読書日記692:サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福
タイトル:サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福
作者:ユヴァル・ノア・ハラリ (著), 柴田裕之 (翻訳)
出版元:河出書房新社
その他:
あらすじ----------------------------------------------
なぜ人類だけが文明を手にしたのか?
アフリカで暮らしていた取るに足りない生物であったホモ・サピエンスは、
なぜ食物連鎖の頂点に立ち、文明を打ち立て、地球を支配するまでに至ったのだろうか?
ホモ・サピエンスの過去、現在、未来を俯瞰するかつてないスケールの大著、ついに邦訳!
感想--------------------------------------------------
上巻に続き、下巻です。主に科学について書かれた巻ですね。科学、文明、さらにはその先の世界についてまで、著者は思い描いていきます。
「文明は人を幸福にしたのか?」
下巻の中ではこの問いが最も心に刺さりました。生物学的視点から見ると、人の幸福とは様々な化学物質から成る複雑なシステムの結果が引き起こす脳内の電気信号によって決まるものであり、個体差も大きくどんなに幸せなことが起きても幸福を感じられない人もいれば、その逆の人もいる。そうすると、文明が人を幸福にする、というのは真実なのだろうか?という問いが起きます。むしろ、個人の内面が全てなのではないだろうか。そうすると、進歩させるべきは外面ではなく内面では?みたいな想像が浮かびます。
サピエンスという種の歴史を俯瞰的に見ると、現在は非常に平和であり、安定した世界であることは間違いないようです。暴力が原因で死ぬ人は過去のどの時代よりも少なく、主としても多いに栄えています。また資本主義という名の共通の想像により、世界は繁栄を常に追い続ける仕組みの上を走り続けてもいます。
上巻から通じての感想ですが、人のすごいところは、「想像を共有できる」というところに尽きるのではないか、と思います。資本主義、帝国、貨幣、といったこれらのものはそれそのものには実体がなく、それらを共有できる意識が、人間が、世界中に存在するからこそ成り立っている仕組みです。その価値を信じる人々が世界中に存在することで成り立ち、さらなる繁栄を目指すことになる仕組みーこうしたものを作り上げ、共有できる人間というのはやはりすごい存在なのでしょう。
上巻で書かれていた「認知革命」という言葉も印象に残りました。今から七万年前から三万年前にかけて遺伝子の突然変異が起き、人はそれまでと全く違った方法で意思疎通ができるようになったり、考えたりできるようになったとのことです。これがサピエンスの進化を後押ししたのだとすれば、人の進化がかなり進んで来た現代でこそ、第二の認知革命が起きても不思議ではないのではないか?と考えたりもします。今とは全く異なる方法で意思疎通をとるようになった人類からは、我々旧人類はどのように見えるのだろうか?または、もしかしたらすでに認知革命を起こした人間がいるのではないだろうか?と言ったことに思いが及んだりもしました。
広範で深い知識がないと本書のような書物は決して書けないと思います。著者の知識の広さ、深さは本当にすごいと思います。サピエンスこと我々人類の歴史と発展について俯瞰的に書かれた大作だと感じました。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S
レビュープラス
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