タイトル:天冥の標6 宿怨 PART1
作者:小川 一水
出版元:早川書房
その他:
あらすじ----------------------------------------------
西暦2499年、人工宇宙島群スカイシー3で遭難した《救世群》の少女イサリは、《非 染者》の少年アイネイアに助けられた。二人は、氷雪のシリンダー世界を脱出するた めの冒険行に出発するが――。一方、太陽系世界を支配するロイズ非分極保険社団傘下の、MHD社筆頭執行責任者ジェズベルは、近年、反体制活動を活発化させる《救世群》に対し、根本的な方針変更を決断しようとしていた。大いなる転換点を迎える第6巻前篇
感想--------------------------------------------------
天冥の標の六巻です。この巻だけで三冊もあるんですね。全十巻、十七冊も半分くらいまで来ました。
氷雪のシリンダー世界で遭難しかけた<救世群>のイサリは、<非感染者>のアイネイアと出会う。二人の出会いと別れの後に残された思いは、その後の二人の人生に大きな影響を与えていくー。
一巻、最初の物語であるメニー・メニー・シープと直接的に登場人物が繋がってくる巻ですね。イサリやミヒルといった、<咀嚼者>という怪物として描かれてきた登場人物が現れます。体内に消えることのない伝染病、冥王斑のウィルスを宿すがために人々から隔離され、迫害されてきた<救世群>たち。彼らの、彼らを迫害してきたものたちへの恨みが「宿怨」というサブタイトルにも現れています。
氷雪の世界で自分を救ってくれ、迫害もしなかったアイネイアに想いを寄せるイサリ。<救世群>のイサリと、MHD社の有力者を母として持つアイネイアは対立する関係でもあり、なんとなくロミオとジュリエット的な話の展開が予想されます。
MHD社の<純潔>や<遵法>といった兵器や<恋人たち>、そして<酸素いらず>のアウレーリア一統やセアキの一族など、物語共通の登場人物も多く登場し、時代を経ての物語の繋がりもよくわかりますね。
巻が変わるたびに時代も登場人物も変わりますが、それぞれの巻でそれぞれの登場人物がしっかりと生きていることに変わりはありません。そして各巻で少しずつ物語の描き方も変えていて、このあたりもうまいなあ、と感じます。本当にSFを満喫できる物語だと感じます。
さて、まだまだ半分以上物語があるのですね。これは嬉しい限りです。次巻も堪能したいと思います。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
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