読書日記737:友だち幻想


タイトル:友だち幻想
作者:菅野 仁
出版元:筑摩書房
その他:

あらすじ----------------------------------------------
疑いなく正しいとされがちな、〈人と人とのつながり〉。SNSを始め、さまざまなコミュニケーションツールの普及によって、さらに〈つながり〉重視の傾向は強まっている。社会学者である著者(故人)は、10年以上も前に、過剰な〈つながり〉がもたらす息苦しさに目を向け、〈人と人とのつながり〉の常識を丁寧に問い直し、若年層向けの新書にまとめた。

感想--------------------------------------------------
本のタイトルで選んでみました。「コミュニケーション」の重要性がひたすら言われ続けている今だからこそ、見直すべき「友だち」とその友だちに対して持つ幻想について書かれています。初版は2008年。でもまだ版を重ねているようです。人と人との繋がりに悩む現代だからこそ、このような本が売れるのでしょうね。

本書を読もうと思ったきっかけも、「コミュニケーション」偏重の今の社会にいささか疲れたかもしれません。みんなでいる時間も大事かもだけど、一人でいる時間も大事だよ。そんな風に思っていたので、本書の内容は「まさにその通り!」と思って読んでいました。最初は大人向けの本かと思っていましたが、中高生向けの本ですね。特に教師の方は必読かと思います。協力や友情ばかりがもてはやされ、そのような物語ばかりが取りざたされる世の中。「みんなと一緒じゃなきゃダメ」という圧力。息苦しいですね。「一人でいてもいいんだ」と誰もが思えるようになる、心が軽くなる本です。

これも感じていたことですが、以前と今で人の繫がりの持つ意味が違って来ています。人との繫がりの有無がそのまま生死に直結した過去と違い、衣食住はお金さえあれば一人でもなんとかなる現代。その現代でわざわざ人との繫がりを求める理由ってなんだろう?って感じている人は多いのではないでしょうか?人と人との距離感や繋がり方、これは学校では教えてくれませんが、教室で学ぶことは出来ます。これって実はとても重要なことだと思ったりもします。

直接的な人との繫がりのない世界。残念ながら(?)私はそこには寂しさはあまり感じません。直接的な人との繫がりがなくてもインターネットを介して様々な繋がり方ができますし、距離感をある程度自由に保てるのでむしろ生きやすいのではないか?と感じたりもします。世代間のギャップがきっとこの辺りは大きくて、直接的な繫がりばかりを重視する年配世代にはもしかしたら理解されないかもしれませんが^^

でもね、最近思うのですが、人の悩み事の大半は他人との関係についてです。その関係性や距離感を適切に保ち、互いに傷つかない距離感を保とうとするのは、人としての進化だと思うのですが、どうでしょうね?こうした感覚は若い人やより実際的な人ほど持っているような気もします。自我が強く、権力志向で見栄のある人は、それを示す他者が必要なので、より他者との関わりを求めるようになる、というのは偏見すぎる考えかもしれませんが。

きっと共感を覚える人も多い本だと思います。百四十ページ程度ですぐ読める本ですので、よかったら読んでみてください。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A

この記事へのコメント