読書日記718:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編


タイトル:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編
作者:村上春樹
出版元:新潮社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
その年の五月から翌年の初めにかけて、私は狭い谷間の入り口近くの、山の上に住んでいた。夏には谷の奥の方でひっきりなしに雨が降ったが、谷の外側はだいたい晴れていた……それは孤独で静謐な日々であるはずだった。騎士団長が顕(あらわ)れるまでは。

感想--------------------------------------------------
最近、文庫化もされた村上春樹さんの「騎士団長殺し」。私は全く事前情報無く読み始め、読む前は中世の話なのかな?なんて思っていましたが、全然違いました…。

妻と別れ著名な画家の元住居である別荘に住むことになった画家の私は、そこで不思議な体験をするー。

村上春樹さんの作品らしく、象徴的な物事、事件が全編を通してちりばめられており、それらがどう関係するのか、何を意味するのか、そのことに想像を逞しくしてしまいます。

夜な夜な決まった時間に鳴る鈴、屋根裏に隠されていた画、谷を挟んだ別荘に住む不思議な隣人、そして顕れるイデアー。サブタイトルにもなっている「イデア」が何を意味するのか、正確には理解できませんが、「目の前にあるもの」といった意味合いなのだろうか?と考えたりします。第二部が「メタファー」をサブタイトルに使っていますので、その対比なのでしょうね。暗に意味するものと、明に意味するもの。見えるものと内に秘めたもの。まだ物語の輪郭は御おぼろげで、どう展開するのか見えてきませんね。

村上春樹流と言えばそれまでですが、性的描写もところどころに見られます。ただ、過去の物語よりもなんとなく必然性が薄いようにも感じられました。これも何かのメタファーなのでしょうか?

いつもそうなのですが、村上春樹さんの作品に出てくる登場人物は丁寧で静謐で誠実です。そのことが物語と作品に格式を与えているようにも感じられます。読んでいて想像力を自然と逞しくしてしまう。私にとってはそんな作品で、物語が押し付けられるのではなく、読者の占める領域がとても広いのも特徴だと感じます。

ハードカバーでは上下巻で合計千ページ以上。読み応え十分で楽しみが続きますね。下巻もじっくり読んでみます。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A

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