読書日記688:AX アックス


タイトル:AX アックス
作者:伊坂 幸太郎
出版元:KADOKAWA
その他:

あらすじ----------------------------------------------
最強の殺し屋は―恐妻家。「兜」は超一流の殺し屋だが、家では妻に頭が上がらない。一人息子の克巳もあきれるほどだ。兜がこの仕事を辞めたい、と考えはじめたのは、克巳が生まれた頃だった。引退に必要な金を稼ぐため、仕方なく仕事を続けていたある日、爆弾職人を軽々と始末した兜は、意外な人物から襲撃を受ける。こんな物騒な仕事をしていることは、家族はもちろん、知らない。『グラスホッパー』『マリアビートル』に連なる殺し屋シリーズ最新作!書き下ろし2篇を加えた計5篇。

感想--------------------------------------------------
伊坂幸太郎さんの作品です。『グラスホッパー』『マリアビートル』に連なる殺し屋シリーズですね。このシリーズは私は大好きです。前二作も本当に面白かったです。

恐妻家の殺し屋『兜』は一人息子 克巳の誕生を機に仕事を辞めることを考え始めるがー。

本シリーズは『グラスホッパー』=バッタ、『マリアビートル』=てんとう虫、と題名が虫の名前になっています。本作のタイトル『AX』は斧の意味ですが、『蟷螂の斧』の斧ですね。なのでうまく虫繫がりで来ています。

AX、BEE、CRAYON、EXIT、FINEと五つの章から成る本作ですが、意外なほどに感動する作品でした。殺し屋である兜と息子の克巳の視点が入り交じる最終章のFINEは特に感動的です。そして最後まで読み終えてようやく『AX』の本当の意味が分かる作品でもありました。家族の絆をさらっとしたテイストで描いていて、そこがとても心に染みます。記憶に残る作品だなあと感じます。

凄腕の殺し屋たちを相手に全く引けを取らず淡々と仕事をこなす一方で、妻には全く頭が上がらず殺し屋たちを相手にするときよりも遥かに神経を使う兜。このコミカルなキャラクターが本作の一番のポイントだと思います。家族のために殺し、家族を持って殺し屋からの卒業を考える兜。殺し屋で殺しの場面も多々あるのですが、そこよりも家族を思う兜と、克巳の言葉の方がよほど印象に残りますね。

物語の一番最後、終わりの部分もとてもいいです。終わりなんですが、物語の始まりの場面に戻ったようで、印象的です。さらっとした言葉で感動を与える、伊坂作品の中でも好きな作品の一つとなりました。



総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):
レビュープラス

この記事へのコメント