読書日記699:価値づくり経営の論理―日本製造業の生きる道


タイトル:価値づくり経営の論理―日本製造業の生きる道
作者:延岡 健太郎
出版元:日本経済新聞出版社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
必要なのは、高い独自性と真の顧客価値が備わったものづくりだ。意味的価値、積み重ね技術など、模倣されない競争力獲得に必要な戦略を示す。

感想--------------------------------------------------
価値づくりという言葉は最近、よく聞かれるようになりました。「モノづくり」より「ことづくり」「価値づくり」みたいな使われ方ですね。その言葉がタイトルのため、読んでみました。

本書では日本企業の低迷の原因は顧客へ価値を届けられなくなったことが原因であり、中でも意味的価値を届けられていない、ということが大きな低迷の原因である、と言っています。機能的価値、つまり製品・商品の機能をどれだけ増やしても、それが顧客にとって魅力あるものでない限り、売り上げ増にはつながらない、ということですね。また企業には積み重ね技術、つまりは長年にわたって培って来たコアとなる技術が非常に重要となる、とも言っています。積み重ね技術と、意味的価値。この二つをどのように育て、適用していくか、これが重要だと語っています。

本書はビジネス書と言うよりも学術書に近いです。価値づくり、ということを学術的にとらえ、日本企業の衰退の原因と、その中でも繁栄している企業の違いについて、実例をもとに著者の持論を述べています。しかし正直、ここに書かれている内容は非常に「あたり前のこと」がほとんどであり、それを学術的に難解な言葉で言い直しているようにも見えます。

本書の初版が出たのは二〇一一年であり、当時はここに書かれている内容は新鮮で、目から鱗が落ちるような内容だったのかもしれません。しかし七年を経た今ではここに書かれている内容は製造業に携わる人間であれば、ある程度は認識していることであり、同じようなことが書かれている本は多くあるとも感じます。そう考えると、十年も経たずにして考え方が古くなっていく、というのは時代の流れの速さも感じさせます。本書では成功企業の例としてシャープが取り上げられているのがいい例ですね。本書出版時と現在では状況が大きく異なっている企業もあると思います。

この本を読むと、「価値観や考え方、常識と言ったものの移り変わりの速さ」というものを実感せずにいられません。ついこの前まで常識だった考え方が、今の世の中では通用しなくなる。今日の常識は、明日には古びた非常識になっている。なにより我々が意識しなければならないのは、ここなのかもしれません。長年かけて技術を育てるよりも、様々な特化した技術をインテグレートできる力の方が昨今では重視されている傾向があり、この点も考え方が進歩しているなあ、と感じます。

様々な技術を注視しつつも、そのどれか一つにとらわれることなく、考え方の推移から次の時代のトレンドを予測し、取り組んでいく。今の時代に必要とされるのは、そうした時代を見通す力と行動力、失敗を恐れないマインドなのかもしれないな、と感じました。正直、ある程度、製造業の現状をご存知の方は、いま読む必要のある本ではないと思います。製造業と関わりの薄い方なら読む価値はあると思います。

総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):C
レビュープラス

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