読書日記674:サボタージュ・マニュアル:諜報活動が照らす組織経営の本質


タイトル:サボタージュ・マニュアル:諜報活動が照らす組織経営の本質
作者:米国戦略諜報局(OSS)
出版元:北大路書房
その他:

あらすじ----------------------------------------------
CIAの前身,OSSが作成した「組織をうまくまわらなくさせる」ためのスパイマニュアル。「トイレットペーパーを補充するな」「鍵穴に木片を詰まらせよ」といった些細な悪戯から,「規則を隅々まで適用せよ」「重要な仕事をするときには会議を開け」まで,数々の戦術を指南。マネジメントの本質を逆説的に学べる,心理学の視点からの解説付き。津田大介氏推薦!

感想--------------------------------------------------
本書は「本が好き!」から献本いただきました。いつもありがとうございます。

サボタージュ・マニュアルという名の本書は、CIAの前身である米国戦略諜報局(OSS)が一九四四年に作成した、組織をうまく機能させなくする、つまりサボタージュのためのマニュアルです。対象となる組織に潜入した諜報員がこのマニュアルに沿って活動することで組織を機能不全に陥らせることを目的としています。

なぜこのようなマニュアルが取り上げられているのか?それはこの本に書かれている「組織をや生産に対する一般的な妨害」という内容が、そのまま今の企業で行われていることだからですね。


・何事をするにも決められた手順を踏め。迅速な決断のための簡略化した内容を認めるな
・文面による指示を要求せよ
・すべての規則を隅々まで適用せよ
・会議を開け

こうした項目がサボタージュのための項目として挙げられていますが、これらは普段、一般企業でよくやられていることですよね。これらがサボタージュのための内容だということが面白いです。

本書は前半分が心理学科教授である越智啓太さんの解説、後半分がサボタージュマニュアルそのものになっていますが、その前半分の解説が秀逸です。ビジネス書としても十分に読める内容で私はすごく共感出来ました。

中でも「集団は個人の能力を封じ込める」というくだりは読んでいて本当に納得できます。権力者や声の大きい人の言うことばかりが通っていく企業はろくなものではないですが、そのあたりを心理学の面からも説明しています。

また、徹底的な議論は情報が十分に集まる理想環境でこそ成り立つ話で、どこで情報収集を打ち切り決断するか、こそが重要と述べていますが、ここも本当にその通りと感じます。「検討しろ」「よく考えろ」の一言で決断ポイントを逃し、チャンスを逸する例の多いこと多いこと…。「はやく失敗しろ」と述べる昨今のビジネス本とは真逆の内容ですね。

本書は期待通りの内容で、共感できるポイントが非常に多く、本当に読んでいて面白かったです。またぜひいい本を献本、狙っていきたいです。



総合評価(S・A・B・C・D・Eの6段階評価):S
レビュープラス

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