読書日記724:消滅 VANISHING POINT (上)


タイトル:消滅 VANISHING POINT (上)
作者:恩田陸
出版元:幻冬舎
その他:

あらすじ----------------------------------------------
超大型台風接近中の日本。国際空港の入管で突如11人が別室に連行された。時間だけが経過し焦燥する彼ら。大規模な通信障害で機器は使用不能。その中の一人の女が「当局はこの中にテロ首謀者がいると見ている。それを皆さんに見つけ出していただきたい」と言った。女は高性能AIを持つヒューマノイドだった。10人は恐怖に戦きながら推理を開始する。

感想--------------------------------------------------
恩田陸さんの作品です。「蜜蜂と遠雷」が個人的に大ヒットだったので、読んでみました。上巻は四百ページ弱、下巻は三百ページ程の作品です。

空港で足止めされることになった男女。男女たちの中にテロリストが潜んでいる、と告げたのは高性能女性ヒューマノイドだったー。

本作は空港に足止めされることになった男女の視点を切り替えながら、一つの事件について語っていく、というスタイルをとっています。接近中の超大型台風、各国から逃げ続けている政府首脳のスキャンダルを暴こうとした男、突如鳴り響くサイレンと大規模通信障害、そして唐突に告げられる、「この中にテロリストがいる」という言葉ー。物語の素材としては面白いものが目白押しです。

ただ一方で物語への没入感、期待感というものはそこまで高まっていきませんでした。本作はSF・サスペンスに近いのですが、物語が足止めされることになった男女の視点を切り替えながら語っているため、どこまでも人物の主観視点です。そしてその視点が、うまく生きていないと感じます。「蜜蜂と遠雷」や「チョコレートコスモス」のように主観視点の人物が「どう感じたか」が主題の作品では、著者の文章はとても生きるのだろうな、と感じます。演劇やピアノ、それらを見て、聞いて登場人物がどう感じるのか、どのような生い立ちを経て、今に辿り着いたのか、そこを盛り上げていく描き方は著者は間違いなく一級品で、及ぶ者はいないんじゃないか、と思います。ただ本作はサスペンスであるため「人物がどう感じたか」よりも「謎がどうなっていくのか」が主題であり、そこで人物の思いを詳細に描かれていても、冗長に感じてしまいました。(それでも読ませてしまうあたりはさすがだと思います。)

謎がどうなっていくのか?大型台風は?消滅という言葉の意味は?キャサリンのような超高性能ヒューマノイドがなぜ唐突にあらわれたのか?などなどを詳細に描いていけると物語はぐっと面白くなっていくと思います。ただ、著者の作風とはあわないのかな?と思ったりもします。

上巻は物語が進み始めたところで終わった、という感じです。下巻でこれらの謎をどう収束させるのか?また収束させないのか?この辺りを楽しみに読んでみたいと思います。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B

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