読書日記684:ホワイトラビット


タイトル:ホワイトラビット
作者:伊坂幸太郎
出版元:新潮社
その他:

あらすじ----------------------------------------------
仙台の住宅街で発生した人質立てこもり事件。SITが出動するも、逃亡不可能な状況下、予想外の要求が炸裂する。息子への、妻への、娘への、オリオン座への(?)愛が交錯し、事態は思わぬ方向に転がっていく――。「白兎(しろうさぎ)事件」の全貌を知ることができるのはあなただけ! 伊坂作品初心者から上級者まで没頭度MAX! あの泥棒も登場します。

感想--------------------------------------------------
伊坂幸太郎さんの作品です。久しぶりに読んだ気がします。相変わらずの伊坂節、面白いです。言うこと無いですね。ファンにとってはたまらないです。

仙台で発生した人質立てこもり事件ー通称「白兎事件」。その事件はいかにして起こり、いかにして終息したのか?神の視点で物語を見つめる著者と共に、読者は物語の全貌を知るー。

本作ではユゴーの名作、レ・ミゼラブルの言葉が随所に現れ、その物語を下敷きに、仙台での人質立てこもり事件が展開していきます。物語の中心に現れるのは伊坂作品に幾度となく現れて来た泥棒ー黒沢。ひょうひょうとした彼の態度と言動が、物語を予期せぬ方向に導いていきます。誘拐集団のメンバー兎田、その妻、黒沢、そしてその仲間たちー。一癖も二癖もある男たちが軽妙な会話を交わしながら物語をより複雑に、混迷へと導いていく様は、読んでいて痛快です。「ああ、なんでこうなるの」みたいな。読みながらも笑ってしまいました。

本作はレ・ミゼラブルにならって、要所要所で著者だけが語ることの出来る神の視点で物語が語られていきます。時間が遡ったり、物語の場面が他の場所に急に移ったり。でもその視点の移り変わりさえも軽妙で、さほど気にならないです。「こうした物語の作り方もあるんだよ」と著者が言っているようにも感じられました。

物語には大きな仕掛けがあり、それが最後の方で読者にはわかってきます。そして物語の全貌が分かって「なるほど!」と読者が頷いたところでフィナーレを迎えていく。この作りはさすがだなあ、って思いました。二百五十ページの本なのに満足感抜群です。

はい、生まれました。はい、死にました。その間にいろいろありました。

最も印象に残った、本作で語られている人生を表す言葉です。いろいろな人がいろいろな人生を送るけど、結局のところ人生はこんな簡単なフレーズに過ぎない。著者はそう言っているようにも感じられました。
いろいろありました。
悩みも苦しみもあるけれど、それも所詮は「いろいろ」に過ぎない。だったらせめて自分が納得できるように正しく生きたいよね。そう著者が言っているようにも感じられました。

相変わらず高いクオリティで私はこの著者は大好きです。まだ未読の「AX アックス」も速く読んでみたいところです。


総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):A
レビュープラス

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