読書日記678:ケモノの城
タイトル:ケモノの城
作者:誉田 哲也
出版元:双葉社
その他:
あらすじ----------------------------------------------
警察は、自ら身柄保護を求めてきた少女を保護した。少女には明らかに暴行を受けたあとがあった。その後、少女と同じマンションの部屋で暮らしていた女性を傷害容疑で逮捕するが、その女性にも、暴行を受けていたと思われる傷があった。やがて、少女が口を開く。お父さんは、殺されました―。単行本刊行時に大反響を呼んだ問題作がついに文庫化。読者の心をいやおうなく揺さぶる衝撃のミステリー。
感想--------------------------------------------------
誉田哲也さんの作品です。姫川シリーズの最新作「ノーマンズランド」も出ていますが、こちらは未読です。手元にあったこちらを読んでみました。
保護された少女と、女。二人の供述から、二人が住んでいたマンションの一室での恐ろしい生活が見えてくる。一方で聖子と暮らす辰吾のもとに、聖子の父という男が現れる。男の正体はー。
正直、読んでいるのが辛くなる作品です。あらすじだけではわからないかもしれないですが、血も凍るような恐ろしくもおぞましい展開で、多くの人が殺されていくシーンや、死体の解体作業などが克明に書かれていて、後半はこうした話に耐性の無い人は読まない方が無難です。一方で、読み手にこれだけの恐怖とおぞましさを与えられるというのは、著者の力量を示しているとも思います。本書の下敷きは、北九州連続殺人事件という実際の事件です。本書を読んだことをきっかけに少しこの事件の記事について読んでみたのですが、本書で書かれている以上に悲惨で凄惨な事件だったようで、おぞましい限りです。
一方で本書には聖子と辰吾というカップルについても描かれています。二人のもとに現れた、聖子の父を名乗る三郎という男。日がな何もせずプラプラとしている三郎は本当に聖子の父親なのか?あるいはー。読者は突きつけられた謎に、恐怖を感じながらも先を読まずにはいられなくなっていきます。このあたりの作りはうまいなあ、と感じます。
物語のラストは、すっきりした終わり方ではないです。しかしそれでも、この物語はこの終わり方でよかったと思います。全ての謎が解けた訳ではないけれども、わずかに希望の見える終わり方です。
しかし、世の中にはこのようなサイコパスと呼ばれる人々も実在するのだ、と思うと、怖気を感じます。このような事件が二度と起きないでほしいと強く感じました。
総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):B
レビュープラス
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