読書日記685:SHOE DOG


タイトル:SHOE DOG
作者:フィル・ナイト
出版元:東洋経済新報社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
日本で作られた靴をアメリカで売る。1960年代に米国の誰もが笑うような夢を抱き、著者は日本に渡る。

本書は世界的なスポーツブランドに成長した「ナイキ」の創業物語。夢が叶い、オニツカの靴をアメリカで販売する権利を得て、事業を広げるが、オニツカとの関係が次第に悪化し、資金繰りが苦しくなる。現地の銀行もさじを投げ、倒産寸前に追い込まれた窮地を救うのが、商社の日商岩井だ。日本企業に裏切られ、別の日本企業に救われる。日本との関係の深さに驚かされる。

タイトルの「SHOE DOG」とは靴の製造や販売に命を懸ける人々を指す。ナイキの立ち上げに関わった面々は誰もがSHOE DOGだ。チームに天才は一人もいない。情熱に勝る能力がないことを教えてくれる。

感想--------------------------------------------------
ナイキの創設者、フィル・ナイトの自伝的小説です。WBSなどでも取り上げられていました。ナイキの創設者の書いた本と言うことで、楽しみに読んでみました。

読んですぐに分かるのですが、本書はビジネス書というよりもまさに自伝です。フィル・ナイトの視点から一九六二年から一九八〇年までのまさに起きたこと、感じたことをそのまま書いています。大学を卒業し、世界一周の旅に出て、日本でオニツカの代理店契約を結び、銀行との契約、ジョンソン、ウッデルといった側近たちとの出会い、師であり共同創設者であるバウアーマンとの関係、契約を結んだアスリート、特にスティーブ・プリフォンテーンとの逸話など多くの事柄について、感情豊かに、まさに自伝小説のように描かれています。

ビジネス書、というとビジネスのノウハウについて記した無機的な内容を思い浮かべますが、本書は全くその逆です。主人公であるフィル・ナイトことバックが悪戦苦闘しながらナイキを作り上げていく姿が感情豊かに描かれています。そしてこれは「HARD THINGS」を読んだときにも感じたことですが、「社長なんてなるもんじゃないな」とつくづく感じました。設立当初、まだナイキとなる前のブルーリボン社には純資産が全くなく、常に会社は自転車操業状態で、借りた金の返済に胃を痛める状況がずっと続きます。銀行から融資を断られたり、小切手の換金が出来ないと従業員に詰め寄られたり、まさに悪戦苦闘です。

このような苦闘する状況を乗り越えてなぜナイキを作り上げることが出来たのか?その答えの一つとして、ナイト自身のスポーツへのリスペクト、それと「勝つこと」「走り続けること」へのこだわりがあるのだろうと思います。彼にとってはナイキという会社のビジネス自体がスポーツだったのではないかと思います。

「わけがわからない?当然さ。僕たちはわけがわからないまま頑張っているんだ。まったくわかっていないんだ」

本書の中で個人的にもっとも印象に残った言葉です。わけがわからないままひたすらに頑張る。そしてどんどんと物事を決めて、前に進めていく。本書を読んでいると、ナイトらナイキ経営陣の決断と行動の速さには驚かされます。経営陣で世界を回り、あっという間に物事を決め、契約を結ぶ。このやり方はとても本質的であり、わけがわからないけれども答えがすぐ出る方法だと感じました。物語にはオニツカなど日本企業も出てきますが、彼らに関するナイトたちナイキ(ブルーリボン)の経営陣の見方も印象に残りました。

本書はナイキが株式上場するまでの歴史について書かれています。純資産を持たないが故に常に倒産の危機に脅かされ続けた日々。しかし本書を読むとこの十八年間の密度の濃さに驚かされます。これだけのことをやって、まだ十八年なのですから。本書はビジネス書と言うよりも、ナイキという企業を巡る冒険の日々の記録のように感じられました。人間的には欠点だらけの創設メンバーですが、とても魅力的に感じられました。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S
レビュープラス

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