読書日記716:日本を決定した百年―附・思出す侭


タイトル:日本を決定した百年―附・思出す侭
作者:吉田 茂
出版元:中央公論新社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
『日本を決定した百年』は、簡にして要を得た記述にて明治建国から戦後復興までの日本の近代化を跡づけた異色の歴史書である。すぐれた歴史感覚をもち勤勉に働く国民を描きながら、吉田は「日本人は甘やかされてはならない」と述べることを忘れていない。吉田の肉声が聞こえる「思出す侭」を付す。
感想--------------------------------------------------
白洲次郎の人生を読んだ後、戦後という彼と同時代を生き、日本を導いた首相、吉田茂の自叙伝的な作品を読んでみました。吉田茂の言葉として書かれているので、彼の感覚がよくわかる本でもあります。

サンフランシスコ講和条約を結び、戦後の日本に尽力した吉田茂は、日露戦争当時の日本から彼の時代の復興著しい日本を顧み、日本人の特性や諸外国との関係性などについて、彼の主観を交えながら語っています。五十年以上昔の本なので、決して読みやすくはありません。しかしこの作品には政治家 吉田茂の心が現れているように感じられました。

彼の時代はまだ政治や首相がその通りの言葉を持ち、彼の意志がそのまま政治に反映できた時代のように感じられます。簡単に言うと、政治家がその意思で政治を行えた時代ですね。だから彼らの国際感覚や日本へ対する思いというものはそのまま国策に反映され、そのことが日本復興の要因の一つとなったのだと感じられました。どうしても現在と比べてしまうのですが、現在は首相の意志を超えたところであまりにも多くの調整や交渉が必要となっていて、政治家自身の思いが当時に比べて政治に反映しにくいのだろうな、と感じます。「こうしなければならない」という意志よりも、「こうすれば皆丸く収まる」という方向に舵を切らざるを得ないんですね。それでもまだ今は一昔前よりましな気がしますが。

復興を終え、繁栄を迎え、その後には何が来るのだろう、と読みながら思わずにはいられませんでした。復興時というのはある意味「それ以上悪くなりようが無い」時期のため、いけいけどんどんで上を目指せる幸せな時期でもあります。しかし一方で繁栄を迎えてしまうと、そのさらに上を目指すか落ちていくかしか道がなくある意味窮屈になります。それが今の時代なんだろうなあ、って思ったりします。上を目指すためにすべてをシステマチックにし、そのしわ寄せが人に来て、心地のいい言葉とは裏腹に「なんか疲れるなあ」って感じてるのは私だけでしょうか?

本書は、何もないけれど今よりもよほど自由だった時代の政治家の言葉、と思えたりもして、今と違ってその言葉には裏表ないんだろうな、って思えます。吉田茂が生きていて、今の時代を見たらどんな言葉を残すのだろう、って思ったりもして本書を読んでみました。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A

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