読書日記723:残酷すぎる成功法則


タイトル:残酷すぎる成功法則
作者:エリック・バーカー
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あらすじ----------------------------------------------
自己啓発本はお手軽で底の浅いもの。そんな印象は本書を一読すれば変わるはず。著者は『ウォール・ストリート・ジャーナル』『タイム』などの有名媒体に寄稿し、大企業のマーケティングにも関わる、アメリカの人気ブロガー。「勝者は決して諦めない」とよくいわれるが、では、早めに見切りをつけるのは間違いなのか。楽観主義者の方が成功しやすいというが、悲観主義にメリットはないのか。世の中に流通するさまざまな「成功法則」を、豊富な例と科学的な理論を元に検証し、結論を提示する手つきは実に鮮やかだ。

感想--------------------------------------------------
「残酷すぎる成功の法則」という本書のタイトルを見ると、「言ってはいけない」などの本と同様に「成功するための常識と考えられていたことが実は間違っていた」といった中身と考えられがちですが、実際にはだいぶ違います。成功している人や人生をうまく過ごしている人の特徴、そのための秘訣について書かれた本、と言った方がいいかと思います。

「いい人」と「したたかな人」、「内向的な人」と「外向的な人」、「自信を持つ人」と「謙虚な人」などなど、本書では様々な人の特性を比較しながら、成功した人の特徴を明らかにしていきます。「残酷な」と書かれている割には、比較的そのままの常識的な内容も多く感じました。本書の特徴は、これらの特性を比較しながらも人の内面に科学的裏付けをとりながらしっかり踏み込んでいることだと感じます。

「私たちは選択権を持つことは好きだが、選択することは嫌いだ」
本書の中で印象に残った言葉です。選択することは可能性を減らすことであり、「その選択が正しかったか」という問いに選択後に常につきまとわれることになります。だから我々は「検討する」という言葉と共に時間が選択肢の幅を狭めるのを待つのでしょうね。「最良の選択をすることではなく、満足する選択をすること」が重要であり、次には「満足」というもの、「幸福」というものの定義が必要となります。「幸福感」、「達成感」、「育成」、「存在意義」といった幸福の四要素をどこまで達成すれば自分は幸福と感じるのか。この定義を明確にすることが重要だと本書では述べています。

「自分を信じることは素晴らしいが、自分を許せることはもっと素晴らしい」
これも印象に残った言葉です。自分のことを信じて常に自分の価値を証明するための強迫観念に駆られるのではなく、自分に思いやりを持ち、自分のことを許すこと。これはきっと真面目な人ほど必要としている言葉だと感じました。自分のことを自分で認め、しっかりと励ましてあげられる人は、きっと周囲の人にも寛容な心を持てるのでしょうね。

タイトルは少し?という感じですが、本としては非常にいい本です。成功するため、人生を有意義に過ごすために必要な心づもりやバランス感覚などについてしっかりと考えることの出来る本でした。少し気になるのは、日本人でこうした本を書いた人をあまり見たことが無いことです。自身の思いや価値観を提示する人はいても、データに基づいた事実に乗っ取って人の心に対する深い洞察を書いた日本人をほとんど知りません。人の心や生活を尊ぶ海外諸国と、滅私奉公の心意気で自己を殺して尽くすことが美徳とされる日本の違い?なんて考えたりもしました。



総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S

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