読書日記681:鍵の掛かった男
タイトル:鍵の掛かった男
作者:有栖川 有栖
出版元:幻冬舎
その他:
あらすじ----------------------------------------------
中之島のホテルで梨田稔(69)が死んだ。警察は自殺と断定。だが同ホテルが定宿の作家・影浦浪子は疑問を持った。彼はスイートに5年住み周囲に愛され2億円預金があった。影浦は死の謎の解明を推理作家の有栖川有栖と友人の火村英生に依頼。が調査は難航。彼の人生は闇で鍵の掛かった状態だった。梨田とは誰か? 他殺なら犯人は? 驚愕の悲劇的結末!
感想--------------------------------------------------
有栖川有栖さんの作品は初めて読みました。本格ミステリーといった趣の作品です。七百ページ超の大ボリュームの作品です。一つの殺人事件をこれだけのページ数で扱った作品はそんなにないのではないでしょうか。
中之島の銀星ホテルで首を吊った状態で発見された梨田。彼は自殺なのか?他殺なのか?推理作家の有栖川有栖は、彼の周囲を調査し始めるー。
物語はとてもゆっくりと、じっくりと進んでいきます。中之島の情景や歴史の描写を背景に、被害者である梨田の周囲の調査、現場となったホテルでの聞き込み、と、書き方としてミステリーの王道だと思います。逆に、今ではこのような王道ミステリーは少なくなった、とも感じます。一昔前のミステリーを思い起こさせますね。
中之島の歴史、梨田の人間関係、関係者の過去。様々な要素をしっかりとまとめ描き上げる手腕は確かです。描写も緻密で、土台をしっかりと築き、その上に事件という家を建てている、そんな印象です。派手さは無いですが、精緻でこれぞミステリーといった作品です。
しかし一方で七百ページというページ数は多すぎるようにも感じました。言葉のやり取りがとても文体的で、いまではこんな口語表現はしないだろうな、という箇所も見受けられました。決して読みにくさを感じたり、飽きたりすることはないのですが、ここまでのページ数は不要だろうな、とは感じました。
物語の結末は、「え?」という感じではありました。犯人は私にとっては意外であり、動機も「え?それが動機?」という感じではありました。いい意味で裏切られた、とも言えますし、拍子抜け、という言い方も出来ます。この探偵役の火村が活躍するシリーズは他にも多くあるようですね。ファンの人にとっては満足いく作品なのだろうと思います。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B
レビュープラス
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