読書日記698:白ゆき姫殺人事件


タイトル:白ゆき姫殺人事件
作者:湊 かなえ
出版元:集英社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
化粧品会社の美人社員が黒こげの遺体で発見された。ひょんなことから事件の糸口を掴んだ週刊誌のフリー記者、赤星は独自に調査を始める。人人への聞き込みの結果、浮かび上がってきたのは行方不明になった被害者の同僚。ネット上では憶測が飛び交い、週刊誌報道は過熱する一方、匿名という名の皮をかぶった悪意と集団心理。噂話の矛先は一体誰に刃を向けるのか。傑作長編ミステリー。

感想--------------------------------------------------
湊かなえさんの作品は久しぶりに読みました。一般的なミステリーとだいぶ語り口の誓う小説でした。

山中で化粧会社の美人社員が全身をメッタ刺しにされて焼かれて殺された。被害者の同僚などの証言から、一人の被疑者が浮かび上がるがー。

物語が全編通してインタビュー形式や独白形式で語られる面白い作品です。ストーリーが示されるのではなく、事件の全体像が会話、独白で徐々に示されていく、という作りは斬新です。また同僚や被疑者の同級生、地元住民の言葉から、いかに人々が無責任なことを言っているのか、も浮き彫りにされていきます。

またストーリーとは別に、本の後半にはSNSでの書き込みや週刊誌の記事が一覧として示されています。人々の言葉から浮き彫りにされていく被害者と被疑者の関係、無責任な言葉、そうしたものから、いかに読み手が虚構に踊らされているのかもわかってきます。この辺り、物語の作りが二重になっていて、犯人探しというミステリー的な側面と、物語を作り上げていくマスコミの姿を写す側面の二つが絡み合っていると感じます。

物語的にはどんでん返し的な部分はありますが、意外とあっけなく終わった感じです。全部で物語パートは二百ページ超しか無いのもその理由かと想います。ただ、本書の肝はミステリーパートだけではなく、被害者や被疑者に対して無責任なことを言っていく同級生やかつての仲間、SNSや週刊誌といった存在の恐ろしさにあるような気がします。捜査の進展に沿って、ころころと意見や主義を変え、無責任な言葉を使う世間こそが一番恐ろしいのかもしれません。

本作は映画にもなっていますが、こうした作りの作品の場合、むしろ映画の方が面白いのではないか、と感じました。無責任な社会、というものを映像を使って迫力もって描ける点が強みだと感じます。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス

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