読書日記733:天冥の標Ⅳ: 機械じかけの子息たち


タイトル:天冥の標Ⅳ: 機械じかけの子息たち
作者:小川 一水
出版元:早川書房
その他:

あらすじ----------------------------------------------
「わたくしたち市民は、次代の社会をになうべき同胞が、社会の一員として敬愛され、かつ、良い環境のなかで心身ともに健やかに成長することをねがうものです。麗しかれかし。潔かるべし」―純潔と遵法が唱和する。「人を守りなさい、人に従いなさい、人から生きる許しを得なさい。そして性愛の奉仕をもって人に喜ばれなさい」―かつて大師父は仰せられた。そして少年が目覚めたとき、すべては始まる。シリーズ第4巻。

感想--------------------------------------------------
天冥の標の四巻、五冊目です。一巻目の登場人物たちの背景をそれ以降の巻で補っていく、という筋立てでいまのところ展開していますね。本巻で描かれるのは機械仕掛けの身体を持つ<恋人たち(ラバーズ)>。一巻目では様々な個性ある登場人物が描かれていてかなり世界観が浮いている感じがありましたが、巻を経るに連れて登場人物たちの背景がしっかりしてくるため、ますます引き込まれていきます。

少年が目覚めたとき、そこにいたのは一人の少女だったー。

読み終えての感想。この巻は性描写が本当に多いです。官能小説並みですね。性愛に奉仕することを仕事とする機械、<恋人たち>と、そこで目覚めた少年。そして少年を巡る争いと、新たな脅威ー。著者が書いてみたかった物語の一つなのかもしれないですね。とても映像化は出来ませんが。

本巻を読んでいて特に感じるのですが、やはりSFを専門に書かれている作家さんの想像力・創造力は他の作家さんと比べても抜きん出ていると思います。次から次へと提示される新しい言葉や価値観、存在。そしてそれらの物量と個性がそこにない世界を構築し、読者に提示する。読み手としてはその提示される新しい、そこにない価値観や世界が心地よくてどんどんとその世界に引き込まれていきます。

ストーリーでもなく、描写力でもなく、「現実にはないもの」を想像してリアリティを持って提示する。まさに「想像」であり、「創造」ですね。次々とめまぐるしく舞台設定が代わり、様々な世界で出会いと愛の営みを繰り返す少年と少女、キリアンとアウローラ。新しく描かれつつも、確固とした現実身をもって描かれる舞台とその描写と価値観に、ああこれこそSFだなあ、って感じます。

物語は一人の少年と二人の少女、そして性愛に奉仕する<恋人たち>の住処ハニカムを巡る攻防が描かれていきます。『純潔』や『遵法』といった存在の描き方も観念的な名前でありながら、凄まじい戦闘力を持っていたりして、好きです。そしてこの巻は三巻で描かれたアウレーリア一統の時代と重なっているんですね。世界観も広がり、読み応え十分です。ただ徹頭徹尾、性描写が多い…。まあそれがテーマの巻ですからね。

読めば読む程にはまるシリーズですね。次の巻も楽しみです。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A

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