読書日記701:珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を


タイトル:珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を
作者:岡崎 琢磨
出版元:宝島社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
京都の小路の一角に、ひっそりと店を構える珈琲店「タレーラン」。恋人と喧嘩した主人公は、偶然に導かれて入ったこの店で、運命の出会いを果たす。長年追い求めた理想の珈琲と、魅惑的な女性バリスタ・切間美星だ。美星の聡明な頭脳は、店に持ち込まれる日常の謎を、鮮やかに解き明かしていく。だが美星には、秘められた過去があり―。軽妙な会話とキャラが炸裂する鮮烈なデビュー作。

感想--------------------------------------------------
書店でよく見かけていた本で、表紙のイラストが印象に残っていました。このミスの最終選考に残った本だということは読んで知りました。

この本を最初見かけたとき、私はすぐに「ビブリア古書堂事件手帳」を思い出しました。古書店と珈琲店の違いはあるもののタイトルの構成も似ており、ビブリアのヒットに乗った作品かな、と感じていました。

読んでみて、その予想は半分当たりの半分はずれ、といったところでしょうか。珈琲店の女性バリスタが謎を解いていく、といった構成はビブリア古書堂の主人である栞子さんが謎を解いていく、という構成と全く同じです。しかしビブリアの方が古書を巡る謎を解いていくのに対し、本作はあまり珈琲とは関係なく、小さな謎を解いていく、というつくりになっています。(珈琲が関係なくはないですが…。)

よりキャラクターや恋愛要素、人間関係に重きを置いている、と言った方がいいかもしれません。珈琲に関する薀蓄も語られますが、それよりも珈琲店タレーランの女性バリスタ、切間美星と珈琲に惹きつけられた客、青山のやり取りがコミカルでここがとても面白いです。この軽妙さはビブリアにはない魅力だと思います。

また物語を最後まで読んでわかる仕掛けもあり、このあたりも含めて、コーヒーの話は少な目、ミステリー色濃い目、と感じました。

物語の終わり方はうまいと感じましたが、続編は出しにくいかな、とも感じます。このミスで最終選考に残っただけのことはあり、質は高く、繰り返しになりますがなにより各キャラクターの軽妙さがいいです。特に個人的には珈琲店のオーナー藻川爺さんですが好きです。ビブリアと似つつも、違いをはっきり出した作品だと感じました。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
レビュープラス

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