読書日記708:劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるのか
タイトル:劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるのか
作者:山口周
出版元:光文社
その他:
あらすじ----------------------------------------------
ビジネス書大賞2018準大賞受賞作『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』の著者による、日本社会の閉塞感を打ち破るための画期的な論考!
感想--------------------------------------------------
個人的にタイトルが刺さり、手に取ってみた本です。手に取ってみたのは、私自身もこのような「オッサン」をあちこちで目にして気になっていたからですね。軽い中身の本かと思っていましたが、想像以上にしっかりと書かれていて、読み応え十分です。著者の個人的な思いだけではなく、様々な作品の引用を頻繁に取り入れて書かれています。
「オッサン」
本書はこの言葉の定義から始まります。不寛容で排他的、既得権益を手放さない、階層意識が強い、古い価値観に凝り固まっているー。本書で描かれるこうした「オッサン」という人物像に当てはまる人は、身の回りに一人くらいいるのではないでしょうか。本書ではこうした「オッサン」が生まれた背景、年寄りが劣化した理由、オッサンの罪、オッサンをうまく除いていくには、自分がオッサンにならないためにはどうするかー、などについて語られていきます。
情報化が進み、生き字引として敬われてきていた老人がその役割を果たさなくなった、古い物語と新しい物語ー継続成長が見込める時代とそうでない時代の狭間に生まれた世代なので、パラダイムシフトについていけていないーなどなどオッサンが劣化し、切れる理由は明確なようです。一方でオッサン化しないためにどうするべきか、ここが一番読んでいて面白かったところですが、常に何かを学び続ける環境に身を曝すことが重要、というのは非常に納得できる答えです。自分に対して適度なストレスをかけ続けることーこれが成長の秘訣のようです。
個人的には本書の最後の方に書かれていた、「逃げる勇気」というものについても印象に残りました。一つのことをやり続けるのではなく、時には逃げることも重要ー。一つのことを長く続けることが一般的に美学とされる風潮はありますが、面白いことに次々と手を出していくことの方が、新しい環境に身を曝すことにもなり、有益なようです。
個人的に感じるのは、自分が「オッサン」ではない、と思っている人、「オッサン」を軽蔑するような視点で眺めている人ほど、オッサン化しているのかもしれない、ということです。「オッサン」に決定的に足りないのは「謙虚さ」であり、逆に「斜め上から見下ろす視点」は十分すぎるほど持っていると感じます。人を侮蔑する、見下す、といった態度を取る「オッサン」には怒りを感じることも多いですが、自分も「オッサン」をそのように見ていないか、と反省することも多いです。人を侮蔑したり見下す人は結局、逆に侮蔑されるし見下されるでしょうし、逆に謙虚さ、寛容、感謝の気持ちとチャレンジする精神を忘れなければいつまでもオッサン化することなく過ごしていけるのでしょうね。
ここで書かれている「オッサン」は結局のところ、最後には誰もから見捨てられ敬遠されていくように感じます。自分がそうならないようにどうすればいいかーその秘訣が書かれている本と感じました。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
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