十巻、十七冊の大作です。

体内に致死性のウィルスを宿すがために人類から忌み嫌われ隔離されてきた<救世群>たち。世代を超えて積み重なってきた宿怨は、穏健者たちの持つ高度な技術を手に入れたことにより、人類たちへの刃となるー。

激動の二冊目です。そして圧倒的に面白い。SF好きにはたまらない展開です。人類たちと、<救世群>の戦いは圧倒的で、スペースオペラを見ているよう。ガンダムや銀河英雄伝説好きにはたまらな展開です。地球軍と、地球への降下を開始した救世群たち。そしてその圧倒的な戦略と戦いぶり。技術に裏付けされた数々の用語と戦闘の描写。ああ面白い。堪能です。

自分たちの身体を穏健者の技術を用いて硬殻化し、圧倒的な戦闘力を身につけた救世群たち。彼らの戦略と戦術、そして参謀ロサリオの知略をも上回る誤算。ここまで読み進めて来てよかったーと思う反面、まだ半分なのに、もう半分!?と読み終えてしまうことへの惜しさをもう感じてしまったりもします。

心を通わせつつも、お互いの立場から対立することになるイサリとアイネイア。そして遠くの宇宙へと旅立とうとするアイネイアとミゲル。ソーラーセールの宇宙船をここまでしっかりと描いた作品って、あんまりないよなあ、って感じたりもして、その出航と加速の文章に身を震わせる私。著者は、この作品を描くにあたり、太陽系世界を徹底的に調べられたんでしょうね。その宇宙の描写が、宇宙戦艦による戦闘の描写が、それを支える知識の豊富さを物語ります。次々と提示されつつも全く国ならない数々の科学的な描写もそうですね。そしてその中に描かれる各々の種族の立ち位置と、登場人物の心情。ああ、この物語に出会えて良かった、と思う作品です。SF好きなら必読の本ですね。

さて次は第三巻。解き放たれた最悪の致死率を誇るウイルスと、救世群の侵攻を、地球群やロイズはどう止めるのか。次巻も楽しみです。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A

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